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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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特殊能力の掛け合い

 ヘビのやたらと硬い鱗を殴るのも飽きてきた。

 一撃ごとにを鋭さを増していく攻撃の感覚は楽しいが、このまま続けていても、ぶち破るのはまだまだ難しいと思える。

 目玉を潰すのは容易いだろうが、そうしたあげくに滅茶苦茶に暴れられた場合、手が付けられなくなる恐れがある。森林破壊だけに止まればいいが、人里にまで移動することがあれば、かなりヤバい事態だ。迂闊な事はできない。


 しかしヘビの弱点と言っても、思いつくものは特にない。こういう時に回る頭が欲しいものだ。

 爬虫類っぽいから、低温状態に持っていける氷系の魔法でもあれば試す価値はありそうだが。まあ所詮は無いものねだりだ。

 正直なところ、俺では倒すのは難しそうだ。ああ、このまま渓谷に誘導して落としてしまうか。そのくらいしか手がないな。



 拳闘無比のスイッチをこまめにオンオフしながら戦っていると、ヘビの尻尾の青い炎が勢いを増した気がした。

 そういやこの魔物は雷撃を放つとかシノブが言ってたな。

 いくら特殊能力発動中はスローモーションの世界で自在に動けるとしても、雷を避けることは無理がある。


 具体的には覚えていないが、例えとして落雷の速度は秒速で何十万キロとかそういった尋常ではない速度だ。音速を遥かに超える。

 自分以外を遅く感じるこの感覚をもっと強化できれば、回避できる可能性は出てくるかもしれないが、少なくとも現時点では不可能だ。

 雷を使われる前に倒したかったが、さすがは第一種指定災害だな。そこまで甘くはなかったか。


 尻尾の先端をしきりに向けようとしてくることから、照準を合わせているように思う。だとすればやりようはある。

 魔物自身のデカい身体を盾にするように立ち回れば、雷撃は食らわずに済むと期待しよう。雷に打たれるなんて、普通に考えて即死級だ。やられるわけにはいかない。


 尻尾の方向を観察しながら距離を離さず立ち回り、渓谷まで誘導して落とす。これが現在考えられる勝利への道になるな。結構厳しいがやるしかない。

 しかし、いざ始めようとして、あれ、と思う。逐電亡匿に引っ掛かったのは良く知る奴らだ。


「あいつらか? なにしに戻ってきやがった。ちっ、保護者としてカッコ悪いところは見せたくねぇんだがな」


 キョウカとシノブが近くの森に潜んでいるらしい。能天気に近寄ってこないということは、観戦でもするつもりか?

 あいつらに俺の戦いを見せたことはなかったから、気になっているのかもしれない。まあいい。見たいなら見せてやる。


 三分しか持たない拳闘無比の能力だが、接近戦においては絶大な力を誇る。

 人型が相手でない場合には、背面攻撃やローブローのような拳闘において反則となる行為も問題にならないのは確認済みだ。人型以外はまだやり難さがあるが、能力の制限が少ないのはありがたい。


 連続で三分間発動させると一分のインターバルが必要になるのは、どれだけ訓練しても変わらない。

 だがスイッチのオンオフをこまめに切り替えることによって、連続で三分しか持たない能力も、断続的には長い時間にわたって発動できる。その極意は他人には伝わらないだろうが、まあ見ておけって感じだな。

 第一種指定災害を倒せなくても、追い払うくらいならやってのけてやる。



 青く燃えるヘビの尻尾が光を増しスイッチオンで回り込もうとしたタイミング。そこでなぜか急に感覚が乱れた。


「くおっ、やっべぇ!」


 急な感覚の変化と酷い違和感に焦る。

 いつもの力が高まる感覚が、どうしてか急激に薄まったような感じだ。思い描く速度が出せない。ほぼ能力を発動していない状態に等しい。

 おかしい、強制的なインターバルにはまだまだ余裕があったはずだ。


 こっちの焦りなど無関係な戦闘中。青い炎をまとったような見た目の不思議な尻尾が強い光を発した、と思った瞬間に撃ち抜かれた。


 雷撃だ。避けるどころか目で追うことさえ不可能な圧倒的速度。

 轟音と光を認識した直後には胸を撃ち抜けれていた。


 ドンッと強く押されたような衝撃を感じて、そして――。


「……あ? どういうこった」


 服は焦げて穴が空いたが、俺自身は無事だ。特になんともない。

 胸を強めに叩かれたような感覚は残るが、体に痺れはなく、火傷もない。


 立て続けに起こった不可解な現象に戸惑う。

 まさか、俺は雷撃も無効化できるのか?

 無事な現実を考えれば、極致耐性きょくちたいせいの特殊能力のお陰だろうと想像はつく。


 なるほどな。勇者の特殊能力は人生経験によって与えられる。俺は死ぬかと思うほどの電気ショックによる拷問を受けたこともあるから、その経験が特殊能力に反映されているのだろう。

 これはいいな。そういうことなら、ほかの耐性にも期待できそうだ。少なくとも電撃への耐性があるのは間違いない。



 気を取り直してとにかく動く。

 耐性はあっても雷撃の直撃は叩かれる程度の痛みは生じる。何度も受けたいものではない。

 しかし、拳闘無比の能力が酷く薄まったような感覚はなぜか。


 なにげなく逐電亡匿に意識を向けると、キョウカとシノブはまだ同じ場所にいる。向こうに雷撃が飛んで行かなければいいが。

 いや、なんだあれ。レーダーに掛かるシノブの気配が大きい。なにか能力を使っているように思える。


 ……待てよ。まさか、シノブか?

 俺の異変はあいつの仕業じゃないだろうな。


 ヘビの突進を避けながら疑念に思う。シノブの奴がわざと俺を困らせるとは思えないが、どういうつもりだ?

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