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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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役割分担

 日課になりつつあるトレーニングを終えて自室に戻ると、久しぶりにマクスウェルの訪問を受けた。

 王国の内政に携わる若い貴族だ。貴族の癖に話の分かるいい奴でもある。王様との謁見に際して色々と教わった礼は、いつか返さないとな。


「大門殿、お久しぶりです。活躍は聞いていますよ」


 嫌味のない爽やかな挨拶だ。


「おう。大変な目に遭わされてるが、それが勇者ってものなんだろうよ。それで、今日はどうした。遊びにきたって感じでもねぇな」

「ええ、そうなのです。実は仕事の話がありまして。それと、以前話されていた褒美の話も持ってきましたので、そちらは期待してください」

「タダメシばっかり食うわけにもいかねぇからな。仕事は受けてやるさ。ただし、ちゃんと情報は寄越せよ?」


 口には出さないが、実は褒美の話は今か今かと待っていた。屋敷を授けてくれるって話だ。

 環境というか、世界が丸ごと変わった影響か、俺の心持も大分変わってきている。端的に言えばそろそろ女が欲しいってことだ。


 勇者といっても王宮に出入りするような女に手をつけるのは面倒事を引き起こしそうだし、一番近しい女である担当メイドはいい奴だし打ち解けてはいるが残念ながら圏外だ。立場上、街中で引っ掛けるのも憚るし、なかなか難しい。


 自分の屋敷さえ手に入れてしまえば、王宮とは違って適当に連れ込んだりしても特に問題にはならないだろうしな。問題があってもバレなきゃいいし。

 俺もまだまだ若いんだし、せっかくの新しい世界なんだ。自由恋愛を謳歌したって文句あるまい。


「大門殿の仰ることはごもっともです。今までの不備には関係者一同反省しておりますので、どうかご容赦ください」

「お前が悪いわけじゃねぇし、済んだことはもういい。関係者が反省しているならな。それより今度の仕事ってのはなんだ?」

「直近でお願いしたいことと、今後の話になりますね」


 マクスウェルによれば、次の仕事も魔物退治だ。ただし、今回は単独ではなく騎士団との合同作戦になる。

 対象はゴブリンの亜種で、通常のよりも強力な上に知恵も回るらしい。数も多いことから、合同で事に当たって殲滅する作戦だ。場所は少し遠いが、馬車にも慣れつつあるし特に文句はない。


 それはいいとして、今後の話だ。マクスウェルが続ける。


「実は内務や軍務で連日議論をしているのですが、勇者殿の役割分担についてです」

「それが今後の話って奴か。役割分担するなら、どの勇者が何をするかで別れるってことになるのか」

「はい、そのご理解で間違いありません。刑死者の勇者である大門殿は、すでに実績を示されていることで、特に軍務から絶大な支持を集めています」


 絶大な支持ときたか。たしかに騎士の連中とは、よく一緒に訓練をしているが。


「ほう、それは意外な話だな。聞いたところによれば俺の特殊能力の数は一般人レベルだぜ? 他の勇者に比べれば屁みたいなもんだろ」

「そのようなことはありませんよ。先ほども申し上げたように、大門殿は実績を示されているのです。それも第二種指定災害の単独討伐、しかも複数を相手にした実績は限りなく大きいのです。他の勇者殿はこれからの期待値は大きいのですが、現状では期待した能力を発揮できておられません。そこで今後の役割分担に繋がるのです」


 なるほどな。俺は実績ありの即戦力だが、将来性はそれほどでもない。

 だが、若い勇者たちは可能性の塊だ。現状はヘボでも、特殊能力の豊富さと強力さから将来は大いに期待できる。そこで役割を分けるのは理にかなっている。



 王国の連中が話し合って決めた内容は単純だ。

 若い勇者たちには、そもそもの究極的な目的である魔神の討伐を。そのための遠征を含めた訓練に集中させる。


 対して俺にはこれまでの実績から、他の勇者や騎士団の主力が不在となる王国を守って欲しいと要請を受けた。

 王国騎士団の主力は若い勇者たちのお守りをせねばならない事情もあって、その間は防衛力が弱まる。魔神は世界共通の脅威であることから、各国ともに戦争をする余裕はなく、守護といっても対魔物が主目的となるようだが。


 例外として盗賊や犯罪者相手という場合もあるらしいが、それは基本的に騎士や兵士の役割になる。

 俺からしてみれば、今でも役割分担をしているようなものだし、特に異論はない。というか、今と何も変わらない。


「マクスウェルよ、俺から言えることはただ一つだ。王国が真っ当に俺を扱って約束を守る限り俺もそうする。それだけだ。フェアに行こうぜ、フェアにな」

「大門殿、お気持ちは上に報告させていただきます」


 今までの経緯から、マクスウェルは俺が何に不満を持ち、何に腹を立てているのか理解している。ただ、自国の人間のいい加減さを理解しているからか、若干心配そうではあったが同調してくれた。


「そういや褒美の話はどうなった?」

「上からお屋敷の選定は済んだと聞いていますので、今度の仕事が終わった頃にはお渡しできるかと。話によれば随分前に使われなくなった王家の別荘だそうですよ。名誉なことだと思いますし、実績に見合うのではないかと思います」


 ……マジか、王家の別荘ときたか! それは期待できそうだな。テンションも上がるぜ。


 その後はまだ別の仕事が残っているという忙しそうなマクスウェルが足早に去っていくのを見送った。

 今までの反省を生かしたのか、次の仕事に関わる詳細は書類にまとめて明日、持ってきてくれるらしい。


 そして、討伐への出発は間もない二日後と決まった。

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