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ルナールがランチの用意をしているあいだ、ゲストルームでは、ガッタがニースから個別指導を受けていた。部屋の窓際にデスクが置かれ、ガッタはイスに座ってデスクに向かい、その斜め後ろにニースが立って教授しているという構図である。
一番上にガーネットの月と書かれ、その下に一から三十一の数字が週と曜日で格子状に区切られたカレンダーを見せながら、ニースはガッタにルナールのシフトを理解させようとしていた。
「なんで、ななにちずつにわけるの?」
「六日働いて一日休んだという創造主の言い伝えによるものだ」
「そうぞうしゅ?」
「創造主というのは、この世界を創った神様のことだ」
「ふーん」
ガッタは、七列五行に並んだ数字をじっと見ながら、気のない返事をした。
これは、あまり納得していないな。ガッタの薄い反応を見つつ、ニースは内心でそう思いながらも、授業を先に進める。ニースは、ペンで右端の列に並んだ数字に丸を付けながら言う。
「ルナールは、毎週サンの日が休みだ。今、印をつけた日には、ルナールはこの屋敷に来ないから、覚えておくように」
「えっ! ルナールは、いつもおうちにいるんじゃないの?」
ガッタが新鮮な驚きを見せると、ニースは、やや落胆しながらも、一度した説明を繰り返した。
「ルナールは、住み込みではなく通いのハウスキーパーだから、平日の日中しかこの屋敷に居ない」
「あっ。さっき、おんなじこときいたきがする」
「僕も、同じことを繰り返してる気がするよ。それで、明日がそのサンの日だから、ルナールは休みだ。朝になっても、屋敷じゅうを探さないように」
「はーい」
実に気持ちのいい返事をしたガッタであるが、明日の朝まで覚えているかどうかは、いささか怪しいものである。ニースは、また明朝に説明し直さないと駄目だろうなと半分諦めつつも、カレンダーを丸め、ペンとインク壺を片付けながら言う。
「そろそろランチの準備が出来てる頃だろうから、ダイニングへ行きなさい。僕は、これを片付けてから向かう」
「わかった。今日のランチ、なにかな~」
ガッタは、弾みをつけてイスから降りると、パタパタと元気よくダイニングへ向かって駆けて行った。ニースは、イスをデスクの下に押してから、デスクの上に忘れ物が無いか目視で確認し、その場をあとにして書斎へと向かった。




