表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】コミカライズ重版!〜悪役令嬢はもう全部が嫌になったので、記憶喪失のふりをすることにした~周りの皆が突然王子をディスリはじめました~  作者: かのん
加筆編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/79

4話

「セシリア、あまり気を張らずに、無理をするな」


「第一王子殿下もきっとセシリアちゃんの可愛らしさに、そのうち気づくわよ」


 王家からの報告によってセシリアとヒューバートとの仲が芳しくないことに、セシリアの両親も気をもんでいた。


 セシリアはそれを知っているからこそ心配を掛けたくなくて笑顔で出立する。


「はい。それではいってまいります」


 そして王城へと向かう馬車の中で、独り言ちる。


「早く、ヒューバート殿下と仲良くならなければ、お父様とお母様に心配をかけてしまうわ」


 月に一度はヒューバートとお茶会をする席が設けられるようになり、いずれ結婚するのだからと仲良くなれるようにと配慮がなされた。


 ヒューバートとセシリアが好む茶菓子が用意されたり、おもちゃが用意されたりしたが、結局のところヒューバートがそれらに難癖をつけては、セシリアを煙たがっていた。


 執事や侍女達も、どうして頑なにセシリアを嫌がるのだろうかと疑問に思っていたが、おそらく肌で、セシリアの真面目な性格や、王国の未来を見据えて王妃になる覚悟をもって婚約者になったことなどを感じとっているのだろう。


セシリアのそうしたところが煩わしそうにする節があった。

 

そんなある日の事だった。


 セシリアは待ち合わせのお茶の時間よりも早めに王城へと到着すると、ヒューバートが来るまでの時間を王城の図書室で過ごしていた。


 自分の屋敷の書庫よりもやはり王城の書庫の方が、豊富に本が揃えられており、それを読むことは学びにもつながる為、セシリアは好んで図書室にも通っていた。


「あら? シックス殿下?」


 本棚の本を一冊手に取り、窓の外を不意に見た時であった。


 木の陰にシックスの姿が見えた気がして、セシリアは足を止めると、窓へと近寄りシックスの姿を見ようとした。


 ヒューバートがお茶会に来ない時など、シックスと過ごす時間の方が多くあり、親しくなってきていた。


 だからこそ挨拶に行こうかと思ったのだが、その姿に、セシリアは息を呑む。


「え?」


 シックスはボロボロになっており、悔しそうに顔に着いた泥を、手で拭っていた。


 セシリアは慌ててシックスの元へと向かうと、水場で顔を洗うシックスへと声をかけた。


「シックス殿下。どうしたのですか?!」


 後ろから突然声をかけたのだろう。水を滴らせたシックスは、驚いた表情で振り返り、一瞬固まった。


「せ……セシリア嬢?」


「はい。シックス殿下どうしたのです?」


 シックスは焦った様子で口ごもると、恥ずかしそうに視線を反らした。


「いえ、ちょっと、転んだだけです」


「転んだ?」


 どれだけ派手な転び方をすればそんなにボロボロになるのだろうかと思いながらも、セシリアはハンカチをシックスへと差し出した。


「お医者様に見せましょう。着替えもしなければなりませんね」


 セシリアはそういうと、傍に控えていた侍女達に声をかけ、シックスの世話をさせようとしたのだが、シックスはそれを手で制した。


「いえ、大丈夫です。今から部屋に帰って自分でしますので」


「え? ですが」


「大丈夫です。その、ご心配には及びません。それにハンカチも結構です」


 その言葉にセシリアはおせっかいが過ぎただろうかと不安に思ったのだが、シックスは笑みを浮かべると言った。


「いや、心配していただくのは、その、ありがたいのですが、ハンカチが汚れてしまうのは忍びないです」


「まぁ。ふふ。ハンカチは汚れを拭くためにあるのですよ。さぁ、どうぞ」


 セシリアはさっとシックスの顔をハンカチで拭い、それを手渡した。


 シックスは驚いたような顔をしたのちに、くすりと笑った


「ありがとうございます。では、ハンカチ、ありがたく使わせていただきます」


「えぇ。それで、どこで転んだのです?」


 その言葉にシックスは笑顔で答えた。


「実は、裏庭の大きな木に一度上ってみたいななんて思っていまして、そしたら、そこから滑って落ちたんです。でもこれは内緒ですよ? 怒られてしまいますから」


「まぁ! 怪我は!? 大丈夫ですか?」


「もちろん大丈夫です。ほら、ね?」


 そう言ってシックスはその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。そんな様子にセシリアはくすくすと笑い、シックスも微笑んだ。


「でもこんな格好では失礼なので、部屋に帰って着替えてきますね」


「えぇ。わかりました」


「では、失礼します。お時間があれば、後でまた会いましょう」


「はい」


 歩き去っていくシックスの後姿を見送りながら、ふとセシリアは思う。


「でも、なんであんなに悔しそうな顔をされていたのかしら」


「そりゃあ、黒目黒髪は嫌われるからだよ」


「え?」


 振り返ると、そこにはにやにやと笑うヒューバートの姿があった。


「ヒューバート殿下にご挨拶申し上げます」


「あぁ。セシリア嬢。君は知らないだろうが、あれは王城でも嫌われているんだ。だから、あぁいうめに合うんだよ」


 自らが使用人らに命令してやらせたとは言わず、ヒューバートはそういうと立ち去って行ったシックスの方を見つめながら、楽しそうに笑う。


「え?」


「黒目黒髪なんて不気味だろう? だからさ。っふ。お前も嫌いなら」


「まさかそんな無知な理由でシックス殿下を傷つけた者がいるというのですか!?」


「え?」


 セシリアの表情は怒気に満ちており、化粧がしっかりとされたその顔は、威圧感を放っていた。



読んでいただきありがとうございます!

飛び上がって喜んでいます!(●´ω`●)ちなみに私のTwitterのアイコンは飛び跳ねている犬みたいなやつです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズこちらから 一話無料で読めます!

img_f13f059679b249de89cae1c4b84edf7a2060
書籍特集ページはこちらから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