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第十九話 捨てられた者、捨てた者

 

 冷えムカデは死んでいることを確認したので一旦は放置でOK、マッティスは手と、念のため足もを金属魔法で固めて捕縛成功。ティムによると指が伸びるらしいが、実際に見ていない俺たちからすれば、どういうことか分からん。

 今度は俺がマッティスを担いで帰り、なんとか王都に戻ってくることができた。


 とりあえず衛兵にマッティスを突き出し、そちらにはティムとテトが説明に回ることに。俺とレイは、ギルドへの報告を請け負った。

 何だかんだ双方が取り調べを終えたときには、既に夜になっていた。


「疲れたな……」

「分かる」

「色々ありましたもんね……」

「にゃご」


 俺も、冷えムカデと戦ったことよりも、その時の状況説明の方に疲労を感じている。何で二日連続でこんなことをせにゃならんのだ。

 とはいえ、このまま解散というのも中々寂しいものがある。


「俺はこの後晩飯でも食いにいくけど、せっかくしだし、お前らもどう?」

「マジ? 奢ってくれんの?」

「爽やかにセコいなお前。レイは?」

「皆さんが一緒に行くなら、私も……」

「にゃぶにゃー」


 という訳で、皆で晩飯を食いにいくことにした。

 場所は勿論、決まっている。ちょうど昨日、食い損ねたものもあるしな。


 ●



「いらっしゃい! あ、アインちゃん――――と、後ろの方たちは初めましてかな? 『賑やか島』へようこそ!」


 いつもの通り、接客担当のカリファが出迎えてくれる。


「あ、カリファ。ここって使い魔OKだっけ?」

「ちゃんと契約魔法が交わされた魔物なら大丈夫だよ!」

「だってよ、テト!」

「にゃにゃー」


 その言葉に、テトが満足そうに鳴いた。


 店名に恥じぬ『賑やか島』の賑やかっぷりは、昨日あんな乱闘があったにも関わらず今日も健在であり、客足もまだこれから増えるようだった。


「ブレイカブルステーキとピュッチャジュース」

「えっと、どれでしたっけ、アインさんのおすすめ……あ、ヘブンフィッシュの唐揚げとピュッチャジュース」

「ヘブンフィッシュの切り身ってある? あとマコッケグリルプレートとピュッチャジュース」

「ピュッチャジュース人気だねえ! かしこまりました!」


 昨日と違いテーブル席に座った俺たちは、それぞれ注文をとる。俺は二日連続で唐揚げを頼むのもどうかと思うので次に好きなステーキ、レイは俺のオススメの唐揚げ、ティムはテトの分まで注文したようだ。


「そうだ、試作パフェについてだけど、皆も食べてみる?」

「……い、いいんですか」

「貰えるもんは貰うぞ!」


 恐縮しっぱなしのレイと、意外とがめついティム。

 なんとなく二人の人物像も今日一日で掴めてきた気がする。初日から冒険者仲間が出来たのは良いことだ。


「それで、アインはどうするんだ? やっぱ暫くソロになる感じだよな?」

「うーん、それなんだがなあ……」


 俺は頬を掻きながら、ギルドからの言葉を思い返す。

 結局のところ、マッティスという依頼者が捕まったことで、依頼は流れた……なんてことには流石にならず。

 遺跡は俺が半分埋没させてしまったとはいえ、明らかに高いアイセンティ・ピーグの推定被害規模、そして俺がそれを倒し、その遺体が確認できたことで、俺の功績が認められた。


 そして俺は、まさかの冒険者登録初日から、Bランクに昇格できたのである。

 実際、依頼内容が冷えムカデの討伐とかなら間違いなくAランク相当らしいので、Aランクへの昇格を許してもよかったレベルらしいのだが、流石に初日だしね。


 しかし、レイとティムはそうではない。何故なら、マッティスの捕縛というミッションの危険性を、ギルドが計りきれていないのである。


 さて、問題。マッティスの両手は魔物。そして、魔物である時点で生物であることに変わりはない。生物である以上、呼吸は必須なのである。

 そんなマッティスの両腕を、金属魔法で長時間固めた。そしたらどうなるでしょうか?


 そう、マッティスの両腕の魔物は死んだ。そして、指が伸びる、硬化するなどの現象が再現できない以上、その危険度が正格に計れていないらしいのだ。


 マッティスと捕縛に当たったレイとティムは、こういったことが災いして、Bランクに昇格することは叶わなかった。しかし、功績自体は存在しているため、昇格が早まったことは事実である。


 ここで、パーティー専門の依頼について話そう。

 パーティー専門の依頼は、その依頼のランク以上の冒険者しか受けることができない。つまり、Bランクのパーティー専門の依頼があった場合、俺は受けることができても、レイやティムは受けることができないのである。

 勿論Cランクの依頼なら一緒に受けることは可能なのだが、善意以外で俺が受けるメリットが薄いのも事実だ。現金な話だが、Cランクの依頼をちまちまこなすよりも、Bランクの依頼を受けた方が実入りは良い。


 ……というか、ここまで色々言ってきたが、そもそも現在の俺の目的は、冒険者として大成することではない。


「俺は多分、しばらく依頼受けないだろうからな……」

「そ、そうなんですか……!?」


 ギルドで冒険者となったのは、あくまで保険だ。

 ここから本格的に魔法使いを目指すにあたって、冒険者との二足のわらじは、しばらくは不可能だろう。

 実際どれほどかかるか分からないからな。レイやヴォネッドは、魔法を1つの属性しか使えないらしいし、頼るのは最後にしておきたい。いくつかの属性を魔法を使える知り合いはテトとホマだけだ。両方とも論外。

