表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/441

普通の日常

 ほんの少しだけ反省して眠りついたが、目が覚めればスッキリ爽快。いつものように普通に過ごす。

 朝はトレーニングに精を出し、朝メシの時間には何事もなかったように振舞う。

 キョウカも後に引きずるタイプではないのか、いつもの態度で文句を言いながらも俺の分も用意してくれた。


 それでも一応、ケジメだけつけておくか。


「キョウカ、シノブ、昨日は悪かったな。仕事で一緒になった騎士団の小隊長と打ち上げに出かけてな。帰りが遅くなっちまった」


 嘘は言っていない。断じて嘘ではない。

 続けて昨日渡しそびれた菓子と果物を二人にやる。甘味は貴重なご機嫌取りになるだろう。

 なぜ俺がそこまで気にせねばならんのかと思わなくもないが、まあいい。


「……ふん、今度やったら、もうあんたの分は作ってやんないから」

「だ、大門さん、私の分まで、あ、ありがとうございます」

「おう。俺も今日は出掛けねぇから、家のことでもやるか。屋敷の中はお前らに任せるとして、俺は庭の草刈でもしてくる」


 適当にやったら温室でサボって昼寝をするつもりだ。根を詰めてもしょうがあるまい。


「あの、お、お洗濯は」

「そういや洗濯物たまってるんだった。あとで洗濯場に持っていくから頼んだぞ。別にいっぺんにやらなくてもいいからな」

「あんた、まさか本当に下着まで洗わせる気じゃないでしょうね!?」


 キョウカの文句をスルーして自室に引き上げる。

 もちろん下着も洗ってもらうつもりだ。嫌だというのならしょうがないが、そうでないなら問題ない。


 遠慮なく洗濯物を出した後は、鎌を持ち出して草刈の時間だ。少しは働かねば。

 優れた身体能力を発揮して、短時間である程度の仕事を果たすと、あとは昼寝の時間だ。昼メシ時まではゆっくりしよう。


 温室の石のベンチに寝転がって、うつらうつらと日向ぼっこを楽しむ。

 聞こえるのは風に草が揺れる音と鳥の鳴き声くらいのもの。風流なひと時だ。



 しばらくすると、キョウカの怒鳴り声で覚醒させられる。うるさい奴だ。

 どうやら昼メシができたらしい。そういや腹減ったな。


 手を洗ってからリビングに移動すると、何種類ものサンドイッチが大皿に並べられていた。これもサンドイッチとはいえ具材がしっかり調理されている。見た目からして美味そうだ。


「キョウカ、お前ホントに凄いな。食材で欲しいものがあったら言えよ、俺も買い物に付き合うからよ」

「な、なに言ってんのよ! 褒めたってあんたへの好感度なんて上がらないんだから!」


 お前こそ何を言っているんだと呆れてしまう。

 いいところは素直に褒めてやるのが俺の流儀だ。


「それよりあんた、なにシノブにぱんつまで洗わせてんのよ! ホントにやらせるなんて!」

「別にいいだろうが。お前だって洗わせてるんだろ?」

「ち、違うわよ! あたしは自分の下着くらいは自分で洗ってるわよ!」

「おう、シノブ。もし嫌だったら本当にやらなくていいからな。遠慮なんかするなよ」


 嫌々やられるのは俺だって気まずいからな。

 本当に無理ならしょうがない、それくらいは自分でやるとしよう。


「そ、そんなことないです、大丈夫です。キョウカちゃんも、私がやるのに」

「あ、あたしのはいいっての。それよりあんた、屋敷の掃除も手伝いなさいよ」


 キョウカがまた俺に矛先を向けて吼える。もう少し静かにできんのか。


「屋敷の中はお前らの担当だろ。それに午後は別にやらなくていいぞ。俺だって一日中働けなんて言うつもりはないからな」


 顔を見合わせるキョウカとシノブ。意外そうな顔だな。


「なんだ、働きたいなら止めはしないがな」

「……違うわよ。だって、ほかにやることないし」


 なんだと?

 やることがない。異世界にきた若者のセリフとは思えんな。

 しかし、マジで言ってるのか。いや、マジでか。


「……別に四六時中ここにいなくてもいいんだぞ? 買い物のついでに街に遊びに行ってもいいしよ。王都の中になら色々あるだろ」

「買い物に行くのは良いけど、自由に使えるお金はあんまないし。街はナンパ野郎がウザいから、ブラブラしにくいし」


 なるほどな。こいつらは人付き合いが苦手らしいし、ナンパ野郎を穏便に追っ払うなんて器用な真似はできそうにない。しょうもないトラブルに発展する可能性を自覚してるらしい。


 あとは金か。小遣いをやるのは別にいいが、変に遠慮しそうなところもある。なんだかんだ、こいつら真面目っぽいんだよな。


 しかしなんだ。確かにやることがないのは問題だ。やることというか、やりたいことだな。

 この屋敷で一生働いてくれても良いが、それじゃあんまりだろう。


 はぁ、しょうがねぇ。俺もどうせ暇だし、少しは若者のために一肌脱いでやるか。ほんの気まぐれだ。


「キョウカ、シノブ、メシ食い終わったら中庭に出るぞ」

「は? 急になに」

「え、え、お庭ですか」


 ここは異世界なんだ。少しは順応しなけりゃやっていけないし、どうせなら楽しめってんだ。心持ちが重要なんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