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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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不動産贈与契約書

【不動産贈与契約書】


バルディア王国(以下「甲」という)と、刑死者の勇者(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結する。


第一条 目的

 甲は、その所有する以下の土地および建物ならびに全ての設備(以下「本件譲渡物」)を乙に譲渡する。


  所在地 バルディア王国シュトラス山

  範囲  バルディア王国シュトラス山の麓から山頂に至る全て


第二条 引渡し

 甲は、乙に対し即日、本件譲渡物を引き渡し、所有権譲渡の手続きを完了する。


第三条 譲渡の負担

 甲は、乙に対する本件譲渡物の譲渡に際してかかる費用は、すべて甲の負担とする。

 乙は、甲からの譲渡後に発生する費用のすべてを負担する。


上記の合意に基づき、本契約書原本を二通作成し、甲および乙は各一通ずつ保持する。


グレナール暦 三〇〇七年 緑の月 八日


甲:バルディア王国 内務卿

  署名:セルジュ・シルベルマン


乙:刑死者の勇者

  署名:大門 トオル


****



 提示した契約内容はシンプルなものだ。

 王様が譲ってくれるという内容から逸脱するものではないし、フェアな内容といえるだろう。


 今のところ王国とは良好な関係だからな。余計なことをして立場を不味くするのは悪手だ。

 フェアにやろうじゃないか。フェアにな。


 この契約は難しい内容ではないし、内務大臣もすぐに納得してサインを書いてくれた。

 契約文化というのは商活動を中心として存在するようだし、特に問題なく処理されてほっとした。

 ここで一度持ち帰って上と相談します、なんて言われると面倒なことになったかもしれない。決断力のある権力者で助かるな。


 よし、これによって完璧に俺のものとなった。自分が納得できるように形作るのは大事なことだ。


 もし契約を反故にするようなことがあった場合、特に罰則は設けていないが、勇者の力をもって報復する。

 どのように報復するかは状況次第になるが、できる限りの悪辣さを発揮してみせよう。舐められていいことなど一つもない。


 とにもかくにも、俺は王国の書類上でも契約の上でも、王家から別荘を正式に譲り受けたわけだ。

 早く見に行きたいってことで、内務大臣には協力の礼と挨拶だけして部屋を出る。その際には支度金も忘れずに頂戴した。

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