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ログからしか得られない栄養がある

腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい - World of Sandbox -(てんてんこ)

https://book1.adouzi.eu.org/n2749hf/


※Web版の感想です。また、「第380話 腹ペコ要塞は異世界に大勢力を築きたい」のあとがきにリンクがありますが、noteで設定面からの自著解説が連載中です。

https://note.com/ten_tenko


 主人公は惑星~宇宙開拓ゲーム「ワールド・オブ・スペース」のプレイヤーでしたが、その統括AI"リンゴ"とともに、起きたら未知の惑星に放り込まれていました。初期要塞には食糧が何一つなく、栄養点滴からのスタートでした。惑星探査を進め、戦力を整え、資源を主に掘って(養殖して、いくらか狩って)蓄え、支配地域と現地交易先を増やしていきます。タイトルの「腹ペコ」は、次の目標に向けた資源が常に足りないことを言います。


 主人公はやがてゲーム内でイブを名乗りますが、転生前の人生についてはほとんど語られません。日本語が母語であり、日常生活を助けてくれるAIがいたようですから、未来の日系人なのでしょう。「ワールド・オブ・スペース」は惑星を平定し、宇宙に進出し、管理できる資源を増やしていく箱庭ゲームであったようです。統括AI"リンゴ"は得意不得意がいくらかばらけることを求めて、自分をもとに独立した経験を積むAIをいくらか増やし、すべてにイブのアバターと同じ狐耳少女の外形を与えます。イブ自身もそのようなアバター姿になっていて、ゲーム同様、要塞に生かされている限り無限の寿命を持ちます。


 AIたちはイブを守る行動原則から派生して、イブに触れあって相手をしてもらいたい欲求を持つので、その増加は抑制され、それでも増える孫AIたちを時々集めてイブと語らうもふもふ慰労会が催されます。それと裏腹に、アバターに生殖機能はなく、まあだいたい主人公は男性なのに女性姿になってしまっているのですが、恋愛や婚約破棄は起こらず、過保護傾向のリンゴたちはイブを要塞外に出したがりません。


 地球よりかなり大きい惑星には魔法生物や魔法の使える人間(広義)たちがおり、イブたちはしばしば敗北します。これからどんな脅威に出会うかわからず、限りなく資源を求めるイブたちですが、政治的支配の欲求も合理性もなく、安定した交易先は放置され、ときに援助されます。ご政道とか社会的正義とか言った考慮はないのですが、円滑な資源獲得のために地域安定は有益なので、ときに容赦のない治安戦が行われます。


 現地勢力も私欲にまみれた有力者はいるものの、多くはゲーム内プレイヤーのように、シンプルな利害関心を持ちます。つまり血縁地縁や伝統的通念と近代合理性がぶつかったりするところは描かれません。それに対し、AI集団はイブお姉さまのために一枚岩を保ちます。まあ、ゲームリプレイのように読めなくもありません。


 しばしば、脅威生物は撃退されるだけで生かされたままです。かえって有力魔獣を討伐したために縄張り争奪が刺激され、スタンピードが起こる事例も描かれます。主人公たちの目標は大戦艦と大艦隊の獲得、たぶんその向こうにある宇宙進出に向いており、世界をくまなく管理下に置くことは重視されていません。ですからこの意味で、この物語は「未完のエピソード」が多数放置されたまま、要塞指揮下の戦力と資源が膨れ上がっていくことが物語の進行ゲージになります。だから本質的に、この物語に終わりはないのです。


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