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第21話「溢れ出す涙」

 私が落ち込んでいる様子を見ながら栄川さんは、ズバッとこう言ってきた。


 「見かけたんだね。やっぱり付き合ってたでしょ?どうやら昨日から付き合い始めたみたいだよ。お試しで」


 なぜお試しで付き合い始めたことを栄川さんが知っているのか疑問に感じたため、私は聞き返す。


 「どうして栄川さんがその事を知ってるの?もしかして舞桜さんと知り合いだったりする?」


 栄川さんは、堂々と私に繋がりの経緯について話してくれる。


 「知り合いだよ。アイドル☆エッグのオーディションに舞桜さんと出会って、結果はそれぞれ違ったけど、色々話してたら意気投合しちゃったわけ。そこからたまにメールとかしてたりするよ。」


 この時、私は栄川さんが以前私に煽っていた理由が何となく理解できたのである。


 裏で2人がつながっていたため、2人が付き合う可能性が高いことを前から知っていたことも同時に把握した。


 私はうっすらと涙を流しながら栄川さんに小さな声でこう言う。


 「そうだったんだ。私、すごく悲しいよ。ねぇ、どうしたら鳥羽くんは私のもとに戻ってくると思う?」


 しかし栄川さんは、私に一切アドバイスをしてくれようとはせず冷たい感じでこう言った。


 「そんなの知らないわよ。それよりもうすぐしたらライブが始まるから気持ち切り替えてスタンバイするよ!」


 その後私は、なんとか涙をこらえてライブ中は作り笑顔でトラブルなくライブをやりこなした。


 その頃、鳥羽くんは舞桜さんと公園で手を繋ぎながら会話をしていた。


 「そういえば舞桜さんってどこか行きたいところってない?」


 舞桜さんは少し考えてからやんわりとした感じで鳥羽くんにこう言う。


 「うーん。そうだね、最近カラオケに行ってないから久々にカラオケに行きたいね。」


 鳥羽くんは、腕時計で時刻を確認してから舞桜さんに返信する。


 「今からならまだカラオケ店に行けそうだから、一緒に行くか!」


 舞桜さんは、密かに喜んでいたのか笑顔であった。


 特典会も終了し、事務所によってから自宅に帰る途中、私は再び溢れ出す涙を流しながらこう思っていた。


 『アイドル辞めようかな。このままだと鳥羽くんがどんどん遠いところに行ってしまって、完全に舞桜さんに乗り換えられてしまうよ。どうしよう。』


 ここで道路を横断した先のカラオケ店に入りかけていた鳥羽くんと舞桜さんの姿を真っ先に発見してしまう。


 さらに私は辛い気持ちが抑えきれず、ただただ立ち止まって静かに涙を流し続けていた。


 そして鳥羽くんも私のことを発見し、軽く左手を上げてくれる。


 私は舞桜さんがいるのを知りながらもなぜか嬉しい気持ちになり、勢いで走って道路を横断しようとする。


 しかし後ろから4トン車の大型トラックが走行していることに私は全く気づいていない。

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