第十八話 怪物たち
なんか昨日は投稿できなくてスマンかった。
前話に『ワイダー・グリッパーズ』の解説をとりあえず載せておいたので、それで赦してください。
ティムは、マッティスの人物像を思い返す。
自身の人工魔物のためなら他人を殺すことを厭わない残虐性。しかし、マッティスを構成している要素はそれだけではない。
彼の奥底には、知識欲がある。さっきから強化魔法を――――恐らく正しくはテトについて興味津々であることは伺えるし、アインが言っていた『魔力を吸い取り幻惑魔法を所有者に施す剣』についても並々ならない興味を持っていた。
ならば、この賭けには勝てるかもしれない。
「なあ、マッティス! 不死の存在って、信じるか……!?」
「……ふむ?」
興味を失いかけていたティムを手早く処理しようとしていたマッティスだったが、予想していない言葉にその手が止まる。
「どういう意味です?」
「そのままの意味だよ。不死の存在って、実在すると思うか!?」
質問の意図が読み取れないのか、マッティスは訝しげに顎に手を当てながらも、己の記憶を探る。
「生命の根元的な法則に反しますからね、私は信じていません。ですが、それに近しい存在は知っています。亜人の吸血鬼などは、それに近しい特性を持っていると聞いたことがありますね。しかし、それがどうかしましたか?」
ここが正念場。切り札を見せるとき。ティムはそう判断し、腹が見えるように服を捲り上げる。
そこには――――何もなかった。
遺跡にて、ナイフで抉られた傷さえも。
今しがた指で貫かれた傷さえも。
「なっ……!?」
「とりあえず、もう一回指でも使ってみりゃどうだ? それはそれは面白いことになるかもしれねえだろ?」
マッティスには確かな手応えがあった。遺跡でナイフを使ったときにも、今しがた指で貫いた時にも、確かに肉を穿つ感覚があった。
しかし、その傷はない。テトは回復魔法を使えたのかもしれないが、だとしても指で貫かれた傷が消えているのはおかしい。ティム本人が回復魔法を用いた様子もなかった。
先程の戯れのような話が、マッティスの脳内で巨大な知識欲の渦を巻く。即ち、『目の前にいるのは、ひょっとしたら不死の存在なのかもしれない』という疑念が生まれる。
そしてマッティスは、それを確かめずに終われる性分ではなかった。
「いいでしょう、口車に乗せられてあげます。血を流しなさいッ!」
そうして伸びた10本の指は、数本が腹に、残りは心臓や頭部を貫通する。
「お゛!?」
「さあ、どうなるんです?」
それは、まさに即死の数撃。普通なら間違いなく死ぬ損傷。
生命を司る臓器と、その司令塔が容赦なく破壊され、ティムの体はゆっくりと前に傾き、その体は倒れんとして――――
――――右足を前に出すことで、その体は倒れなかった。
「なあ、マッティス。俺は何だと思う……!?」
「……ハハハハッ! 怪物め!」
マッティスは、それは嬉しそうに狂笑しながらも、死なないティムを謗る。
しかし、酷く不快に思ったティムは、自身の本音を紡いだ。
「俺は、人間だよ。少なくとも、人間であろうとしてる。人間たる理性を失って、怪物となったお前とは違う!」
「ハハハハハハ! 脳と心臓貫かれて死なない存在が、一丁前に吠えるじゃないですか! あなたは何だ!? その不死性は吸血鬼に見られるものと酷似しているが、弱点である日光に晒されても何の兆候もなかった! ティム・マリードル! あなたは一体何だ!? 分からない! 分かりたい!」
そう話すうちにも傷が自ずと塞がりつつある体に、再び両手の指を次々と突き刺していく。
強化魔法の持続時間は、とっくに過ぎてしまっている。そのことにはマッティスの勘づいている。
だが、そのような法則の埒外の何かが、ティムを守って死なせない。そこに並々ならぬ知識があるような気がして、マッティスの意識が集中する。
「答えろォ!」
執念のままに叫び、右手の人差し指を心臓に向けて放ち――――
「残念だが、タイムアップだ」
ティムに、回避された。
今になって回避という行動をしてくるということを予想していなかったマッティスは、その瞬間、我に帰ったかのように、脳が急速に回転して……その刹那の思考の末、終わりが来てしまったことを悟った。
「なんせ女の子には、こんな残酷な姿を見せるわけにはいかないんでね!」
「『にゃぶにゃんごろろ、にゃんごろみぃ』!」
瞬間、空間が揺らぐような暴風がティムの僅かに横を超スピードで突き抜け、マッティスを正格に捉えた。
その衝撃波に為す術なく吹き飛ばされたマッティスの細い体は宙を舞い、数メートル先の一本の木に衝突し、意識を失った。
「サンキュ、テト――――え?」
「にゃごぉ!」
「あ、あの、大丈夫で……わっ!?」
木々の奥から走ってきたレイの肩から跳躍したテトが、飛び移りざまに呆けたような表情のティムを杖で殴る。
「痛って!」
「にゃごごごぉ!」
「あー、ごめん。心配かけて悪かったって」
「にゃむん……」
気が済んだと言う風なテトは、大人しくティムの肩に座った。
レイがほっこりしたのも束の間、直ぐ様不安そうな表情へと切り替わる。
「えっと……マッティスさん、どうしましょう……それにアインさんも助けにいかなきゃですし……」
「そうだな、マッティスは手が凶器みたいなもんだから、金属魔法で固めておいたら一旦は大丈夫なはずだ。とりあえず遺跡へ戻らないと!」
アインに加勢するために気合いを新たにしたティムたちの耳に、
「…………テぇぇぇぇぇぇぇトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
遠くから大きく、そう呼ぶ声が聞こえた。
「えっ? 今の、もしかしてアインさんの声で……」
「……にゃにゃん。『にゃぶにゃんみ、にゃごろろん』!」
混乱するレイを他所に、呼ばれたテトは少し思考し、両手のを打ち合わせて何かに気付いたような仕草をした後、詠唱を開始した。
ティムの肩から降り、数歩だけ移動してティムたちから離れながら、杖を上に向け、放つ。
詠唱をもって起動した光魔法は、杖から迸り、光の柱となって空へと走る――――それはまるで、目印のように。
――――数十秒後。
「いたぁ!」
猛スピードで走ったことによる轟音と共に、木々の間からアインが飛び出し、地を滑るようにして停止する。
「いやあテト、よく気付いてくれた、サンキューな!」
「にゃごにゃご」
「アインさん!」
一頻りアインに撫でられたテトは、今度は倒れているマッティスに向かって、金属魔法の詠唱をしながら歩いていった。
「二人も無事でよかった。上手くマッティスも捕まえられたらしいな!」
「アイン! あのデカブツはどうなった!?」
「ブッ倒してきた。ムカデじゃ人間様には勝てねえよ」
小さな体に確かな実力を秘めたアインのその言葉に、レイは呆然として、ティムは呆れとか色んな感情が入り交じり、意図せずして笑みが溢れた。
何故だか見た目は幼女のアインの言葉には説得力がある。そう痛感せざるを得ないティムは、ただ笑うしかなかった。
やっと……次に進める……!
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