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【完結】コミカライズ重版!〜悪役令嬢はもう全部が嫌になったので、記憶喪失のふりをすることにした~周りの皆が突然王子をディスリはじめました~  作者: かのん
加筆編

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43話

 王城の客間へと移動すると、シックスとセシリアの反対側にヒューバートとエヴォナ嬢が座る。


 ただ、客間は客間でも通常の場所とは少し違い、セシリアはこの部屋に初めて入った。


 ヒューバートとエヴォナは気づいていないかもしれないが、通常の客間よりも少しお互いに距離が離れており、部屋の中にも多少の違和感がある。


 違和感の正体は何だろうとセシリアは思いながらも、話し合いが始まるとそちらに集中することにした。


 ヒューバートの面持ちは強張っており、学園内にいた時よりも何かに追い詰められているような顔をしている。


「セシリア。いい加減にしろ。そしてシックス、お前も現実を見ろ。何度も言うがセシリアは私を愛していたんだ。セシリアのことを思うならば、身を引くべきだろう?」


「そうですわぁ。愛する人たちを引き裂くなんて、胸が痛みますよ」


 エヴォナはいったいどういう立ち位置なのだろうかと思いながらも、シックスと目配せをすると、セシリアは深呼吸をしてから、口を開いた。


「お二人に、お話があります」


 その言葉にヒューバートとエヴォナは小首をかしげる。


 セシリアは拳をぎゅっと握りながら、はっきりとした口調で言った。


「私の記憶についてですが、先日、すべてを思い出しました」


 その瞬間、勢いよくヒューバートとエヴォナが立ち上がり、そしてばつが悪そうな表情を浮かべると、まず口を開いたのは、エヴォナであった。


「え、えっと、本当に思い出したの? 全部ではないのではないかしら!?」


「そ、そうだ。全部ではないのではないか!?」


 最後の希望にすがるように言葉を並べた二人に、セシリアははっきりと告げる。


「いえ、全て覚えております。エヴォナ様が私の友人のふりをして、私に嘘をつき、ヒューバート殿下の好みの真逆を教えて、婚約破棄に追い込んだことも」


 するとヒューバートは自分だけは逃れようと口を開く。


「なっ!? エヴォナ、なんという悪女だ! 私たちの仲を引き裂くとは。なぁセシリア。全てエヴォナが悪かったのだ。私はお前のことを今では美しくていとおしいと思っている」


 なんという薄い言葉であろうか。


 エヴォナは顔を青ざめさせて叫び声をあげた。


「ヒューバート様! 話が違うではないですか!」


「黙れ! 悪女が!」

 二人の醜いやり取りを見ながら、私はこほんと咳をつくといった。


「ヒューバート殿下、申し訳ありませんが、下品で娼婦のような女は殿下にはふさわしくないとおっしゃったではありませんか。エヴォナ様のような嘘をつき猫をかぶるような清楚で教養のある女性が殿下は好みなのでしょう?」


 その言葉に、ヒューバートは頬をひきつらせ、エヴォナは顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。


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