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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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疑いの視線

 相変わらずキョウカがギャーギャー文句を言いながら掃除をしているようだが、そっちはもう任せているから後は知らん。

 シノブの声は聞こえてこないが、きっと黙々と作業をしているのだろう。


 それにしても、あいつらがきて間もないのに、いきなり出張か。

 出掛けることは一応話しておかなければ。まあ下に降りてきてからでいいか。掃除が終わっても終わらなくても、腹が減れば降りてくるだろうし。

 色々とやっているうちにもう夕方だ。そろそろメシの支度でもするか。


 食事は今後どうするか考えないとな。個人個人で準備するのは交代で台所を使うことになるから効率が悪い。

 当番制にするか。いや待てよ、あいつら料理できるのか?

 まさか俺がせっせとあいつらのために毎日炊事をやる羽目になるなんざゴメンだぞ。

 しかしギャルと根暗じゃ料理の腕に期待は難しいな。ちっ、どうするか。


 嫌な事を考えながら、大雑把に食材を切って塩を振って焼いただけの、ザ・男の料理に取り掛かる。

 サラダなんて洒落たものはない。肉野菜炒めみたいなものと買い置きのパンだけだが、食後のフルーツまである。上等じゃないか。

 料理はさっと炒めるだけだからすぐに終わる。食材の準備だけして、後はあいつらが降りてきてからで良いだろう。



 日が完全に沈んだ頃になって、ようやくキョウカとシノブがリビングにやってきた。

 随分と疲れているようだし、なにより埃っぽいし汚れている。


「終わったか? とりあえず、二人で風呂に入ってこい。その間に寝床と毛布は二階の廊下まで運んでおいてやる。晩メシは風呂を上がったら出してやるから、さっさとしろよ」

「……一緒にお風呂って、子供かっつーの」


 不満そうだが順番に入られても時間が掛かるだけだ。

 ただでさえ女は風呂が長いからな。明日から好きにすればいい。


「いいから早くしろ。その汚れたなりのままでメシを食いたいか?」

「あ、そ、その、ご飯は、大門さんが?」

「そうだ。食えるものは出すが期待はするなよ」

「サイッテー。明日からはあたしが作るから」


 なに?


「まさか、キョウカ。お前、作れるのか?」

「なにその反応。すっごい失礼! あんたなんかより、ずっと料理上手だっつーの!」


 信じられんが凄い自信だ。

 シノブも前髪とメガネのせいで表情は分かり難いが、俺と同じ気持ちだろう。


「シノブ、お前はどうだ。料理はできるか?」

「そ、その、わ、私は、ご、ごめんなさい」


 元より期待していないし、がっかりすることはない。

 料理ができないといっても、俺がやる程度の料理なら誰だってできる。

 例え包丁すら握ったことがないレベルだとしても、一度やれば覚えるだろう。


「まあいい。とにかく先に風呂に入れ。メシの話は後で食いながらするぞ」


 部屋に着替えを取りに行ってから風呂に入るという少女たちを見送る。

 王宮からタオルやらは拝借してきたらしいから、俺が準備した布切れよりは使い心地もいいだろう。


「……あんた、覗いたら殺すからね?」


 戻ってくるなりこれだ。

 まったく、しつこい奴め。胡乱な視線をしっしと追い払う。


「うるせえ。俺はその気になったら覗くどころか乱入する。お前らじゃその気にならんから、気にするだけ無駄だ」


 それでもまだ心配げなシノブと文句を垂れるキョウカを無視して、寝床の長椅子と毛布を運びに向かった。


 絶対に表には出さないが、まだガキとはいえ女は女だ。

 実際、俺もかなり溜まってきているし、妙な気を起こす確率は限りなく低いが皆無ではない。

 今日、会ってみて思ったが、二人ともタイプは違うが、素材としてはなかなか悪くないレベルだ。別に俺の好みってわけじゃないがな。


 まあ、なるべく近寄らず、仕事で金が入ったら適当に街に発散しに行こう。いかんいかん。

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