第23話「ごめんね」
しかし鳥羽くんの意識はなかなか戻らず時間だけが過ぎていく。
気づけば5日目の朝を迎えて、私と舞桜さん以外の周りの人は諦めつつあった。
すると鳥羽くんがゆっくりと目を開け、間近にいた私は真っ先に反応し声かける。
「鳥羽くん、私だよ!私が誰か分かる?」
鳥羽くんは、小さな声で私の方を見ながらゆっくりと答えてくれる。
「うん?麻友ちゃんだよね。もしかしてずっといてくれたの?」
私はこの時、ものすごく嬉しさのあまり涙を流しながらこう言う。
「そうだよ!交通事故にあってこの5日間、私ずっとそばにいたんだからね。話しかけたりもしたんだよ!」
私の話を聞いて鳥羽くんは、苦笑いしながら謝ってくる。
「ごめんね。舞桜さんに行ってしまって。麻友ちゃんに会えない寂しさがあまりにもつらすぎて我慢できなかったんだ。」
私も頭を下げながら鳥羽くんに謝る。
「ううん。私こそ鳥羽くんの気持ちに寄り添えなくてごめんなさい。だけど私、これからそばにいるから!アイドル辞めることにしたから。」
すると鳥羽くんがやや右足を痛そうにしながらも私がアイドル辞めることについて尋ねてくる。
「なんでアイドル辞めるんだよ!せっかくこれからだって言うときなのに。もしかしたらセンターになれるかもしれないよ。」
ここで医師がやってきて喜びながらこう言った。
「目を覚ましたんだ!これは奇跡的じゃないでしょうか?」
私は、医師に嬉しそうにしながらこう言う。
「そうですね!しかも記憶もあって、今2人とゆっくり会話をしていたところなんです。」
すると医師は、鳥羽くんの様子を見ながらこう言った。
「そうなんですね。やはり、これは間違いなく奇跡的と言っていいかもしれない。」
さらに舞桜さんもやってきて嬉し泣きをしながら鳥羽くんに話しかける。
「鳥羽くんが目を覚ましている!良かった。体調はどう?」
鳥羽くんは、すごく痛そうにしながらも小さな声で現状報告を2人に伝える。
「どうって言われても全身、めっちゃ痛い。しばらく歩けないくらい痛い。」
その話を聞いて私は、鳥羽くんに優しくこう言った。
「でも助けてくれてありがとう!助けてくれなかったら今ごろは私は生きていなかったと思う。しばらくは安静状態が続くと思うけど、一緒に乗り越えていこう!」
それから鳥羽くんは、約4ヶ月間入院生活を送り、交通事故から2週間後には歩行のリハビリにも参加し、異例の回復力を見せた。
そして季節は秋を過ぎようとしていた頃に鳥羽くんは無事に退院当日をむかえた。
ベット周りの片付けをしている時に私は鳥羽くんにとある質問を投げかける。
「そういえば前から聞きたかったんだけど、これから舞桜さんとは本格的に付き合うつもりなの?それとも友達でいるつもりなの?」




