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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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屋敷案内

 自己紹介はこんなところでいいだろう。まだ日の高いうちに済ませておきたいこともある。


 さっそくだが同居人として最低限の仕事の始まりだ。つまり、自分の部屋の掃除をしてもらう。

 当然、自分の部屋の掃除は自分でやらせるつもりだったから、俺は一切手をつけていない。埃や泥が満載のままってことだ。


 部屋というよりは屋敷の二階が完全に手付かずの状態だ。

 同居に当たって住み分けは必要だろうと思って、二階は少女たちのスペースにすることを決めていた。

 だから今のところ二階は丸ごとキョウカとシノブのスペースだ。部屋もたくさんあるから好きに選べばいい。


 受け入れると決めた以上は、最低限の備えだけは整えてやる。

 ベッドはないし買うには高いから、眠れる程度の大きさがある古びた木製の長椅子と毛布だけは準備しておいた。

 ささくれ立った木製の長椅子も手入れだけはしてやったし、これで当面は十分だろう。掃除が終われば運びこんでやる。


 ただし、破れたままの窓はどこも修理できていない。

 部屋を決めたなら、そこだけは板で塞いでやる予定だ。日の光が入らなくなるが、灯りは点くし別に構わないだろう。


 食器類や着替えは自前のがあるらしいって聞いていたから、余計な物は準備しない。

 そういや食費はどうなるんだ。俺が出すのか? こっちも金がないから養育費くらいは援助して欲しいが。



 ああ、あとは掃除の前に設備の説明くらいはいるか。


「屋敷の設備を説明するからちょっとこい。すまんがマクスウェルは待っていてくれ」


 まだなにか文句がありそうなキョウカと、どこか諦めたような暗い雰囲気のシノブを伴ってリビングを出る。

 説明といってもそれほどすることない。生活で使うことになる水場と俺の部屋の位置くらいだ。

 さっさと移動して説明を始める。


「ここが台所、その向こうが風呂と便所だ。洗濯場もある。ここだけ少しは掃除もしてあるし灯りも点く。便所は二階にもあるから、基本的にはそっちを使え。別にそこにあるのを使っても構わんがな」

「ちょ、なにこれ! 窓がないじゃん!」

「あ、と、トイレにも、お風呂にも、ま、窓がないです」


 あちこち見て回っては、悲鳴じみた嘆きの声を上げる。うるさい奴らだ。


「今は修理費用がねぇんだ。我慢しろ。それに、こんな山の上にわざわざ覗きにくる奴なんていねぇから大丈夫だろ」

「あんたがいるでしょうが、あんたが!」


 こいつらからしてみれば、それもそうだな。それでも現状、どうにもならんが。


「お前らなんぞ覗くわけねぇだろ、気にするな。ついでに言えば部屋にも窓はねぇからな」


 少女たちの抗議など歯牙にもかけず次に行く。いちいち付き合っていたら日が暮れる。



「ここが俺の部屋だ。何かあったらきても構わん」


 面倒を見るといった以上、相談くらいには乗ってやる。そんな機会は訪れないだろうが。

 同じ事を考えているだろう無言の少女たちを連れて、本命の二階に向かった。


 玄関ホールの正面にある大階段を登って二階に行くことになるが、俺はここまでだ。


「ここから先の二階はお前らのスペースだ。好きにしていい。部屋も好きなのを使え。ただし、この廊下を見て分かるとおり汚れ放題だ。道具は貸してやるから、掃除はお前らでやれ。終わったら寝床と毛布を運んでやるから呼びにこい」


 俺はもう慣れたものだが、とにかく汚い。自分用の部屋ひとつだけでも、綺麗にするには手間がかかる。

 玄関ホールに置きっぱなしの掃除用具を指し示すと、早く取り掛かるように促す。


「サボっても別に良いが、今のところこの屋敷で眠れる場所はリビングのソファーか俺の部屋くらいだからな。気合入れてやれよ」


 恨みがましい声と視線を無視してマクスウェルが待つリビングに移動する。こっちはこっちでやることがある。

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