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ふたりで暮らせるかな  作者: 若松ユウ
Ⅵ パールの月
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 馬車に乗ったガッタ、ニース、ルナールの三人は、共同墓地へ向かっていた。

 そして日が高くなり始めた頃、馬車は小川の近くで止まった。三人は大きな荷物を馬車に残し、必要な手回り品だけを持って降り立った。


 周囲には草原が広がり、川辺ではうつうつと水車が回っている。丸太と板の柵で囲われた内側に目を移せば、のんきに驢馬が草を食んでいる姿も見える。この世界では、エネルギーとして蒸気機関の他にも、馬や牛などの家畜を利用しているのである。


「もう、ついたの? みずうみは、どこ?」

「共同墓地は、まだ先だよ。馬を替えたり、餌を与えたりしないといけないから、しばらく休憩するだけだ」

「そっか。おうまさんも、つかれちゃうもんね」


 ガッタが納得したところで、ニースは近くに建つログハウスへと歩き出した。ガッタも、ルナールと手を繋ぎ、ニースのあとへ続いていく。

 少し歩くと、畑で犂を牽いている水牛の姿が見えてきた。ガッタは水牛を指さしながら、ルナールに訊いた。


「ねぇ、ルナール。あのうしさん、なにしてるの?」

「あれは、固くなった土を掘り起こして、お野菜が育ちやすいようにしてるのよ」

「へぇ~。ちからもちだね。じゃあ、あっちのくろっぽいおうまさんは?」


 ガッタは、厩舎に並んでいる馬の中から、蹄鉄を取り換えている葦毛の馬を指して言った。


「お馬さんの足には、地面に当たって蹄が擦り減らないように、ユー字型の鉄を釘で打ち付けてあるんだけど、あのお兄さんは、それを新しいのと交換してるのよ」

「えっ! そんなことして、おうまさん、いたくないの?」

「もちろん、痛くない所に打ってるのよ」

「そんなところ、ある?」

「肘を抓んでも平気でしょう? それと同じよ」

「あー、こういうことか」

 

 ガッタは、実際に袖を捲って肘を摘まんでみて、身体の中には痛みに鈍感な部位もあるのだと体感すると、そういうものかと理解したような態度を示した。

 そんなことを話しているうちに、三人はログハウスの入口の前に到着した。ドアの横には、二本の真っ直ぐな角が描かれた立て看板が置いてある。


「ニース。ここは、なにやさんなの?」

「ここは、この牧場のオーナーが経営してるカフェだよ。湖まで、まだ距離があるから、ここで少し早めのランチにしよう」

「わぁい! カフェでランチだ!」


 ニースがカランコロンカランとカウベルを鳴らしてドアを開けると、ガッタはニースとドアの隙間を潜り抜け、我先にとログハウスの中へ入った。

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