079
ティータイムの後、ルナールとガッタは取り込んだシーツを籐のバスケットに絡まないように入れ、ニースのベッドルームへ移動した。
ベッドの上の毛布やクッションを畳んでイスの上などに避けてから、ルナールとガッタは、それぞれシーツの端を持ち、ヘッドボードがある側にマットレスを挟むようにして立った。
「それじゃあ、片っぽの角に、シーツの端を押し込んで」
「こんなかんじ?」
「そうそう。それで、もう片っぽの角を持って、向こうまで引っ張って行きましょう」
「それーっ!」
二人で協力したことで、一気にマットレスが真っ白なシーツに包まれた。
ルナールが、表面の細かな波立ちや余りを調整しようとすると、それより先に、靴を脱いだガッタがマットレスにダイブした。
「ポカポカしたにおいがする~」
「ガッタちゃん。気持ちは分かるけど、それじゃベッドメイクが終わらないから、降りてもらえると助かるわ」
ガッタが脱いだローヒールを拾い、ルナールの足に履かせようとすると、ガッタはベッドの反対側へ転がり、マットレスの広さを堪能する。
「ニースのベッド、おっきいなぁ」
「背の高い方ですからね、ニース様は。身体に合った大きさでないと」
「なるほどねぇ。――ずんずんずんずん……バァッ!」
「まぁ!」
上体を起こし、裸足のままマットレスからカーペットに降りると、ガッタはベッドの下を潜り抜け、ルナールのすぐ横へと現れた。
ルナールは、ガッタを窓辺に連れて行き、パンパンと髪やワンピースの埃を払ってから靴を履かせた。
「えへへ。びっくりした?」
「えぇ、驚きましたとも。でも、せっかくの綺麗な髪やお洋服に埃が付くので、ほどほどにしてくださいね」
「はぁい」
お返事だけは良いのよね。こうしたら、そのあとに、どうなるか、という予想が付いてくれると、もっと良いのだけれど。
仮置きしていた毛布やクッションを元通りに戻しながら、ルナールは、まだまだガッタには経験から学ばせるべきことや、知識として習わせるべきことがたくさんあると思った。それと同時に、自分一人で面倒を看るには、そろそろ限界があるのではないかとも考えるのであった。




