第二十話 点と点が線になる
投稿が遅れてすまない……!
窓から差し込む朝日に、目を覚ます。
まだ少し慣れない宿の天井を見て、俺は昨日のことを思い返す。
あれから俺は、リモーテルを持っていたレイとティムと名刺交換し、また俺が戻ってきたらパーティーを組もう、という約束をして別れたのだった。
「さて、どうしたものかね……」
胡座の状態に起き上がり、寝起きで万全には働いていない頭に触れる。母遺伝の桃色の髪は、本日も綺麗だ。例えこれのせいで幼女に間違われていたとしても、これは長くしておきたいと思うだろう。
いやはや、爽やかな朝である。これで部屋の中に禍々しい剣が視界の端で放置されてなかったら満点だったんだがな。いやこれマジでどうすりゃいいんだよ。個人的には嫌いだけど、さっさと仕事して回収しに来いや宮廷魔法使い。
目下最大の目標がほとんど前進していない今、出来ることは限られている。
というか実のところを言うと、俺の目的の半分は、俺自身が魔法使いにならずとも達成できるのだ。そっちの方が現実的か――――いやしかし、夢は大きく持った方がいいのも事実。
だが、どこまでも俺のゴミクズ魔力量という最大の問題が付いて回る。
魔法とは、魔力を現象へと転じさせる一種の奇跡だ。そもそも根元となる魔力がないと話にならないし、やはり詰んでいるのでは?
魔力を用いずに魔法を使っている者など見たことがない。一応『精霊魔法』は理論上本人の魔力がなくても可能――――だと言われている。しかしそれは、人間たちの間では広まっていない技術。
というのも精霊魔法は、人間と交流をほとんど取らない亜人種族、エルフの専売特許とされている技術だ。故に、人間たちには、その存在しか知れ渡っていない。
俺だって精霊魔法に少しは希望を抱いたことはあるが、エルフの間で秘められた技術と知って、すっかり諦めたものだ。
いくら勇者パーティーというビッグな存在のおこぼれに預り、そこそこ顔が広くなった俺とはいえ、流石に超閉鎖的なエルフに知り合いは――――
――――。
「――――あっ!?」
俺は、右手の薬指を見た。
●
盲点だった。そして幸運である。
「確かこの辺だったよな……」
一昨日に通った道を逆走するように戻る。目指す場所は、エルフ狩りと遭遇した地点。
コネというほどではないが、エルフたちのコミュニティへの足掛かりのような存在を思い出したのだ。あの幼女エルフがいつまでも俺のことを覚えているわけでもなし、早い方がいい。思い立ったがなんとやら、だ。
女王に、帰ってきたことの報告も、よもや国を離れていいのか確認すらも取っていないが、向こうから連絡が来ないからしょうがないね。
大体女王が城から抜け出すと、一日二日で帰ってこないことなどザラだし、俺も気にせず国外へと赴くことにしよう。
「そろそろじゃねえか……?」
俺はそこそこ方向感覚がある方だ。だからこそ、到着に勘づく。そして、その変化にも気付けた。
「お?」
俺の右手の薬指に結ばれていた茎の指輪が、ゆっくりと解け始める。
それはひとりでに宙に浮き、木々の間を通り抜ける。まるで、俺を導くかのように。
「ちょっ……」
反射的に、俺はその茎を追う。
木々の隙間を抜け、しばらく宙を泳いだそれは、ある瞬間に、力を失ったように、ぽとりと地に落ちた。
「何だったんだ……?」
特に何を思うでもなく、その茎を再び拾い上げる。
恐らくこれも魔法なのだろうが、どういう意図なのかが全く分からない。しばらく途方に暮れていると――――光。
前方から何かが光ったかと思うと、その空間に、穴が開く。
そこだけ空間が断絶したような違和感。穴の向こうには、こことはまた雰囲気の違う森林が見える。そして、その穴から、
「あっ、来てくれた!」
あの日と同じ、エルフの幼女――――エリザが顔を覗かせた。
「よう、エリザ。元気してたか?」
「うん! えーっと……」
「あ、俺はアイン。そういや名乗ってなかったな。よろしくな」
「アインちゃん! 覚えた! この間は本当にありがとう!」
そういいながら、エリザは穴を潜り抜け、こちら側へと降り立つ。
恐らく穴の向こうが、エルフたちの住む世界なのだろう。
