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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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立て続けの依頼

 魔神の出現と同時に活性化している魔物の動向が、今の世界を悩ます一番の要因ということらしい。

 どこにいるとも知れない魔神とその眷属よりも、日常的に現れる魔物のほうが差し迫った脅威となっている。


 バルディア王国もそれの例に漏れず、日夜その対応に追われているらしい。


「大門殿、依頼をお引き受け頂きありがとうございます。これでうるさい役人も少しは大人しくなります」


 仕事の依頼にきたのか愚痴をこぼしにきたのか。

 どっちがメインだか分からないが、珍しくマクスウェルも分かりやすいほどに疲れ気味だ。忙しいのだろう。


 今回、俺に託された依頼は緊急のものが一件。それが終わり次第、順次取り掛かるものが三件もある。


 緊急の一件を除いて、どれも俺にとっては大した魔物ではないし、第四種指定災害になるほど数が多いわけでもない。

 単純に王国の騎士や兵士では対応できない仕事量がこっちにも回されてきただけだ。


 どうやら俺は都合のいい単独の戦力として扱われることになったらしい。

 きちんと金が支払われるなら文句はないし、望むところだ。馬車と御者は貸してくれるというのだから、移動も問題ない。

 ついでに移動距離のことも考えてくれているのか、件数は多くてもどれもが王都の近場だから気楽なものだ。



 キョウカとシノブが魔法の練習を始めてから数日。

 この目では一切その様子を見ていないから、二人の魔法がどんなことになっているか知らないし、何も言わないってことは順調と思っていいだろう。

 サボって遊んでいるのなら、それはそれで構わない。若者は大いに遊ぶがいい。


 魔物退治でまた家を空けることになるが、金さえ渡しておけば自分たちでなんとかするだろうし、家のことは任せる。

 家事については予想以上にきちんとこなす奴らだから、俺がいなくてもなんの問題もない。


 若干投げやりな調子のマクスウェルには、足元を見た金額を提示するがあっさりと受け入れられてしまう。

 許容範囲の金額だったのだろうか。まあ俺が気にすることじゃない。貰えるものは貰っておく。


 少しだけ休憩したマクスウェルが帰っていくと、すぐに緊急の依頼を片付けるべく動く。

 準備良く小型の馬車が山の麓まで迎えてきているらしいから、早く準備せねば。


 そういや毎度馬車を使うのは不便だな。

 この際、乗馬でも覚えてしまえば、近場ならもっと気楽に出掛けられる。

 時間ができたら騎士団で手ほどきしてもらおうか。自分で手綱を握れば酔うこともないだろうしな。



 出る前に庭で訓練中の二人には声を掛ける。

 黙って行くと無駄に怒らせることになってしまうし、その程度のコミュニケーションを面倒とは思わない。


「キョウカ、シノブ。ちょっと仕事で出てくる。また魔物退治だが、近場だから泊りにはならんはずだ」

「今から? いつ帰ってくんの?」


 キョウカの顔に若干の不信感が滲んでいるように見えたのは、きっと気のせいだ。


「そうだな……多分だが晩メシまでには帰れる。遅くなるようなら気にせず先にメシ食って寝てろ」

「ん。じゃあ、あんたの分の夕食も用意だけはしとく」

「そ、その、き、気をつけて」

「おう、じゃあ行ってくる」


 なんか、こいつらとの生活にも大分慣れてきたな。案外手間が掛からないのがいい。

 そういや、通いで四人くるって話はどうなったんだろうな。こないならこないで全く構わないが。


 武器も防具も要らず、泊まりもないなら着替えもいらない。身軽なものだ。

 これといった準備もなく、すぐに迎えの馬車に乗り込むと、御者に任せて仕事場に向かった。

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