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第十五話 バフ

投稿時間がどんどん遅くなってるの、なんとかしたい

 

 マッティスがどこへ逃げ込むつもりであろうと、足取りはそこまで速くないはず。ならば、ティムたちが急いで追いかければ捕まえられるはずだと言うのがアインたちの予想であった。

 だが、


「ダメです! やっぱり探知魔法に反応しない……」


 大前提である探知魔法が、マッティスを捉えられなくなっていたのだ。

 彼女とて行き帰りや現場を予想して魔力は温存してある。探知魔法は確実に発動してはいるのだ。だが、マッティスがどこにいるかは分からない。


 しかし、ティムは意外と冷静に聞く。


「レイ、あのアイセンティなんとかって魔物、気付けたか?」

「……そういえば、私ちゃんと探知魔法使ってたのに……」

「多分、マッティスは自衛として魔道具を用いるタイプだ。その中に探知魔法を弾く――――認識を阻害する魔道具とかを使ってるんじゃないか? アイセンティなんとかにも、自分にも」


 そして、その考えは当たりである。

 レイの強い探知魔法を完全に弾くことは出来ない。しかし、認識を最小限に抑えることで、気付きにくくする魔道具を用いているのだ。些細な切っ掛けで突破されることが多いが、一分一秒を稼ぎたいマッティスなら使うことは自然だろう。


「なら、どうすれば……」

「テト、あれやるぞ」


 レイの呟きに答えるかのように、ティムがテトに目配せする。

 テトは少し迷った様子を見せながらも、詠唱を開始した。


「『にゃぶにゃごにゃにゃん、にゃむにゃみぃ』!」


 その詠唱が終わると同時に、ティムの耳付近がぼんやりと光る。中々チュールな光景だが、それを皮切りにティムが膝から崩れ落ち、苦しみ始める。


「ティ、ティムさん!?」

「…………み゛づげ、だぁ!」


 強化魔法。それは対象を単純に強化し、力の強さなどを底上げするものが主流となっているが、強化魔法はそれだけが持ち味ではない。

 使いこなせれば、今のように五感を強化することも可能だ。

 ティムの聴覚を強化し、マッティスの足音を捕捉することで場所を特定する。


 マッティスは探知魔法から外れるように認識を阻害してはいるものの、存在はしている。息づかいはあるし、歩けば足音が鳴る。それを聞けばいい。

 勿論、それは簡単な話ではない。離れた位置での足音が聞こえるほどに聴覚を強化すれば、周囲のあらゆる物音が全て集束する。その中から足音を割り出すことは、容易にできることではない。


 しかし、ティムはやってのけた。そして、()()()()()()()を告げる。


「マッティスの動ぎが、思っだよりも゛早え! ぞれも魔道具を使っているがらがは分から゛ねえが……ごのま゛まだと、王都に゛辿り着ぐぞ!?」


 レイの表情にも戦慄が走る。今王都に辿り着かれれば、改めて見つけることは難しい。探知魔法も聴覚強化も、人々が賑わう王都での使用は向いていない。

 つまり、王都に着くまでに、マッティスを捕縛しなければならないということだ。


「どうすれば……」

「レイ、俺はどりあ゛えず先に行ぐ。テトど一緒に後がら着いでぎてぐれ。探知魔法を俺に設定すれば、迷わねえ゛はずだ」

「でも!」

「テト、頼む」


 苦しみながらもゆっくりと立ち上がったティムに、テトが不満な表情で再び詠唱する。


「『にゃごにゃんにゃにゃん、にゃぶにゃみぃ』」


 先程の聴覚強化のときと同じ光が、今度はティムの全身を包み込む。即ち、一般的な認識の強化魔法を、ティムに施したわけだ。


 強化魔法は基本的に、効果時間がある。逆を言えば、その効果時間内でさえあれば、魔法の使用者から離れていても効力が途切れることはない。

 マッティスに追い付くほどの速さを手に入れたティムは、テトが振り落とされることなどを危惧して、レイと共に後から着いてくることを望んだ。


「行っでぐる!」


 その走り出しからは、まるでアインのような圧倒的な力を感じた。

 木々の間をくぐり抜け、あっという間に姿が見えなくなる。


 やや呆然としていたレイは、はっと我に帰ると、探知魔法を使う。ティムが猛烈なスピードで王都の方面へと向かっているのが分かる。

 テトがレイの肩に乗るが、流石に今はメロメロになっている場合ではない。

 すぐさまティムを追いかけようとして――――


 ズガガガガガガァッ!


「えっ!?」


 まるで何か、土砂が激しく崩れ落ちたかのような大きな音に振り返る。それはまさしく、つい先程まで目的地としていた遺跡の方角だった。

 レイのネガティブな思考が最悪の展開を脳内にイメージさせるが、顔を振ってそのぞっとしない想像をかき消す。

 アイン・ツヴァドラ――――『城壁のアイン』は、元勇者パーティーの一員。何があったのかは知らないが、アインが見た目通りのか弱い幼女ではないのは知っている。

 アインなら大丈夫だ。だからこそ、任せると言ってくれたのだから。


 だが、ティムは着いてきてくれと言った。不相応なことをしているという自覚があったから。なら、自分が何をすべきかは明白だ。

 轟音を背にして、テトを肩に、レイは走り出す。


ティムが走り出すシーンを見て、レイは『アインみたい』と感じていますが、それはアインの本気を知らないレイ視点だからです。ただの強化魔法程度では、アインとは比べ物になりません。

なんだこのショタ詐欺野郎は。



『面白かった!』


『続きが気になる!』


『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


とお思いいただけましたら、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると幸いです。


あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。


また、同作者のこちらの作品も、よろしければ読んでみてください!

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