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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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隠密活動

 徹夜で朝を迎えると、眠ることはせずにロージーを寮まで送り届けた。

 疲れた雰囲気の彼女を見ているとまた興奮がぶり返しそうになったが、遊んでいては昼になってしまう。


 未練を断ち切って急いで馬屋に行くと、朝日が眩しい道を駆け抜け、愛しの我が家に戻った。


 日課のトレーニングをサボった埋め合わせはどこかでするとして、さっさとシャワーだけ浴びて毛布に包まってしまう。

 キョウカとシノブには朝帰りを伝えていたし、朝メシは作り置きを頼んであるから問題ない。

 起きたら面倒後はすぐに片付けてしまおうと思いつつ、疲れからすぐに寝入った。



 がばっと起き上がると、昼を少し過ぎた頃合いか。


「……眠い」


 屋敷の中に人けはない。二人ともまたいつもの特訓に出掛けたのだろう。

 さて、ぼーっとしないで俺も動くか。


 誰もいないのをいいことに、全裸で洗面所に行って顔を洗う。

 おお、今朝方脱ぎ散らかした服はきちんと洗濯中らしい。ありがたいな。

 これもありがたいことに用意してあったサンドイッチを貪り、着替えたら準備完了だ。


 出かける間際に少しだけウサギをモフりながらエサをやると、心の栄養までチャージ。

 そうして忙しなく山道を駆け降りると、馬にも昼飯は必要だろうと思い直す。忘れてはいけない。


「よし、食え」


 水を新しいのに替えてやって野菜を適当にどさっと置く。

 もしゃもしゃとゆっくり食む姿を見ていると、癒されるような気になってくる。

 動物を急かすような真似をするのも良くないと、食べ終わるのを見守った。



 王都に移動して馬を預けると、即座に隠密行動開始だ。

 逐電亡匿を発動しながら、さっそく問題が起こるというエリアに向かう。


 話によれば、暴れん坊野郎は好き放題派手にやっているらしいから、探し出すのは簡単だろう。

 適当な高い建物の屋根に上がって、時を待つ。今日は空振りになるかもしれないが、その時はその時だ。


 どうやって進めるか、プランは一応考えてある。


 まずはアンドリューの件とロージーの件が、本当に同一人物かどうかの確認がしたい。

 今日のところはそいつに俺の顔を晒さず観察だけにとどめるか、いけそうなら不意打ちで警告を与える。なるべく早く現れて欲しいところだ。何時間とか何日も張り込みを続けるのは辛い。

 その後、夕方になったらロージーを店まで送り届け、ナンパ野郎が出てきたら倒して衛兵に引き渡す。


 昼のうちに野郎が出てくれないと、夕方に出ても同じ顔か確認できないのが面倒だ。ああ、その場合には直で問い質してしまえばいいか。

 結局は力押しだ。



 ぼーっとすること、どれくらいの時間か。

 まだそれほど経ってはいないと思われる時分、騒がしい声が聞こえた。とりあえずは近づいて様子見といこう。


「や、やめてくれよ! 金なら出したじゃないか!」

「……話し掛けんな。うぜぇ」

「それは大事な物なんだ! ああっ!?」


 どれどれ。文句を言って騒いでいるのは少年だ。まだ中坊くらいの年だろう。

 そいつの懇願を無視して、何かの箱を蹴り飛ばしたのも少年。こっちのほうが少し年上だが、かなり生意気そうなガキだ。例のガキか?


 生意気そうなガキは騒ぐ少年を無視して歩き出すと、奪った金の確認を始めた。

 うーむ、まだ分からんな。見た目だけで勇者かどうかは判断できん。特別な強さやそれっぽいん雰囲気も見られないしな……もう少し観察を続けよう。



 ターゲットに定めた少年は今度は表通りに行くと、パン屋に入って勝手に商品を食べ始めた。

 常識的には見咎められる状況だが、店主のおばさんは何も言わずに震えている。もうこの時点で異常だな。

 すると、なにを思ったのか食いかけのパンを放り棄て、急ぎ足で通りに出た。


「待てよ! ちっ、ハズレか」

「な、なによ!? 失礼でしょ!」


 後ろから女の腕を掴んで引き止めると、振り返った直後にハズレときた。面白い奴だが、非常識にもほどがある。


「黙れ……後ろ姿だけは合格だ。裏返しちまえば同じか、お前でいい」

「なんなのよっ! 誰かっ、げぇっ!?」


 うお、いきなり腹を殴りやがった。


「とんでもねぇガキだな……あ、今度はなんだ?」


 生意気で無鉄砲なガキが女を担ぎ上げたと思ったら、姿が消えた。

 逐電亡匿のレーダーにはバッチリと捉えたままだから見失ってはいない。

 しかし、これはなんだ。まさか透明化の特殊能力か?


 面白い能力だが、あれだけではやはり勇者かどうかの判別は無理だ。もし勇者だとするなら、力を使いこなせていない未熟者としか言いようがない。


 一連の行動を見る限り、あんなのが何人もいるはずはない。アンドリューが言っていた奴があのガキで間違いないだろうな。

 はっきり言って、あの程度の奴なら敵にもならない。余裕で倒せる。今日のところは警告だけしておくか。



 透明化して女を担いだガキは、見張られていることに全く気付いていない様子だ。これが演技だとしたら大したものだが、そうではないだろう。

 自分のヤサに戻るつもりなのか、路地裏を進んでいく。


 ここらでいいか。ヤサを突き止めるのもいいが、定住しているとは限らないし変えられてしまえば意味はない。

 仕掛けよう。

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