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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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ダメダメな合宿【Others Side】

 休憩時間にもかかわらず武器を振るって訓練を続ける前向きな勇者たちとは違い、完全に乗り気でない者たちもいます。


 ギャルっぽい女子高生は草原に生える木にもたれかかりながら、冷めた目で訓練中の勇者たちを眺めていました。

 優しそうな雰囲気の少年とオタクっぽい少年も、ギャルとは離れた所にいますが同じ様子です。


 それとは別にして、陰気な少女はギャルの傍にいながらもただ俯いていますし、そもそも訓練自体をサボってこの場にいない者も多数いました。

 特にサボってエスケープを決め込む者たちは深刻かもしれません。いつもサボっているわけではないのですが、協調性がない事は間違いありません。


「……あいつらまたサボりか。バカバカしい、あたしも部屋で寝てればよかった」

「わ、私も。戦いは、ちょっと……」

「あんたはどう見ても向いてないし、やらなくていいわよ。あたしだってやる気ないし。そういうのは、あいつらにやらせとけばいいのよ」


 向ける視線はもちろん、訓練を続けるやる気に満ちた勇者たちです。

 テンションの落差が凄いです。同じ空間にいるとは思えない雰囲気の若者たちですが、互いにこれまでの経験から干渉は止めていました。


「はぁ~あ、あいつらも良くやるよなぁ。少しは疑問に思わんのかね、この状況」

「何を考えてるのか分かりませんけど、あの人たち楽しそうですからね。そりゃ勇者の力は凄いですけど、それでも俺は魔物と戦うなんて嫌ですけどね」

「そうだぞ、塔の勇者くん。どんな時でも、良く分からない連中のいいなりになってはいけないのだよ」


 優しそうな雰囲気の少年は、その実かなり疑り深い性格でした。自分のためになるので訓練こそサボりはしないものの、決して異世界の人間に心を許していません。

 オタクっぽい少年はそもそも人を信用するといった心持にはならない人種でした。


「そういう隠者の勇者さんは、これからどうするんですか?」

「どうするもこうするもないさ。何も情報がないんだからね。しばらくは当たり障りなく、みんなと一緒に過ごしていくよ」


 消極的ですが、現状で取り得る手段も大してないのです。隠者の勇者は塔の勇者を簡単にあしらうと、何事かの考えに没頭し始めました。



 草原から離れた川べりではひとりの少年が堂々とサボりを決め込んでいました。


「ちっ、仲良く訓練なんざ、やってられるかよ!」


 サボって川に涼みにきているのは不良少年です。不貞腐れたように川に石を投げ込む姿は、いかにも不良少年らしくて、見ようによっては可愛げがあるかもしれません。


「特にあのクソアマ、なにが正義の勇者だ。馬鹿にしやがって! ぜってー、ヤッてやるぞクソアマ!」


 怒りに歪めた顔から吐き出す言葉は可愛げがあるどころではありませんでした。

 不良少年こと悪魔の勇者は、委員長然とした少女である正義の勇者とは全くそりが合わず対立し、また不良少年の態度が悪いこともあって、早くも孤立していました。

 自業自得ではあるのですが、異世界での孤立は悪ぶっていても精神的にはキツイものがあるのでしょう。

 しかしそんな彼にも漏れなく勇者の凄まじい力は備わっています。それを頼みに彼が折れることはなかったのです。



 消極的とはいえ訓練に参加している者はまだしも、堂々とサボる者たちには騎士団も手を焼いていますが、どうにもなりません。

 未熟とはいえ、勇者に強制することなど誰にもできないのですから。

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