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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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第四種指定災害

 夜はやることもないから少しだけ酒を飲んで早く寝る。必然、目覚めも早くなるわけだ。

 まるで老人だなと思いつつも、夜明け前には起き出して顔を洗う。


 そして日課にしている拳闘無比のトレーニングを朝日を拝みながら二時間は続ける。こうしているとストイックなかつての日々を思い出して懐かしい気持ちになる。


 軽く汗だけ洗い流して身支度を整えると、そろそろ時間のはずだ。

 キョウカとシノブはまだ寝ているようだな。寝る前に木製の長椅子を見ては、また文句を言っていたがしっかりと眠っているらしい。


 まだ冷たい朝の空気を感じながら山の麓まで降りて迎えの馬車を待つ。

 ほどなく一台の馬車が到着して俺を迎え入れた。


「刑死者の勇者さま、お迎えに上がりました」

「おう、よろしく頼む」


 御者に簡単な挨拶を済ませて乗り込むなり、結構なスピードで走りだす。どうやら他の騎士たちに追いつくためらしい。

 ……馬車への耐性も大分付いてきたな。


 先行していた部隊に追いつた後は、ゆっくりとしたペースで馬車に揺られるが、やはり半日の距離は長い。

 吐くまで調子を崩すことはなかったが、それでも万全とはいかない。それは俺だけではないので十分な休憩時間がとられたのは助かった。


 第四種指定災害討伐の目的地近くで、軽い食事を兼ねた長めの休憩時間が終われば、いよいよ仕事の時間が始まる。



 まずは騎士の小隊長と簡単な打ち合わせだ。


「斥候によれば、オーガの群れは集落を作って住み着いているようです。数はおよそ八十匹で、亜種は確認できません」


 人里近くでオーガの集落か。迷惑な。

 もっと離れたところであれば、人間に討伐されることもなかったろうにな。もっとも、魔物に哀れみなぞ感じないが。


「八十か。割と多いが、それでも想定の範囲内だな。決めておいたとおりにやるぞ」


 作戦という作戦もない。いつものように俺が単身でオーガの集落に殴り込むだけだ。

 騎士は馬車を守る部隊と、逃げ散ろうとするオーガを討伐するのに分かれる。騎士は五、六人の班を作り、班単位で行動することになる。


 今回は指定災害の討伐ということで、新米ではなく経験のある騎士が編成されているから特に心配する必要はない。



 配置につけばさっそく行動開始だ。

 それにしてもだ。森林地帯の中に集落を形成しているだけあって、遠目から見ても木々は伐採されているし、その木で作ったと思わしき簡易的な巣のようなものまである。村としての体裁は整ってるように思えるな。

 魔物であるオーガが村を作るとは意外だ。知能はそれなりに高いと考えるべきだ。


 まあどれだけ知能があっても魔物は魔物。ぶっ殺すだけだ。仕事だしな。

 しかし、良く考えてみれば森の中での戦闘なんて、足場の悪さや見通しの悪さもあって、俺の力が十分に発揮できるとは思えない。

 今回は多少なりともマシな環境で戦えるようだし助かったかもしれない。今後はその辺も考えないとな。



 さて、そろそろやるか。

 身を隠していた木陰から出ると、堂々とした足取りで集落に侵入する。


 オーガたちは食事の時間だ。いくつかのグループに分かれて、思い思いに食事を摂っている。

 何を食べているかが問題だが、それは誰であれ不愉快な気持ちを抑えられないモノだ。

 魔物と人間は相容れない。奴らにとって、人間は玩具でありエサだ。分かり合えるはずがない、共存は絶対に不可能な敵対する存在。


 俺でもこの地獄のような光景には怖気立つ。

 だが、勇者の力を得た身にとってはオーガなど金稼ぎの対象でしかないし、魔物自体に恐れを感じたこともない。オーガどもは第二種指定災害であるグシオンと比べれば、数が多いだけの雑魚だ。


 歩みを進めるうちに何対かのオーガはこっちに気づく。

 虚を衝かれているのか、最初は様子見をする魔物だったが、気を取り直したように敵対心むき出しにして襲い掛かってきた。


 冷静に醜い魔物を見定めながら、心の中でスイッチを入れる。

 オーガの強さはすでに見ただけで分かっている。何の問題もない。

 奴らは横幅が太いが、タッパは俺より少し大きい程度だから戦いやすそうでもある。

 あとは如何にして討ち漏らさないように倒すかだ。

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