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第二十三話 忌むからこそ


精霊魔法とは、精霊と『契約』を結ぶことで行使できるようになる魔法のことである。

この場合の『契約』は契約魔法とは別物、身も蓋もない言い方をしてしまえば口約束である。なお精霊はその契約を絶対順守する上に、破ってしまえば周囲の精霊による地獄もかくやという一斉攻撃が待っているので、何なら契約魔法以上に慎重な判断を迫られるようだが。


肝心の契約の仕方だが、そもそも精霊が見えないと話にならない。エルフはその出自が由来して、目視できる場合がほとんどだが、人間で精霊が目視できるのは大変稀である。


そして契約の内容だが、大体の場合、精霊は魔力を要求する。


「だから普通の魔法が使えなければ、本来精霊魔法も使えないんですよ」

「えっ、詰んだじゃん?」


俺の魔力状態を大体説明した後、ルフェルから精霊魔法が何たるかを教えてもらったのだが、絶望感が増しただけに終わった。


「そもそも俺、精霊見えんし」

「前段階で躓いてるわね」


サシルの言葉に止めを刺された気分だ。


いやあマジか。覚悟はしていたが、こんなにも魔法使いへの道が遠いとは。魔力がないと、こんなにも運命には無力だ。


しかしルフェルは、少し考えて言った。


「ですが――――魔力以外を対価に求める精霊も、いなくはないです」

「本当か!?」


俺が身を乗り出して聞くと、ルフェルは少し仰け反って続ける。


「はい、あまりお勧めはしませんが、精霊の中にもそういった存在はいます。ですが……」


そこで言葉を切り、ルフェルは目を逸らす――――否、俺の隣にいるエリザを見ている。当の本人はピュッチャジュースを飲みながらきょとんとしているが、何かあるのだろうか。


ルフェルは悩ましそうに頭を抱え、サシルに向き直る。


「サシル。エリザに絶対に危害を加えないと約束できますか」

「? ええ、勿論」

「……でしたら、しばらくエリザをよろしくおねがいします。エリザに何かあったら、私が貴女を殺します」


相当の苦渋の決断であったのか、ルフェルの表情は苦いものになっている。

話が見えない俺とサシルはさておき、エリザが反応する。


「何? ルフェル、どこか行くの? 私も行きたい!」

「貴女はお留守番です。サシルと家で大人しくしていなさい」

「えー」


ムスッとしたエリザの頭に手を置き、俺に向き直る。


「アインさん、本当に精霊魔法使いになりたいんですね?」

「おう」

「なら、恐らく最もあなたを精霊魔法使いに出来る可能性の高い精霊の下へ、案内いたします」


ルフェルは俺を見て――――俺のことをとても可哀想なものを見る目で見て、立ち上がった。


「私、アインに着いていかなきゃならない依頼なんだけど」

「仕方ないでしょう。今から行く場所へは空間魔法を使わないと行けないような場所ですし、そこにはエリザを連れていけませんし……」

「え、今から俺どこに連れて行かれるんだ?」

「……道中で説明いたします」


エリザを横目で見たルフェルが言葉を濁す。何かよく分からないが、どうやらエリザには聞かれたくないことらしい。


ルフェルは、念のため俺にフードを被るように促した後、前方の空間に手を出す。


「『ワルディアスの(しもべ)たちよ、 遥へと橋を築け――――スペースコネクト』」


それは、魔法の詠唱。エルフの国に入ったときのような次元の穴のようなものが顕現する。

……そういえば、何か詠唱に違和感が。魔法に関してはほぼ無学な俺がまともに聞いたことある詠唱なんて、ホマと直近のヴォネッドのものくらいしか知らないが、微妙に違いがあるような気がする。


ルフェルは既に穴の先へと入っており、こちらに手を差し伸べた。


「では、行きましょう」





「うおぉー、すっげぇ……」

「あれが、シュアルヴォルツの大霊樹です」


俺とルフェルがいるここは、シュアルヴォルツ(エルフの国の名前らしい。覚えらんねえよ)に存在するただっ広い樹海。

そして現在地から百メートルほど前方に屹立するのは、仮にこの背丈でなくとも俺の視界のほとんどを占有したであろう巨大な大木。

ここがエリザとルフェルの家からは見ることが出来なかったため相当離れていたのだろう、と推測が出来るほどの圧倒的スケール。とにかく俺の視界に入るそれは、樹海のどこにいようが目印に出来るほどの巨大さを誇っていた。


「我々エルフは、その出自から精霊と深い繋がりがあります。ですからこのエルフの国には、精霊界――――簡単に言ってしまえば、精霊が住む世界へと繋がる場所が存在します。それが大霊樹です」


俺を先導しながらルフェルが語る。さっきからちょくちょくエルフの出自を当然のように出してくるけど、俺知らないんだけどね?

