第十四話 お前が見た目で判断してんじゃねえか
アイセンなんたら――――冷えムカデに引き摺られること、およそ10秒。
地下へ潜り続けるたびに階段がどんどんと凍結し始め、最終的には氷でできたスロープを滑り降りるような格好になる。
そして、階段が終わり、広々とした空間に出ると同時に冷えムカデが腕を離し、慣性によって床を滑る。
凍結した床を破壊する勢いで蹴り、壁に激突する前になんとか動きを止める。
「ッ痛ぇーな……」
続く階段が見当たらないから、恐らく遺跡の最深部まで引き込まれたことが分かる。
そこは、冷えムカデの巨体が悠々と入ってしまうほどに広々とした空間。壁の近くには、凍結してしまっているためか無駄に状態の良い人体の一部が放置されていた。
やはり、いつも人間を餌として供給されていたのか。
しかし、レイたちを追うのではなく、何故だか一番食う部分も少ないであろう俺に御執心であることは好都合だ。冷えムカデに有利なフィールドではあるが、思う存分戦える。
地上についても大丈夫だろう。レイの探知魔法は魔物だけでなく人間も対象であるようだった。マッティスをそう易々と逃がしたりしないはずだ。
冷えムカデがガチガチと顎を鳴らし、俺を睥睨する。
ここ最近で戦った中で、恐らくトップクラスの強敵だ。魔王軍と戦っていた間はたまにあったかもな、って程度である。
そして、今俺は1人で戦わなければならない。
「ハードだな……腕が鳴る」
硬い相手の対策は、俺も心得ている――――即ち、砕けるまで殴ればいいということを。
人生、与えられた手札だけで勝負しなければならない。ならばメチャクチャ硬い相手なんかは、どうにかなるだけ断然やり易いものだ。
冷えムカデが前足を持ち上げ、俺の体躯を貫かんと突き出す。
床が凍結しているため、移動も割と困難だ。一歩一歩、足で床の氷を叩き割るように力を込めて、強引に移動する。
そのまま跳び跳ねて、顎をカチ上げるようにアッパーを食らわせ、仰け反らせる。
そのまま着地すると同時に走り、ガラ空きになった胴体へと飛び蹴りを喰らわそうとした――――瞬間、思いの外俊敏な冷えムカデの体が旋回し、俺の蹴りを避ける。
「おおっ!?」
空中でどうにも自由に動くことができなくなった俺に対し、絶好のチャンスとばかりに冷えムカデは頭を天に掲げる。
すると、まるで剣のような鋭さを持つ巨大な氷塊が頭部に形成され、俺を頭上から床へと叩き付けた。
「がぁッ……!」
確実に俺くらい頑丈でもなければ死んでいた衝撃が小さい体躯の隅から隅までを襲い、床の氷を破壊する。
体のあちこちから流れる血を拭いつつ、立ち上がる。流血なんて久々だ。ヴォネッドの雷魔法でも出来なかったことだが、それだけ強いと言うことだろう。
そして、恐らく先程冷えムカデの頭部に現れた氷塊は、冷えムカデ本人の氷魔法によるもの。
その裏付けとでも言わんばかりに、冷えムカデが前足で床を突くと同時に――――
「危ねえ!?」
俺の足元から、俺を貫かんとする氷の棘が何本も飛び出す。
咄嗟に回避しようとするも、氷の摩擦のなさに足をとられ、大きく回避はできない。仕方ない、最低限の体の捻りだけで致命傷を回避する。
体に突き刺さった何本もの棘を握り締めて破壊した。この頑丈な体に刺さる時点で威力は結構高い。
この巨体で思ったよりも繊細な攻撃を繰り出してきやがる。ヴォネッドといいコイツといい、何でクビになってからやたらと頭脳派に見えない頭脳派と戦うことが多いんだ。
しかも今の魔法、あまりにも予備動作から発動までが短すぎる。普通有り得ねえよ――――それこそ、条件でもなければ。
先程の階段で現れたとき、わざわざ突撃を繰り返さずに、こういった魔法を使っていれば、レイたちも逃すことなく食えていたはずだ。なのにそれを使わなかったってことは。
「自分が凍結させた床からしか発動できないってことか?」
そう一縷の希望を見出だし、先程の階段を見れば……ご丁寧に氷で完全に封鎖されていた。
「この野郎、ガチの密閉空間作りやがって……流石に俺も呼吸しないと死ぬんだが!?」
いずれこの空間に閉じ籠れば自分も死ぬだろうが、されに気付いた上でやっているのか、冷えムカデはこの氷の牢獄を解こうとしない。
想像していたよりも遥かに冷えムカデに有利なフィールド。流石にこれ以上はナメプしていられない。地上のレイたちがどうなっているのかも気になるところだし、ちょっと強引に勝負を決めさせてもらおうか。
俺は、ふと頭上を、天井を見上げる。
歴史的建造物、その価値は計り知れないが、まあ古きものはいつか廃れていくからね。そういうこともあるよね。
少々、乱暴な対処をさせてもらおう。
このバトルが終わって、勇者サイド書いたら魔法使いになれるはずだから……もう少しの辛抱だから……
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