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第九話 っぱ冒険者よ

 

 この世界で、俺のように魔力が一切ない人というのは珍しい。

 どのくらい珍しいかというと、あれから『賑やか島』を後にしたヴォネッドが衛兵に自首して、唯一剣が持てる俺もついでに色々と取り調べを受けて、なんだかんだあって『剣の保管が大変難しいため一旦預かってて下さい』とか言われるくらいには珍しい。


「超いらねえんだけど」

「あの、アインさんには重ね重ねご迷惑を……」

「あー、いいってそういうの」


 先に取り調べから解放された俺は、ヴォネッドと衛兵の見送りを受ける。


 本来この剣は宮廷魔法使いの研究対象になる予定だったが、宮廷魔法使いなんて魔力量が多い最たる例だからな。危険だ。

 まあその内、空間魔法を使った魔道具を開発して保管してくれるとのことなので、それまで持っていればいいのだろう。宿借りて部屋に置いておくか。魔力があるものに触れなきゃ良いわけだしな。

 正直魔力があるものに触れさせさえしなければいいのだからお前らで保管してくれよとは思うが、宮廷魔法使いの研究対象になる以上、保管場所は王城の一室だ。万が一女王に危険が及ぶことを避けるためだろう。生け贄みたいですっげえ複雑だが、納得することにしよう。


「……む」


 そう、思い出した。魔力量の話だ。

 聞いた話だと、あの剣は、幻惑魔法だけでなく、戦闘時には強化魔法も強制発動されるらしい。道理で、手加減したとは言え鰐衝棍を受けた人間がいるなんて普通はありえないからな。

 しかしヴォネッドは、幻惑魔法と強化魔法、そして恐らく空間魔法をも何回も用いられた上で、ルインサンダーという俺にすらダメージを与える強力な魔法を撃ってきた。


「ヴォネッド」

「はい、なんでしょう?」


 俺は、すっかり腰が低いキャラで馴染んだヴォネッドに呼び掛け、ポケットの中を探る。えーと、確かここに……あった。


「これ、俺の名刺だから。何かあったら連絡くれ」

「あ、では私のも……」


 そうして俺らは、『名刺』を交換する。


 名刺とは、通信用魔道具『リモーテル』を使用するための『情報』である。

 自分が持つリモーテルと名刺は連動しており、名刺を交換し、相手の名刺をリモーテルで読み込むことで、相手のリモーテルと通信ができるシステムだ。

 リモーテルを所有しており、相手の名刺があれば、いつでもどこでも相手とは連絡可能となる。


 ヴォネッドが思ったよりも面白い人材だというのが分かった。運よく恩も売れたわけだし、繋がりを持っておいて損はないだろう。

 サシルさんにも『賑やか島』で交換を申し出たのだが、リモーテルを持っていないらしかった。


 そういえば、俺はもう1つヴォネッドに要件があるのを思い出す。


「なあ、ヴォネッド。冒険者って、ギルドからノルマとか課せられたりするのか?」

「いえ、特にないですね。ですから、冒険者として登録だけしている人もいますが、特に除名などにはなっていないですね。私のようなことをしなければ……ああ……」

「あー、めんどくせえスイッチ押した。大丈夫だって。事情を話したら復帰できるかもしれねえじゃんか」


 簡単に落ち込むヴォネッドを慰めることに、手慣れてきている俺がいる。


 ●


 あれからめちゃくちゃ謝罪とお礼を言われ、なんだかんだ宥めた後にヴォネッドと別れた。


 さっさと宿を借りて剣を置き、一眠りして、翌日。


「ここかー」


 眼前にそびえる、王都の中で王城の次に大きいのではないかと思えるような巨大施設。

 俺は、冒険者ギルドに来ていた。


 勇者パーティーを追放された俺だが、勝手ながら人々を守る使命みたいなものを感じていた。クビになったからと言って、もう使命は関係ないやと過ごせることができないくらいには、俺は繊細だったらしい。

 そのことで少し悩んでいたのだが、ヴォネッドの話を聞く限り、冒険者という立ち位置は悪くないような気がした。勇者パーティーほど偉大とはお世辞にも言えないが、その分人々の身近な問題に寄り添うことができる。どっちを尊ぶべきかなど、決められるものではないだろう。

 ヴォネッドの話だとノルマはないようだし、とりあえず登録だけでもしておくことにした。仮に魔法使いへの道が完全に断たれた場合、冒険者として生きていくのも悪くない。というかそっちの方が可能性高いよね。魔力ないのに魔法使いって、何考えてるんだろうね、俺ってば。


 勇者パーティーをクビになって、冒険者になる。本来なら女王と相談しなければならない案件なのだが、知らん。まあ別に構わないだろ。あの人はそういうこと言う人だ。


 一先ずギルドの中に入る。案内に従い、受付の中でも、冒険者登録の窓口を見つける。


「いらっしゃいませ、冒険者登録でよろしいで――――アイン様!?」


 うん、まあ、そりゃ分かるよね。ギルドに入った時点で、なんかやたらザワザワしてたもん。周りの視線感じたもん。


 昨日今日でなんとなく察してはいたが、俺が勇者パーティーをクビになったという話は、あまり広まっていないらしい。耳が早い人は知っているって感じか。


「あの、勇者パーティーは、あー、そういえば……そういうことか。登録して大丈夫なんでしょうか……?」


 カウンターを挟んだ受付嬢が少し体を乗り出して、俺に耳打ちしてくる。どうやらこの受付嬢、件の耳が早い人だったらしい。


「多分、大丈夫です」

「多分……分かりました。では登録を始めましょうか」


 色々と悩んだ末に、鋼の営業スマイルを取り戻した受付嬢が、書類を取り出した。


 こうして俺は、魔法使いになる前に、無職回避を目指すことになる――――


『冒険者ギルド』という言葉は、組織名と、建造物の名称の、2つの意味を併せ持ちます。



『面白かった!』

『続きが気になる!』

『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


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あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。


また、同作者のこちらの作品も、よろしければ読んでみてください!

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https://book1.adouzi.eu.org/n0678gv/

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