表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/441

秘密基地

 早朝からの日課をこなすと、朝メシを食って王都に繰り出す。

 上機嫌な雰囲気を不審に思ったのか、疑り深い新妻のように面倒なキョウカをやり過ごす羽目になったのはいただけなかったが。


 アンドリュー配下のスピアーズと合流すると、さっそく案内を頼む。こいつは強面の割には案外接しやすい奴だ。


「おはようございます、大門さん。アンドリューさんに言われて、良そうなのをいくつか見繕っておきました。すぐに行きますか?」

「おう、頼む。案内係の真似事をさせちまって悪いな」

「はは、偶にはこういうのも悪くないですよ。それに昨日の一件で、ウチの名も上がりますからね。お陰でしばらくは楽ができます」


 余所者にいいようにされていたコロンバス会だが、昨日の一件で完全に汚名返上をした格好だ。こいつらのシマで下手なことをする奴は当分現れないだろう。


 街をぶらぶらと歩きながら何軒か見せてもらったが、想定とは少し違った。

 スピアーズのチョイスは、言葉通りに非常に良いものだった。むしろ、良いもの過ぎた。

 もっとこじんまりとした部屋で良かったのだが、立派な一軒家やら、高級マンションのような広々とした部屋だったりと、微妙に落ち着かない。


「なあ、もう少し秘密基地って感じの場所はねぇのか? そんなに立派なものじゃなくていいんだ。たまに使う隠れ家のつもりだからな」

「秘密基地ですか……。ちょっとばかし寂れた場所でしたら、そういうのもありますがね。でも、それでいいんで?」

「むしろそういうのがいいんだよ。心当たりがあるなら、それを見せてくれ」

「はあ、大門さんが気に入るか分かりませんが、じゃあ行ってみますか」



 しばらく歩いて着いたのは、商店なんかがある場所からは離れた区画。

 建物に取り囲まれた狭間にあるような奥まった立地。

 目にしたのは、小さな赤いレンガ造り。

 それはアパートのような二階建ての建物だった。


「……いいじゃねぇか。これだよ、これ。こういうのを求めていたんだ」


 喧騒からは遠く離れていて、建物自体が目立たない場所にある。通りからは全く見えないのが良い。

 周辺は寂れた住宅街といった雰囲気だが、静かなのは好みに合う。


「部屋の中も見ておきますか。今のところは誰もいないんで、好きにできますよ」

「ほう、今は俺だけってことか。益々いいな。もうここに決まりでもいいな」


 一応、部屋の中を確認すると、間取りは意外と広めの1LDKの部屋だった。水回りも普通に機能するし十分だ。

 少々古い感じはあるが、建物の周りも丁寧に掃除だけはされている。

 聞いてみればここは最近、コロンバス会が借金のカタに手に入れた物件らしい。運がいいな。


「大門さん、本当にここでいいんですか? もっと良いのを選んでもらわないと、俺がアンドリューさんにどやされそうなんですが」

「俺が気に入って喜んでいたと言えば文句ないだろ。アンドリューには適当に言っておいてくれ」


 基本的な生活用品は、また買う必要はあるが、王都ならすぐに揃う。金もあるしな。




 しかし、後になって想定外なことが起こった。

 アンドリューの奴が必要以上に気を使ってくれたわけだが、なんと建物が丸ごと俺の物になってしまったのだ。


 商業的な立地には向かないし、手に入れたのは良いけど、どうやら使い道に困っていた物件らしい。

 放置すれば建物は傷むし、仕方なく若い組員の宿舎にでもしようかと思っていたタイミングで俺が欲しがったのだ。

 どうせなら丸ごと好きにしてくれってことらしい。アンドリューとしては俺がより強く恩を感じる可能性を思ってのことかもしれない。


 こっちとしては、いくつも部屋があっても使う予定はないし一部屋で十分だったが、まあいつか使うかもしれないし、それまでは放っておけばいいだけだ。貰えるなら遠慮なく貰っておくとしよう。

 考えてみれば、隣に変なのが住みだしたとしたら追い出すのも面倒だ。住民トラブルに悩まされる可能性が排除できたのは歓迎できる。

 結果オーライと思っておこう。


 こうして俺は新たな拠点を手に入れた。



 即座に必要な品物を手配して運び入れると、改めて思う。

 やっぱり秘密基地ってのは、年を取ってもテンションがあがる。


 しかし、キョウカとシノブの事を考えれば、こっちに入り浸るわけにもいかないし、そこは気をつけておかなければ。

 身柄を預かった以上は、最低限の面倒だけは見てやるつもりだ。別にあいつらといるのが嫌になったわけでもない。

 ちょっとした息抜きと、適当な女を連れ込むためってのが主な目的だからな。


 さて、今日はどうするか。もう用は済んだし、少しだけ休んだら帰るか。


 トントン


 ノックか。ここを知っているのはアンドリューの組だけだ。なにか用だろうか。

 一応の警戒をしながらドアを開けると、思わぬ客人の姿があった。


「はぁい。久しぶり」

「お前は、あの時の」


 前に俺を逆ナンしてきた抜群にスタイルのいい女だ。

 連れ込み喫茶に行って楽しんだ後で姿を消して、それ以来見ていなかった。

 どうしてここを、って聞くまでもないな。


「……アンドリューの仕業か」

「ちょっとここに寄ると楽しいことがあるって教えてもらって。どう? 暇?」

「楽しいことか。いいぜ、上がってけよ」


 さっそく目的に適った使い方ができるな。

 客人の第一号が、まさか名前も知らないこの女になるとは思わなかったが、こっちとしては大歓迎だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