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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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賑やかな食卓

 風呂上りでラフな格好の少女たちを前に、若干の気持ちの揺れ動きがあったのは否定できないものの、強固な自制心とプライドによって平静を保つことに成功した。


 同居する上で、例え本能だろうが、気の緩みだろうが、潔癖な少女の前で言い訳は成り立たない。

 あー、これは早くどこかで発散しておいたほうが良いかもな。

 分別のある大人の女なら、こんな下らん心配もいらんのだがな。

 まったく、面倒だ。心身共に健康な証明だというのに。



 食事の時間は案の定、キョウカの文句の独壇場となった。


「あんた、こんなの料理なんて呼べるものじゃないじゃん。切って焼いただけじゃん」


 勝ち誇ったように文句を垂れながらも、しっかりと食べるこいつは大物かもしれない。

 たしかに切って焼いただけだが、塩加減や焼き加減は重要だろうに。


「それだけ言うなら、これからメシはお前が作れよ。料理担当だからな」

「は? なんであたしがあんたの分まで作ってあげなきゃいけないのよ。あ、ふーん、あたしの手料理を食べたいんだ?」

「うるせぇ馬鹿。食費はお前らに預けるから買い物からちゃんとやれよ」

「ば、バカってなによ、バカはあんたでしょ! この甲斐性なし!」

「……お前、意味分かって言ってんのか? まあいい。それよりシノブは何か得意なことはあるか?」


 まだ文句を垂れるキョウカは元気が余りすぎているな。テンションについていけん。

 料理担当をキョウカにするなら、シノブにも役割を与えて働いてもらわないとな。


「……お、お掃除なら、得意、かもです」

「掃除か。そいつは頼もしいがな。この広い屋敷の掃除をお前だけに任せるわけにもいかんだろう。キョウカ、お前も掃除はやれよ」

「わ、分かってるわよ! いちいち言われなくてもやるに決まってんじゃん!」

「あ、その、だったら、お掃除とは別に、その、お、お洗濯もやります」


 ほう、意外と積極的だな。そいつは助かる。たらいと板を使っての洗濯は非常に面倒くさい。

 洗濯を頼めるなら、それだけでもこいつを預かった甲斐があるってものだ。

 完全に家政婦扱いになってしまうが、本人がやると言っているのだから、別に構わないだろう。


「おう、じゃあ遠慮なく任せるからな」

「ちょっと待ちなさいよ! あんた、まさかシノブに、その、ぱ、ぱんつまで洗わせようとしてないわよね!?」

「頼むに決まってるじゃねぇか。なに言ってんだ、お前」


 馬鹿にした視線を送ると、烈火のごとく怒り出すキョウカに、慌てふためくシノブ。

 賑やかすぎるメシの時間だ。毎日こんなんじゃ、たまったものじゃないな。



 食後のオレンジっぽい果物を食べながら、明日からのことを話しておいた。

 俺が魔物退治で不在になることと、その間にやって欲しいことについてだ。


 これは今後も継続してもらうが、やってもらうことのメインは掃除だ。時間を掛けて少しずつでも進めてくれたらいい。

 あとは食材の買出し。毎日、街まで行くのも面倒だろうから、適当にまとめ買いを頼んでしまう。

 余った金は少しなら小遣いにして好きな物だって買ってもいい。

 買い物の運搬手段がリヤカーであることに、また文句を言われたが完全にスルーした。


 ちなみに二人とも所持金はゼロだった。酷い話だ。

 それから留守中に押し入り強盗でもきたら事だが、腐っても勇者の能力があればどうとでもできるだろう。その辺は強気のキョウカが請け負ってみせた。微妙に心配ではあるが。


 心配、心配か。まさか俺が人の心配とはな。

 早くも親心でも芽生えてきたってか? けっ、冗談じゃねぇ。

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