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ふたりで暮らせるかな  作者: 若松ユウ
Ⅶ ルビーの月
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「これは、どういう状況でございましょうか?」

「僕が聞きたい。助けてくれ」


 ブレックファーストができたことを知らせに来たサーヴァは、スツールに座っているニースが、ガッタと同じ髪型にされているのを目撃した。ガッタは「にあう、にあう」と喜んでいるが、ルナールは壁に片手を突き、反対の手で口元を抑えながら肩を震わせている。かくいうニースは、喜ぶわけにもいかず、さりとて結び目を解くわけにもいかないため、脳内の感情が混雑して、表情が追い付かない様子である。

 サーヴァは、先ほどの主寝室でのやり取りを持ち出し、目前の問題から話の中心をずらした。


「ところで、あのフォトフレームは、どちらに?」

「フォトフレーム?」

「先月、湖畔で写真を撮っただろう? あの時のフィルムの現像が終わって、今朝、届いたんだ」

「げんぞー。なんか、つよそう!」


 再び話が逸れる前に、サーヴァは写真についてガッタに簡潔に説明した。するとガッタは、部屋に入ってきたニースが片手に何かを持っていたことを思い出した。

 その時にニースが咄嗟にガッタの手の届かない棚に置いたため、ガッタはフォトフレームを指差しながら、その場でトントンと飛び跳ねながら催促した。


「えっ、もうしゃしんできたの? だったら、はやくいってよ。みせて、みせて!」

「話を切り出す前に、ここへ座らせたのは誰だったかな?」

「だれだったかな~」

 

 ニースは、ガッタが追及を逸らそうと白を切ったのを見て、知恵が回るようになってきたと感じつつ、立ち上がって棚の上に手を伸ばし、ガッタにフォトフレームを手渡した。

 受け取ったガッタは、印画紙に穴が開くのではないかというほど、食い入るように見始めた。


「おぉーっ。これが、しゃしんかぁ。かがみでみるのと、ちょっとちがうね」

「鏡に映るのは、その時その時に対応したもので、しかも左右が反転した像だからね。それに対して、写真は静止した状態で、モノクロ、しかも、ひと月以上も前の姿だ。違和感があって当然だよ」

「しゃしんって、おもしろいなぁ」


 初めて見る写真に、ガッタは興味津々である。そんなガッタのフレッシュな反応に、ニースは学術的な関心を誘導され、心密かに児童の発達心理についての考察を繰り返した。そんな二人を、ルナールとサーヴァは春の陽射しのようなあたたかさで見守っていた。

 のほほんとした朝のひとときは、誰もダイニングに来ないことに痺れを切らしたカリーネが息せき切って駆け込んでくるまで続いた。

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