ともかく俺たちが向かっているのは件の大霊樹のようだ。正直もう目的地は思いっきり目に入っているし、先導はいらない気もするが、ルフェルの後ろを着いて歩くことにする。


「そして今から私たちが会う相手は、精霊を束ねる上位の存在――――大精霊が1人です」

「…………ちょっと待って? 俺たち、もしかして何かとんでもない存在に気軽に会いに行こうとしてない?」

「運が良いのか悪いのか……あなたは多分、今から会う大精霊に気に入られる可能性が高いので……精霊魔法使いになりたいなら、恐らく可能性はこれしかありません」


なるほど、だからこその意思確認だったわけね。それにしてももう少し詳しく説明しろや。ちょっと緊張してきたじゃねーか。


「てか、俺は精霊見えないんだけど、そこんところ大丈夫なの?」

「精霊とは格が違う存在ですから、どんな者でも見ることができます――――ああいった風に」

「わあ、本当だあ…………っ!」


大霊樹の根元、そこに座り目を閉じている1人の青年らしき人物――――ルフェルの言うことを信じるなら、恐らく大精霊なのだろう。バッチリくっきり俺の目にも見えている。


その大精霊は、近付いてきた俺たちに目を開けると、ルフェルを見て口を開いた。


「ん……貴様、どこかで見たことがあるな?」


大精霊は顎に手を当て、考えるようなポーズをとる。

ルフェルは座り込んだままの大精霊へと向かって言った。


「アリトヤ様……この度は、この者を精霊界へとお連れしたく、参上いたしました」

「ほう……エルフ以外が来るとは珍しい」


おい、フードしてるのに普通にバレてるじゃねえか――――と言いたいところだったが、隣にいるルフェルは動揺していないようだった。大精霊――――アリトヤには、バレることも折り込み済みだったらしい。


「しかも魔力も脆弱――――ああ、そういうことか。大精霊なら契約が可能と?」

「……大精霊様たちは、魔力の供給を欲するような存在ではないはずです」

「嗚呼それは正しい。だが、解せん。何故お前たちが、魔力のない人間と共に行動している?」


あっさりと魔力量も看破された俺は放置され、ルフェルとアリトヤの会話へと移っていく。


ルフェルは何と説明したものか迷っていたようだったが、その前にアリトヤが何かに気付いたように手を打った。


「嗚呼、思い出したぞ。貴様、あの()()()の連れか」

「…………っ!」


忌み子? ルフェルが連れってことは……エリザのことか? 普通の少女のようだったが、何で忌み子?

ルフェルの感情に怒りが混じるのを肌で感じる。エリザには手を焼きつつも大切な存在として認識しているようだったし、やっぱりエリザのことを悪く言われているらしいな。


「魔法の使えん忌み子、その連れが魔力のない人間と共にいるのか? これは傑作じゃあないか!」


アリトヤはルフェルを、エリザを嘲笑する。正直何がなんだか分からんが、アリトヤはあの二人のことが相当気に食わないらしい。


だが、気に食わないのは俺も同じだ。何があったのか1ミリも知らんが、知り合いの悪口はそれなりに気分が悪い。


「…………」

「アインさん……」


俺は、無言でルフェルの一歩前へ出る。

アリトヤは俺へと目を向けると、大きく息をついた。


「ふん、そう怒るな。確かに、少々関係のない話をし過ぎたな」


謝罪をしている風を装っていたが、エリザとルフェルへの侮蔑は一切撤回していないあたり、相当腹に据えかねていることが伺える。


しかし、アリトヤにとっては既に終わった話であるようで、話題は俺のことへと移って行く。


「ともかく、わざわざこの我の下へとこの者を連れてきたと言うことは――――()()()()()()か?」

「……ええ、私も確認しています。アリトヤ様にも、気に入って頂けるかと」


話が一切見えないんだが。俺は、アリトヤに気に入ってもらえる人材らしい。どういうこと?

万が一、幼女好きとかいう理由だったら――――この場にいる全員をブッ飛ばして帰ろう。


「自己紹介が遅れたな、人間。我は、植物の大精霊アリトヤ。我は大精霊の中でも重鎮でな。シュアルヴォルツとを繋ぐ大霊樹の管理を任されている。つまり、我の眼鏡に叶えば、精霊界へ赴くことが可能だ」


大精霊なのに甲斐甲斐しく説明してくれてありがてえな。

要するにこのアリトヤに気に入られたらいいんだろ? どうすりゃ良いかさっさと言えや。さっきから絶妙に、俺の何が求められているのかに触れてないことに気付いてないのか?


「我の求める存在、それは――――」


俺は思わず唾を飲み――――次の瞬間、俺が最も得意とする解決方法を、相手からわざわざ提示してくれたことに内心で歓喜した。


「――――強い者。それだけだ」



サシル:一般人としての名前

サーシャ:暗殺者としての名前

という違いがあります。なので正体を知る者にもビジネス以外ではサシルと呼ばせています。



『面白かった!』


『続きが気になる!』


『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


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あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。


また、同作者のこちらの作品も、よろしければ読んでみてください!

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