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第八話 ばっちいから触っちゃいけません

本日三話目の投稿となります

 

 女性――――サシルと名乗ったその女性は、俺が魔法に疎いと察したのか、説明してくれた。


「私も少し魔法をかじっているから、魔力の性質や動きから分かるのだけれど……この男は幻惑魔法にかかっている状態なの。それも、原因はこの剣」

「え、何で剣が原因って分かるんだ?」

「魔力の流れが、奇妙なの。男の体内から一度剣へ渡って、それが幻惑魔法に変換されて戻ってきている。こんな動きをしていたら、流石に剣を疑うわ」


 はーん? 今までなら縁遠い話と思って半分理解すればいいと考えていたが、魔法使いを目指している今、ちゃんと理解してみようか。


「つまり、あれか。持ち主から無理やり魔力を奪って、その魔力で幻惑魔法をかけていると」

「そう。それで、貴方への影響がない理由だけど……貴方」

「ああ、そうだ。俺にはこれっぽっちも魔力がない」


 屈辱的な肯定だが、なるほどこの女性の推測はあながち間違っていないのかもしれない。俺からは魔力が奪えないため、そもそも幻惑魔法をかけることも出来ないのか。


「ん……う……?」


 そう話している内に、倒れていたヴォネッドが動き出した。

 顔を上げたヴォネッドは、まるで何が起こったのかを確認するかのように周囲を見回して――――顔を青くした。


「大ッ変! 誠に申し訳ありませんでしたああああああ!」


 それは奇しくも、俺が勝ったときに見られるはずだった、最大級の悲壮感を持つ土下座だった。


 ●



「いや本当……アインさんにカリファさん、それとオーナーにも……何と申し開きしたらよいやら……」

「あ、あの、私は大丈夫ですから……」


 俺が剣を取り上げてから、まるで人が変わったように腰が低くなったヴォネッド。そのあまりの気の沈み具合に、カリファがすごく気を使っている。

 あれから、ヴォネッドが再び暴れ出すような兆候もないということで、とりあえず店の中に戻った。


 本当は深夜までまだ開店しているのだが、今日は急遽閉店としているため、客は全員帰ってしまっている。今この場にいるのは、俺、ヴォネッド、サシルさん、カリファ。そして、


「まあ店にも客にもほとんど被害は無かったことだし、お前さんも反省しているのはよーく分かるから何も言わねえが……ちゃんとこいつらの質問には答えるんだぞ?」


 この、やたらシブい声を発するシブい見た目のオジサマ、カリファの父親にして『賑わい島』のオーナー、そしてデザート作りに目を向けた偉大な男、ジェフさん。以上合わせて五人が、『賑わい島』に残っていた。

 いやー、いつ見てもジェフさんが羨ましい。俺もいつかこんな感じの格好いいオッサンになりたいものだ。


「えー……改めまして、ヴォネッドと申します。冒険者をやっております」


 俺たちが椅子に座っているのに対して、唯一自ら床に正座することを望んだヴォネッドが、改めて名乗る。


 冒険者とは、『冒険者ギルド』と呼ばれる組織から派遣される人員。主に魔物の被害から人々を守るため、民間からの依頼に答えていくことを目的としている。勇者パーティーが国が運営しているものだとしたら、冒険者ギルドは個人が運営しているものである。かなり昔から存在する体系だ。

 確か王都にギルドはあったはずだ。そこで冒険者として活動していたのだろう。


「ある日、魔物が溢れかえっている遺跡の調査という内容の依頼を受けまして……その遺跡の最深部にあったのがその剣なのです」


 禍々しい剣――――今は俺が持っているそれを指し示す。


「それを触れた瞬間、剣が手から体内に飲み込まれて……それから、何というか、価値観が変わったというか……ただただ非道の限りを尽くして、それを良しとする人間性に変えられてしまったのです……」

「どうにも聞いている話だと、幻惑魔法で悪意のある人間に変貌させるってシステムのようね。剣に操られていたというよりも、剣に心を変えられてしまったという方が正しいのかしら」

「はい……その間の記憶は今も残っているのですが、悪辣なことを自分から喜んでしてしまっていて……契約違反が重なってギルドもクビになってしまい……」

「悲惨すぎねえ?」


 迂闊にこんな禍々しい剣に触れてしまったのも問題と言えば問題だが、流石にここまで転げ落ちるだなんて予想もできないだろうし、あまりにも可哀想すぎる。


「というか、体内に飲み込まれたってどういうこと?」


 カリファが口を挟む。確かに意味不明だ。魔法なのだというところまでは予想はつくが、詳しくは1ミリも分からん。

 だが、飲み込まれた上で出し入れ自在なら、戦いの前、いつの間にかヴォネッドが剣を持っていたことにも説明がつく。


「空間魔法の一種、じゃないかと思うのだけれど……剣の危険性が分かった今、確かめようがないわ」


 この中では一番魔法に対する造詣が深いと思われるサシルさんでも、正確には分からないらしい。というかサシルさんも別に魔法使いでもなんでもないらしいからね。俺たちが彼女の知識量に寄りかかっている状態だ。


「まあ、職を失った私は荒れに荒れてしまい……ふと何かに八つ当たりしたくなって、そしてこんなことを……ああ……」


 そう言いながら、青いままの顔を手で覆うヴォネッド。直接言ったわけではないが、どうやらあの時カリファにぶつかったのはわざとだったらしい。


「この度は本当に申し訳ありませんでした……!」

「だから、私は大丈夫ですから! 顔を上げてください」

「大事になってなくて、カリファも許すって言っているんだ。俺から言うことは……まあ、落ち込みすぎんなってことくらいだ」


 カリファとジェフさんが親子でヴォネッドを励ます結果となった。


 ……まあ何はともあれ、この禍々しい剣による被害は止んだわけだ。

 念のためヴォネッドはまた衛兵へと引き渡す必要はあるが、まあ悪く見積もったとしても、そこまで重い罪にはならないだろう。


 しかし、


「何故こんなもんが遺跡に……?」


 完全に万事解決とはなっていないという予感が、皆の心中に渦巻いていた。

(脳内プロットを確認)

あれ? 主人公が魔法使いになれるの、まだ先じゃね……?



『面白かった!』


『続きが気になる!』


『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


とお思いいただけましたら、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると幸いです。


あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。


また、同作者のこちらの作品も、よろしければ読んでみてください!

↓↓↓

https://book1.adouzi.eu.org/n0678gv/

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