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異世界⇔地球間で個人貿易してみた【コミカライズ】  作者: 肥前文俊
第三章

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第03話 祠の場所を絞り込め

 貸衣装と馬車を返却した渡たちは、宿に戻っていた。

 マリエルが事前に言っていたように、食事の質はとても高いものだった。


 作りたてのフレッシュなチーズと焼きたて白パン。

 近隣の農園で採れた葉野菜のサラダに、干し貝から出汁をとったスープ。

 メインディッシュには上等な赤塩と香草を使ったボーンステーキ。


 エアが大興奮してお代わりをしていた。


「ん~おいしー!! 幸せー!!」

「ほら、やっぱり全然黙ってないじゃないか」

「むぐっ……!? だ、だって! 美味しいのに黙ってるなんて、料理に悪いし!」

「エアの食べっぷりは、見てるだけでこちらも食欲を誘われますよね」

「ああ。つい食べたくなるな。俺は料理を楽しく美味しそうに食べてくれる女性は好きだぞ」

「むぐっ……!! きゅ、急に変なこと言わないでよね……」


 突然好意を伝えられたからか、エアが顔を赤くして、目を逸らした。

 それでも食べる勢いが衰えないのは凄い。

 強靭な身体能力を支えるためにも、栄養補給はとても大切なのだろう。


「私ももっと賑やかにしたほうが良いのでしょうか?」

「いや、マリエルの落ち着いた食べ方も凄く綺麗で良いと思う。これからマナーにも気を付けないといけないし、実は結構参考にさせてもらってるんだ」

「そうですか。なんだったらビシバシご指導させていただきますよ?」

「勘弁してくれ……」


 途端に機嫌が良くなったマリエルの姿を見て、渡はほっと胸を撫で下ろした。

 タイプの違う二人の女性がいると、片方だけ褒め続けるのはあまり良くないことに気づいた。

 二人とも愛しているのだし、それぞれの個性は魅力的なのだ。

 主人である渡の意向を変に意識してぎこちなくなって欲しくはなかった。


 〇


 マリエルが非常にざっくりとした王都の地図を描いてくれる。

 王都は大阪市、あるいは大阪城をイメージすれば分かりやすいだろうか。

 大きな川が都市の回りを囲み、自然の大堀を作っている。

 大昔はもっと川から都市まで距離があったそうだが、幾度もの拡張工事を繰り返して、川のすぐ傍に城壁が建っていた。


 一つの都市が丸々入るほどの城壁を建てるのに、どれほど馬鹿げた労力が必要になるのか想像もつかないが、魔術の力やモンスターの襲撃を考えると、防壁がないと悲惨な状況になるのだろう。

 地球でも万里の長城という実例がある以上、不可能な事でもない。


 そして、その極めて広い土地のどこかに、ぽつりと他人からは認識できないゲートがあるのだ。

 改めて、どうやって探せばいいのか頭が痛かった。


「王都の隅から隅まで歩いて調べるのは現実的じゃないよな」

「アタシが全力で走ってこようか?」

「その間ご主人様の護衛はどうするの?」

「あ……無理だね。ごめん」


 恥ずかしそうにしながら、エアが頭をかいた。

 猪突猛進なところもあるが、これはエアが考えなしというより、渡の役に立ちたいという気持ちが先走ってしまった結果だろう。

 気持ちが伝わっただけに、無駄にはしたくない。

 渡は自分の考えをまず伝えることにした。


「気持ちはありがたいけど、考え方次第で、多分調べる範囲はもっと減らせると思うんだ」

「そうかもしれません。ご主人様はどのような考えがありますか?」

「王都は段階的に拡張してて、第二城壁、第三城壁と移築を繰り返してるよな」

「はい、今は第三城壁まで拡張されていますね。これ以上は川を越えるため、厳しいところがありますね」

「神代にできたものだと考えると、第一城壁の内側にあると考えた方が自然じゃないか?」

「それは確かにそうです! 都市に合わせて神がゲートを造ったのか、ゲートがあるから都市ができたのかは分かりませんが、どちらにせよ最初から遠い所にゲートがあるとは思えません」

「おおー! ものすごく探すところが減った!」


 マリエルが地図に斜線を書いて、候補地を削っていく。

 面積比で考えると、一気に六割ほどが除外された。


「同じように考えると、俺は城内が怪しいんじゃないかと思うんだが。為政者ならゲートを何とか独占したいだろう」

「それはないと思う」

「そうですね。少し考えづらいかと」


 渡の予測を否定したのはエアだった。

 珍しく意見を唱える姿に、渡は少し戸惑ったが、考えがあるならむしろ聞きたいところだ。


「なんで、ないと思うんだ?」

「便利だけど、万が一戦争に使われたら一瞬で攻められて負けてしまうから」

「でも、それは時間と空間の神様が禁止したんだろう?」

「今も使えてる者が一人でもいるなら、絶対に警戒すると思うし、アタシと同じ一族なら、誰も同意しない」

「ふうん。なるほどな。防衛上の懸念か」

「となると、王城も省くことになりますね」

「だいぶ減ったな……」


 当初の地図の五分の一ほどに絞り込めた。

 それでも、それでも一つの大都市の五分の一だ。

 表通りから裏路地にいたるまで、隅から隅まで調べるとなれば、一体どれほどかかるか分かったものではない。


(まだ現実的な距離じゃないな。もっとアイデアが必要だ)


「ほかに意見はないか? 確証がない物でもいいぞ」

「では私が。南船町の祠を見ていて思ったのですが、都市の中心地にほど近いながらも、大通りにはありませんでしたよね。これって何か意味があるのかもしれません」

「意味か。たとえば?」

「神代とかの利用者が多い時代で考えれば、いきなりゲートから多くの人が出てきて、他の人とぶつかる可能性とか」

「たまたまじゃないのか? 昔は皆が認識できていたんだろう? 交通の便を考えたら、大通りに面したところの方が便利だろう」

「あ、そうですね。では、今のは忘れてください」

「いや、最初から排除するのはどうかってだけだ。前例があるわけだし、参考になる意見だと思う」


 参考にすべきだが、完全に排除すると見落としに繋がりかねない。

 中心地に近い表通りもチェックするべきだろう。


「後は何かあるか?」

「アタシはないかなあ。実際に通ってみて気づくことはあるかもしれないけど」

「そうですね。地図から分かるのはこの程度でしょうか?」

「よし、じゃあ明日からは街を観光しつつ、祠も探すぞ」

「おー!」

「ふふ、祠だけ探すんじゃないんですね?」

「せっかくあちこち回るんだ。どっちも楽しまないと損だろう?」


 せっかく王都まで来たのだ。

 祠を探すのも大切な目的だが、都市を観光し、二人とデートを楽しむのも大切な時間だ。

 土産物を買ってみたり、街を実際に回ることで良い商品も見つかるかもしれない。

 渡はニヤリと笑った。




 ――だが翌日。

 渡たちは思いもよらない騒動に巻き込まれることになる。

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