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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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仕事のあとでは遊びも大事

 昨日は魔神と戦った疲れがあったのか、いつの間にか眠ってしまっていた。

 晩メシのあとでキョウカとシノブをからかって遊んでいたはずだが、いつの間にか眠ってしまったらしく、起きたらリビングのソファの上で、まだ暗い時間だった。


 マイペースを取り戻すべく、まだ眠い体を無理矢理起こして早朝トレーニングから朝風呂、そして同居人が起きだしてきてからは優雅な朝メシと洒落込んだ。


 そのあとではシノブは馬の世話と乗馬の練習をすると言って出て行き、キョウカは弓の練習をするらしく、二人とも慌ただしく出て行ってしまった。まぁやりたいことがあるのはいいことだ。


 俺も魔神のことや契約の話をしに出掛ける予定はあるが、急ぐほどではない。気まぐれに自室の掃除をしてから出掛けることにした。



 王都の街に入り、まだ昼前の早い時間。急に思い立ち、愛しの天使に会いに行くことにした。

 なに、まだまだ時間はある。むさい男と会う前に、心身ともにリフレッシュしておきたい。


「あら、トオルさん。うふふ、こんな時間からですか?」

「お前に会うのに時間なんか関係ねぇ。俺はいつだって会いたいと思ってんだ」


 馴染みの店を訪れると、日の高いうちからしけこむ。素晴らしいひと時だ。

 商売女に愛を囁き、囁かれ、この世の極楽浄土を堪能する。

 楽しく充実している時ほど、流れるのは速い。


「はぁ~、いい汗かいたぜ。ヴァイオレット、次はいつ……寝ちまってるか」


 疲れたらしく、すやすやと眠る天使の寝顔ときたら、可愛くて美しくてエロくて、見ているだけで幸せな気分になる。目を覚ますまで見守っていたい気もするが、そろそろ時間だ。


「もう夕方じゃねぇか。やっべえな」


 景気よく時間無制限にしてしまったせいで、いつの間にかこんな時間だ。

 身支度を整えてそっと部屋を出ると下では、やり手ババアが退屈そうにしていた。


「もう帰んのかい。あの娘は?」


 いつもなら出口まで付き添ってくれるのだが、今は夢の中だ。


「寝てるよ。ああ、でもまだ時間は余ってんだろ? ヴァイオレットはそのまま寝かしといてやれ」

「ふん、近ごろはあの娘も金回りが良くなってね。あんた以外の客は断ってんだよ」

「そうだったのか? まあ金は俺が十分に落としてるからな、必要十分ならそんなもんだろ」


 上客を捕まえてそれで稼ぎが十分なら、不要な仕事はしなくたって当然だ。俺としてはやっぱり嬉しいと思ってしまう。


「もうあんたが貰ってやればいいだろうに」

「貰っちまっていいのかよ。もう店にはこなくなるぜ?」

「あんたみたいなろくでなしなら、きっとまた別の女を欲しがるもんさ。別腹だなんて言って店にくる奴を腐るほど見てきてんだよ、あたしゃ。でもあんたは金だけはあるからね。その点で苦労させない男なら、こっちも安心して送り出せるってもんだ。男は金だよ、金」


 嫌なことを言うババアだ。


「なんだそりゃ……。まぁいつか、な。俺もその気がないわけじゃねぇ」


 ヴァイオレットが家にいるところを想像すると、もうそれだけでヤバいが、現状で家庭を持つことはできない。少なくともキョウカとシノブが独り立ちするまでは、そうするわけにもいかないだろう。一応な。


「意気地のない男だねぇ。そうしてる間に取られても、あたしゃ知らんからね」

「うるせぇな、俺にだって事情ってもんがあんだよ。そんじゃな」



 娼館を出るともう日暮れが近い。急がなければ。

 しかし詳細の報告は委員長がやってくれているだろうから、俺はその説明に補強するくらいだ。きっと大した手間ではない。

 情報がある程度は伝わっている状態だから、報酬の件も考えてくれているだろう。これについては難航していると思うが、せいぜいこっちが納得できる良い条件を考えて欲しいものだ。


 騎士団長の元を訪れると、時間帯が悪かったのか不在で代理に話を伝えることに。ついでに王宮へと足を向けてみるも、なにやら忙しそうな雰囲気があって寄るのはやめてしまった。

 何か起こったのかもしれないが、余計なことに関わりたくはない。面倒事から遠ざかろうと家に帰ることにした。

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