 というか魔力を持たないという決定的な弱点は何も解決していないからな。本当にどうするんだコレ。


「とは言っても、ずっとってわけでもねえからな。俺が戻ってくるまでに、Bランクまで上がっといてくれよ。なんなら抜かしててもいいぞ」

「たはー、簡単に言ってくれるぜ」


 実際、誇張はしていない。レイのサポートとしての腕前は、弱気な性格が原因で今まで発掘されていないだけで申し分ないし、ティムに関してはテトがいるからどうにでもなる。

 皆、俺に出来ないことを出来る。また機会があれば、同じように皆でパーティーを組みたいものだ。

 あとで名刺交換できないか聞こう。


「お待たせしました、ピュッチャジュース人数分! あと使い魔ちゃんの水ね、 料理はもう少し待っててね!」


 カリファが器用に俺達3人と一匹のグラスを持ってくる。そしてまた忙しそうに厨房へと消えていった。新たに店内に客が入っている。今日もカリファは大忙しだ。


 料理はまだだが、飲み物は届いた。というわけで、俺とレイとティム、テトもグラスを持つ。


「というわけで、依頼達成……は、してねえか――――まあ、皆無事に生還出来てよかった! 乾杯!」

「「乾杯!」」

「にゃにーご!」


 こうして皆でテーブルを囲んでピュッチャジュースを飲む。このことに間違いなく俺は、楽しさを覚えていた。

 魔法使いになれなかったときのための保険だと思っていたが、こういう生活は、進んで選択してもおかしくないものだとおもった。もしも俺が魔法使いの夢が叶わなかったとしても、ある程度前向きに暮らすことはできるだろう。


 そして、同時に思い返す。

 俺が勇者パーティーを追放させられたのが、昨日の出来事だということを。

 昨日今日と色々ありすぎて忘れていたが、つい昨日のことなのだ。


 今は遠く離れた場所にいる元同僚の顔を思い浮かべて、ピュッチャジュースを喉に流し込み、感慨とともに呟いた。


「あいつら、上手くやってんのかね……」



 ●


 ――――凄惨。

 そう呼ぶに等しい光景だった。


「回復魔法は!?」

「ダメだ! リリアン自身がダメージを負ってる!」


 既にボロボロになっている金髪の美少年――――勇者ユウが僅かに振り返り、パーティーメンバーに叫ぶ。その声からは、余裕が感じられなかった。

 自身に回復魔法を促したのだが、帰ってきたのは、回復魔法使いが負傷したとの知らせだけ。その返答に、ユウは歯噛みする。


「クソッ、どうしてこんなことに!」


 超巨大な蛾型魔物、『キルフォ・レガシー』は、その翅を大きくはためかせる。鱗粉が舞い、その麟粉が少しずつ集まって、何十、何百もの小さな蛾、『ラジキルフォ』を作り出す。そして、そのラジキルフォ全てが、攻撃魔法を有する。

 威力は低いとはいえ、元々運動能力には自信のなかった回復役のリリアンには重い一撃だ。

 既に陣形は瓦解していると言ってもいい。そもそもアインの追放により、常にサポートに回っていたシーフィが前線に出なければならないほど、突貫工事であった陣形。キルフォ・レガシーのような強力な魔物に叩かれれば、瓦解は免れない。


 もしアインがいれば、リリアンは負傷せず、戦況を良くできたのでは――――そのような考えが、誰かの心中を渦巻く。


「シーフィ、リリアンにポーションを! ホマは雑魚を打ち落とせ! デカいのは僕がやる!」

「はあ!?」


 だが、そんなことはユウには認められなかった。

 自身のアイデンティティでもある聖剣を握り締め、キルフォ・レガシーを睨む。


「バカ! ポーションじゃリリアンは完全に倒せねえ! 現状は良く言えばジリ貧、悪く言えば絶望的だぞ!」

「だめ……! 撤退準備……!」


 シーフィとホマから反対意見が飛ぶ。

 しかし、勇者の中に渦巻くのは、小さなプライド。ユウなしでも、自分さえいれば大丈夫なのだと言い聞かせ、聖剣を振り回す。


「黙れ! 僕は勇者だ! こんな魔物、アインなしでも勝てるんだよ!」


 勇者ユウは自暴自棄になっていると、その瞬間に本人に言ってやることができたら、もう少し彼らの事態は好転したのかもしれない。

 しかし、『もし』に意味はない。どうあがこうと、彼ら勇者パーティーの運命は、既に墜ちかかっている。


地味に全員の名前が判明した勇者パーティーの未来は如何に。


というわけで、今回はいつもより長めですが、とりあえず一区切りですね。ようやく書きたいところが書けた。

とは言っても、肝心の魔法使いになるのがまだなので、ここから2章とはしないと思いますが。


キルフォ・レガシーの設定を吐き出すには本文が長いので、またいつか機会があれば。



『面白かった!』


『続きが気になる!』


『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


とお思いいただけましたら、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると幸いです。


あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。


また、同作者のこちらの作品も、よろしければ読んでみてください!

↓↓↓

https://book1.adouzi.eu.org/n0678gv/

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