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ふたりで暮らせるかな  作者: 若松ユウ
Ⅳ ダイヤモンドの月
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058

 朝日とともにスッキリ目覚めたガッタは、ルナールに渡されたワンピースに着替え、タッタッタと階段を下りて行った。

 そして、ダイニングでシュヴァルベが寝ているのに気付くと、ソファーの周りをちょろちょろ動き回りながら、瞼をつまみ上げて白目を剥かせたり、尾羽を引っ張ってみたりして起こしにかかった。


「スバル、あさだよ。ねぇ、スバル。おきて!」

「ううっ……、起きてるって」

「ねてるじゃない。そんなんだから、チンチクリンっていうのよ?」

「わかった、わかった。起きるから、姉ちゃんの口真似をするな」


 シュヴァルベは、二日酔いが残る頭に鈍い痛みを感じつつ、身体を起こしてソファーから立ち上がり、シャワーを浴びようとユニットバスへ向かった。それと同じくらいのタイミングで、二階からルナールとニースが降りて来た。足音が聞こえたガッタは、急いでニースに駆け寄った。


「おはよう、ニース」

「おはよう。昨夜は、眠れたかい?」

「うん。ぐっすりだった」

「それは結構」

「きょうは、なにするひなの?」

「今日は、マーケットに行ってみようと思う」

「マーケットは、きのうもいったよ?」

「昨日とは違うエリアで、野菜や魚などの生鮮品を扱う店が多い場所に行こうと思うんだ」

「ふぅん。おやさいとおさかなのところなのね」

「そう。でも、その前にブレックファーストを済ませることが先だ。空腹では、頭脳も身体も働かない」


 ガッタとニースが話しているあいだに、玄関ドアをノックする音がした。誰が来たのか察知したルナールがエントランスへ向かい、何気ない挨拶やら雑談やらを交わしたあと、布巾が掛けられた籐のバスケットを持って戻ってきた。布巾の下からは、細長いバゲットがはみ出している。

 焼きたてのパンの香ばしさに釣られるように、ガッタはルナールに近付き、沸々と浮かび上がった質問を次々に投げかける。


「ねぇ、ルナール。いまのひとは、だぁれ?」

「このビーアンドビーを経営してるオーナーさんよ。ニース様とは、古いお知り合いなの」

「へぇ。そのオーナーさんは、どんなひとなの? かっこいい?」

「そうねぇ。カッコイイというより、ダンディーと言った方が良いかしら。でも、見た目に反してシャイな方だから、ガッタちゃんに会ったら、きっと困惑しちゃうわね」

「そっかぁ。それで、そのなかみは?」

「ブレックファーストよ。ここに泊まるお客さまには、いつも手作りのお料理をサービスしてるんですって」

「そうなんだ。いいにおいがするね~」


 バスケットをダイニングテーブルへ置き、ルナールがテーブルセットを始めると、ガッタはルナールを手伝い、ランチョンマットの上にスプーンを並べはじめた。

 そこへ、シュヴァルベが現れ、タオルを頭に掛けてワシワシと片手で拭きながらテーブルの横を通り過ぎ、中央に置かれたバスケットの中身を気にしつつ、ソファーへ向かい、先に寛いでいるニースの横へ座った。


「腫れは引いてたよ」

「そうか」

「頭痛がするんだけど、何かアドバイスはある?」

「しばらく酒を控えるように」

「薬師の先生らしいや。それが出来たら、苦労しない」


 男性陣が話しているあいだに、テーブルの上には、スライスしたバゲット、レタスとグレープフルーツのサラダ、白身魚のカルパッチョなどが並び、彩り鮮やかな食卓が出来上がっていった。

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