エルフの生息区域は人間には捕捉不可能だったとか聞いていたが、なるほど、異界の住人と捉えていいようだ。
「そういう訳で、お礼なんだけど……ひとまず私たちの国に案内するね!」
「こら」
俺の手を取ろうとするエリザだったが、穴を通り抜け、エリザの背後から肩を抑える人物に阻まれる。
エリザと同様にエルフ、しかしその体は成熟しており、エリザとは違い大人のエルフだ。この見た目だと、もう年齢は分からない。見た目は俺と同じくらい――――の実年齢に見えるが、数百歳という長寿でもおかしくないのだ。
何故かそのエルフは、その手に黒いコートのようなものを抱えていた。
「げ、ルフェル……」
「この人が、件の恩人ですか? 本当に子供なんですね……」
「だから、大人用のコートはいらないって言ったじゃない!」
「あなたがどれだけ私たちに嘘を言ってきたと? 信用ならないのは当然です。存在すら信用していませんでした」
いや、俺は21歳だから子供じゃ……いや、長寿なエルフからしたら誤差じゃね? 普通に子供じゃね? 黙っとこ。
そのエルフ――――恐らくルフェルという名のエルフは、俺をじっと見る。なんだかむず痒い。
しばらく俺を凝視したあと、ルフェルはゆっくりと目を逸らす。
「なるほど、悪人ではないのは確かなようです」
おいおいおい、待て待て待て。何を見た? この一瞬で一体何を見られた?
恐らく何らかの魔法――――鑑定魔法か何かで俺の情報を盗み見たと思われるルフェルは、その手に持っていたコート、そのうち小さい方を俺に差し出す。
「それを着て着いてきなさい。フードは外さないように」
なるほど、どうやら俺がエルフの国へ招かれる――――いやそれも初耳なんだが、どうやら他のエルフたちも同様らしい。フードを付けて耳を隠せば、エルフと人間の違いは分からない。少なくとも、それをしなければならない状況らしいな。
エルフは基本的に人間と関わらない種族、人間を良く思っていない者もいるかもしれない。心遣いかは分からないが、ありがたく受け取っておこう。
――――さて。
「あー、申し訳ない。エルフの国へお招きいただけるのはありがたいんだが、少しばかり待ってくれないか?」
「……何故です?」
ルフェルが不審な目でこちらを見るが、そのルフェルたちのためにもやっておかなければならないことがある。
俺は、俺の背後にそびえる何本もの木――――そのうちの一本の、葉の生い茂る枝を見据える。
そして、その辺に転がっていた石を拾い上げ、
「正体表せやオラァッ!」
姿は見えないが、木の上にいる何かが石を避けたのは察知した。
しかし、もう俺は捕捉している。全力で地を蹴り、その枝の付近に向かって飛び上がる。
そして、俺のスピードに負けた、透明な何かを掴み、地面に叩きつけた。
「一昨日……ちょうど俺がエルフ狩りと出会ったあたりから、ずっと尾行して来やがっていただろう」
最初はエルフ狩りの一味かと思っていたが、後々普通に考えたけど、あんなバカ共が透明になって気配を殺すなんて慎重なことするわけないよな。
正直命を狙われていたとしても余裕で反撃できる自身があるし、面倒事になりそうな予感しかしなかったので放置していた。周囲の人々が危険に陥りそうな『賑やか島』なんかでは何故か気配が消えていたし、気にしないことにしていた。
だが、エルフの国に入るとなったら、話は別。
「魔法か、魔道具かは知らねえが、とりあえずその透明化を解け。じゃねえと、万全に準備しておいてあっさりと俺に捕まったその間抜け面もろとも叩き潰すぞ」
俺は本気で拳を握る。エルフの国という一大情報を前に、コイツを逃がしたらどうなるか分からない。
「……分かったわよ」
女の声。その透明化が解かれ、俺を尾行していた犯人がその姿を露にする。
尾行してきていたのが女であったことには驚かなかったが――――その顔に見覚えがあったことには驚いていた。
「一日ぶりね、アインさん」
「……サシルさん?」
ヴォネッドとの戦いがあった時、『賑やか島』で知り合った女性、サシルがそこにいた。
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