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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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謎の男の調査【Others Side】

 ワッシュバーン組の本部から戻ったアンドリューは、さっそく手下に命じて仕事に掛かります。


「奴のことを徹底的に調べ上げろ。たまに買い物姿を見掛けるって話だったな? なら商店に聞きに行け。何を買ったか、他にはどこの店に向かったか、連れはいるのか、どこに住んでいるのか、商人どもに何でも聞いてみろ。あのツラの男のことだ、誰でも覚えているはずだ。それから商人相手でも高圧的な態度は取るなよ。万が一にも奴に見られて不興を買いたくない。今度こそ徹底的に、とにかく、なんでもいいから奴の情報を集めてこい!」


 実際には商人に聞いたところで、重要な情報が明瞭に得られることはありませんでした。

 ワッシュバーン組系の構成員に聞かれて嘘を吐いたり誤魔化したりするのは少数派でしたが、それでも得られるのは曖昧なものばかり。ですが、不確かな証言も数が集まれば信憑性は増してきます。


 聞き込みをして集めた情報や、一部の情報屋から仕入れた内容を総合すると、様々なことがアンドリューたちにも分かってきました。


「アンドリューさん、奴は王都の外から買い物にくるらしいですぜ」

「外からだと? 近くの村にでも住んでいるのか?」

「そうかも知れませんが、具体的なところまでは。買ってる物は食料や日用品らしいんですが、荷物を抱えて街門から出て行くのを見たって話は確かですぜ」


 王都の外となればアンドリューたちにとって酷く勝手が悪いです。

 郊外の村であれば、何をするにも目立ってしまいます。巡回の騎士に見咎められるようなことでもあれば、厄介な事態にもなりかねません。


 接触をするのならば、王都の中のほうが都合はいいです。アンドリューは出入りしていると思われる街門を見張らせ、街に滞在中であれば、いつでも接触できるような体制を検討し始めました。


「あとは何度か同じ娼館に通ってるって話もありやすね。そこはモズライト組のシマなんで詳しいことまでは分かりやせんが」

「すると馴染みの女でもいるのか。どうにか接触したいが、モズライト組と事を構えるのはマズイな……」


 モズライト組はワッシュバーン組と肩を並べる大きな組織です。アンドリューの一存で勝手に揉め事を起こすわけにはいきません。

 女に話を聞きたいだけと言っても、額面どおりに受取る相手ではないのです。少なくとも貸しを作ることにはなってしまいます。


「あ、こっちは若い女連れで歩いてたって聞いたっすよ。それが馴染みの女っすかね」

「……若い女のツレか。娼婦と別口の女なら使えるかもしれないな。他には?」


 特定の女がいるのであれば、多少の不興は買っても交渉に持ち込む手段は色々と見えてきます。それに女好きであるのならば、コロンバス会にはいくらでも伝手があります。


「実は商人の話を聞く限りじゃ、どうもチンピラって感じじゃなさそうなんですよね。確かに凶悪なツラをしてる奴でしたが、店じゃ普通に世間話もするし、特別悪さをする奴じゃないって話でした。それに悪そうなのとつるんでるところを見たって奴もいませんでした」


 刑死者の勇者たる大門トオルは、暗黒街とは何の関係もないという意味ではカタギに間違いありません。


 しかし、アンドリューたちがそれを知る由もないのです。

 バルディア王国を除いても各国のトップや軍事諜報部門では、勇者の基本的な情報を共有していましたが、暗黒街の人間が詳細までを知る余地はなかったのですから。


「その話を聞く限りじゃ、奴はチンピラの仲間でも他の組の関係者でもなさそうだ。むしろカタギにしか思えないな」

「ですがあの凶悪なツラに、あの腕ですよ? あれでカタギだったら笑い話にもなりませんよ」


 少なくとも王都の暗黒街、そのどの勢力にも与しているわけではなさそうだとアンドリューは考えました。


「……とにかく手をこまねいていてもしょうがない。次に奴が姿を現したら、すぐ俺に知らせろ」


 こうしてワッシュバーン組系コロンバス会のアンドリューとその一味は、拙速ながらも方針を決定したのでした。

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