怪しすぎる誘い
喫茶店の個室に押し掛ける四人組。
丁寧にノックはしてきたが、油断はできない。余程のことでも切り抜けられる自信はあるが、用心はしておいたほうがいい。
居留守は通用しないだろうし、扉を開けてみるか。
鍵は掛けていなかったが、こっちから扉を開けてやると、そこに居たのはむさ苦しい男たち。
どう見ても店員ではない。それに、どこか見覚えがあるような気もする。このパターンは前にもあったな。
「楽しんでもらえたか?」
にやけた顔で言われたセリフから全てを察する。
「お前らの仕業か」
あの女はこいつらの差し金らしい。
やはりただの逆ナンでなど、あるはずがなかった。
だがどういうつもりだ。美人局って雰囲気でもないしな。
「俺からのささやかなプレゼントだよ。気にする必要はない」
「どうだかな。まあいい、それでお前らは?」
世の中タダより高いものはないが、気にする必要がないというのなら本当に気にしない。
「コロンバス会のアンドリューだ。おっと、待て! 今日は話をしにきたんだ」
「この前のマフィアが、俺に話だと?」
胡散臭いことこの上ないな。しかし楽しませてもらったのは確かだし、話くらいは聞いてやるか。
どうせロクなことじゃないだろうが、なんせ暇だしな。
部屋に招き入れて座らせると、リーダー格のみが座って、他はその背後に立つのと入り口前に立つのに別れた。
「あんたにとっても悪い話じゃないはずだ。仕事の話だよ」
「ほう、仕事か。せっかくだが仕事には困ってないな。何をやらせたいのか知らんが、マフィア同士の面倒事なら他を当たれ」
こんな奴らが持ち掛けてくる話が、いい話であるはずがない。
それに勇者である俺は、はした金で動いたりしない。
「誤解があるな。今回の話は組織同士の抗争とは関係がない。それにチンケな額の仕事でもない。大金が手に入るんだよ、あんたの力を借りられればな」
余計に怪しい話としか感じない。
「生憎だが、俺はうまそうな話には乗らないことにしているんだ。リスク以上に稼げるとは思えんしな」
「本当に悪い話じゃないんだがな。話は変わるが、あんた、ツレの女がいるらしいな?」
今度は脅しのつもりか。くだらんな。
「あんたとの一件、ウチの組の中には気が済まないってのも多くてな。あんたには勝てなくても、それならあんたの周りはって話も出てる。俺としてはそんな事はさせたくないんだ。そういう意味でも一枚噛まないか? 協力してくれれば、もう面倒事は起こさないよう俺が押さえる。何度も言うが悪い話じゃない」
「始めに言っておくが、俺に脅しは通用しねぇぞ。それは別にして、そこまで言うなら話してみろ。どんな仕事だ?」
わざわざ俺に話を持ってくる意味が分からない。いい話があるなら勝手にやればいいだろうに。
それにキョウカとシノブだって腐っても勇者だ。こんな奴らが束になったところで問題にならんだろうが、搦め手には弱そうだからな。俺でどうにかできるなら、あいつらには火の粉が掛からんようにしておいたほういい。
「簡単に言えば略奪だ」
「……まあいい、続けろ」
本当に簡単に言いやがる。俺に片棒を担げってのか。




