「古代。波動砲で斜め上を撃て」「は?」「復唱はどうした」
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~皆とは別ゲーをしている気がしますが、私は元気です~ (エリーゼ)
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女子高生竜胆天音はある日、疲れからか「限定1名様に当たる! っていう懸賞に応募して見事に当たっちゃった『GOTHIC&LOLITA PREMIUM BLACK MODEL、ゴスロリプレミアブラック』っていう、超絶に可愛いゴスロリ感満載のデザインがされたカプセル型ダイブマシン」が届いてしまう。すべてを背負いアバタークリエイトにダイブした天音は、ガイド役の天使を殴り倒してしまう。
この物語にはいくつかの未回収の伏線が残されている。主人公がいくつかのものを極度に嫌い、別のいくつかのものを偏愛しているのがなぜか、今まで説明が与えられていない。ともあれ天使を殴った天音は、なりゆきで「キャラがその職を選べる」ことすらほぼ秘匿されている死霊術師となり、あらゆる意味の「死者」を操ってMMO-VRRPGを生き抜き、ゲームバランスを壊してゆく。
いかがでしょうか。典型的な壊れ設定だと思うでしょう。すぐ息切れすると思うでしょう。私もそう思っていたのですが、この作品は斜め上の上に斜め上を重ね、ドラゴンボール現象を進めていきます。第1部分と第294部分の戦闘ログを比べてみましょう。ネタバレ防止のため一部の固有名詞を伏せています。
>001 プロローグ
>『スライム(LV,1)に2ダメージを与えました』
>『スライム(LV,1)から1ダメージを受けました』
>『スライム(LV,1)に2ダメージを与えました』
>『スライム(LV,1)から2ダメージを受けました』
[中略]
>『スライム(Lv,1)を撃破しました。経験値 2 獲得』
>292 決戦の地・5
>『[*強い従者*]が[*強い技*]を発動、GUARD……。[*強い相手*](Lv,????)に1,717,910Kダメージを与えました』
どうも世界を支配する神々とその信奉者に後ろ暗いところがあって、それと対立する別の神々グループがゲーム内でしっかり設定されていて、運営陣はちゃんと生きていてちゃんと仕事をしているようですが、とにかく天使の反対側にいる神々グループと主人公がすっかり仲良くなって、天音と友人たちの戦力と一緒に、仲良し度も際限なく爆上がりしていきます。戦闘システムの細かいところはいいでしょう。どうせ20話も読めば次の超絶アイテムか超絶スキルが出てくるので。
戦闘の外では、現実世界での中の人たちの立ち位置も語られ、天音(ゲーム内ではリンネ)ほどではないにせよ、極端な背景が極端なゲーム内行動の裏にあることがちょっとだけ明かされます。でもまああまり関係ありません。
こういうのもいいですね。定型的な書籍化を目指して定型的な要素を順列組み合わせで並べてくる作品がちょっと鼻につくようになってきました。あんまり先のことは考えていないような気もするし、ある日ふつっと作者の気が変わって伏線大回収まつりになるのかもしれないし、とにかくすごいスピード感です。「止まるんじゃねえぞ」というより「止まる日のこと考えてないよなこれ」というのが正直な印象です。




