第七話 棍VS剣
本日二話目の投稿となります。
このヴォネッドとかいう男、かなりの実力者であることが分かった。油断していた元勇者パーティーの一員に対してダメージを負わせたのは素直に称賛に値する。
何より、この威力の魔法をサポートとして用いているのが好評価だ。
魔法には、『詠唱に時間を要する』という明確な弱点が存在する。だからこそ魔法使いはその時間を埋めるべく、俺のような前衛と組んで隙を作る。
だからこそ、剣が主体のバトルスタイルで隙を作り、魔法をお見舞いするというシンプルながら器用でないとできない戦い方に、俺は心底感心していた。
ガーバイド街の剣豪という二つ名にも、名前負けしていないかもしれない。人類の中でもかなり強い方だ。
……人類最強クラスと呼ばれている俺の強さは、ほとんどズルみたいなものだしな。
「えい」
「なっ、ごぼぉ!?」
電撃を撃ち込んで勝ったと思っていたのか、隙だらけだった腹に左手で掌底を叩き込む。
初めて驚いたような顔をしたヴォネッドは、そのまま地を滑るように数メートル吹っ飛び、なんとか持ちこたえる。
ふむ。利き手と逆とは言え、まずまずの力を加えたのだが、ヴォネッド本人の耐久力もそこそこあるな。
「る、ルインサンダーを食らって無事で済むわけがねえ! どんな卑怯な手を使いやがった!?」
「単純に耐えたってんだよ。俺を魔法で殺したきゃ、ホマでも連れて来い。お前の性格じゃ説得しても無理だろうがな」
ただでさえホマの人見知りっぷりはかなりのものだからな。宮廷魔法使いに苦手意識がある俺としては、少しありがたかったりもしたが。
「クソッ、この卑怯者がぁ……っ!」
「何がだよ。攻めないならこっちから行くぞ」
今朝のエルフ狩りとの時とは比べ物にならない本気のダッシュ。ヴォネッドは俺の姿を一瞬見失うが、その時にはもう既に懐に入り込んでいる。非常に不本意だが、小さな体はこういう時に役立つ。
「ほっ」
「ぐぉぁ!?」
ジャンプからの回し蹴りが、ヴォネッドの脇腹を抉り、吹き飛ばす。本気でやったら方向的に『賑やか島』をブチ抜きかねないので、大分手加減してしまった。
「お゛ぁぁ――――ッ! 『轟け天撃、フォールパライザー』ァ!」
その詠唱と共に、頭上およそ10メートルほどの空間に黒雲が発生し、ヴォネッドが剣で指した座標に次々と小さな雷が落ちる。
先程のルインサンダーだとかより威力は落ちるが、出が早い。なるほど、状況によって魔法を使い分けているのか。確かに先程のような隙も少なく、中途半端に距離が詰まっている今、出の早さを優先するのは理に叶っている。
だが、剣で指して初めて魔法が発動する以上、確かなタイムラグが存在する。俺のスピードには、今一つ届かない。
「侮った詫びと、面白いものを見せてくれた例だ。こちらも見せてやろう――――『城壁のアイン』の技を」
俺は断じて納得していない二つ名を名乗る意味――――それは、勇者パーティーの一員として、本来魔王軍と戦うときにしか使わない技だから。
爆速でヴォネッドの背後へと回り込み、跳ぶ。本気で跳ぶ必要はない、だいたい視線が合う程度まで跳べたらいい。
「『鰐」
そして、両手を握り締め、そのまま何かを抱き締めるように両腕を広げる。
「衝」
そのまま、両腕に力を込めて、ヴォネッドの頭部を挟み込むように、両手を打ち付け――――
「棍』」
「――――ァ!?」
両サイドからの脳への衝撃をもって、ヴォネッドの意識を刈り取った。
普段は命を奪う前提で使う技だが、少し加減して気絶レベルに押さえ込んだ。ヴォネッドの体が頑丈だったのもありがたい。
ヴォネッドはそのまま意識を失い、その場に膝から崩れ落ちた。
「……勝~った!」
俺もカリファも服を着る権利を勝ち取ったわけで、とりあえずガッツポーズはしておいた。
その瞬間、周囲の逃げなかった度胸があるのかバカなのか分からない見物人たちから、わぁっと歓声があがる。
常連仲間の何人かがこちらに寄ってきた。
「すげえじゃねえか嬢ちゃん!」
「流石勇者パーティーだな!」
「途中から明らかに動きが人間をやめた何かだったもんな!」
そう口々に褒めてくれた……褒めてるよな?
さて……今やうつ伏せに倒れてしまっているヴォネッドを見やる。
ヴォネッドの実力もさることながら――――明らかにヤバそうな雰囲気を醸し出している剣。どこからともなく現れた禍々しい見た目の剣……警戒するなという方が無理がある。
確認しようと剣を拾い上げた瞬間――――
「待っ……!」
「え?」
何やら制止を呼び掛ける声が聞こえた気がしたのだが、既に遅く、俺は剣を拾い上げていた。
何か触れたらマズいことが起こる類いの物なのかと警戒する……が、特に何か起こるわけでもない。
「何も、起こらない?」
「あの……何が?」
ふと声がした方を見ると、そこには見覚えのある女性……あ、さっきカウンター席の端に座っていた女性か。
女性は不思議そうな視線を俺と剣の間で行ったり来たりさせた後、俺を見て言った。
「この男が剣を取り出してからようやく気付けたのだけれど……剣から男に、幻惑魔法がかけられているようなの」
……どういう意味?
『鰐衝棍』
アインが「生き物はだいたい頭部を潰せば死ぬ」という発想のもと作り上げた、読んで字のごとく必殺技。真剣白羽取りの攻撃バージョン。本気でやったらヴォネッドは死んでた。
断じて『合唱コンクール』の略ではない。
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