26 蹂躙するは鋼鉄の獣
「――ようし、お前らァ!帝国の豆鉄砲が、俺たちの作物を荒らしに来たッ!なら答えは一つだァ!!」
ガイは拳を天に突き上げる。
「パワー!!」
「「「イィィズ!!」」」
「ジャスティィィィ─────ス!!!」
咆哮と共に、異形の軍団が突撃を開始する。
「刈り取り開始ィィィ!!」
「うぉぉぉぉ!」
● トラクター部隊
「農家ナメんなぁぁ!」
「空だろうが関係ねぇ!」
重装トラクター型パワードアーマーが前進。アタッチメント「油圧ハンマー」が振り下ろされ、下敷になったドローンが煎餅のように潰される。地面を叩いた衝撃波で、半径数十メートルのドローンが一斉に跳ね上がり、行動不能になったドローンをフルスイング。それが別のドローンに直撃、爆散。その破片が次々と連鎖爆発を引き起こす。
「連鎖破壊だとぉ⁉ そんな攻撃パターンは想定していないぞ⁉」
「パターンだと?そんな頭じゃ農作物は育てられねえぜ!」
「自然はいつも気紛れだからな!」
「ほらよ、おかわりぃ!」
● 播種機部隊
「オラァァァ!播くぞー!!」
「照準は?」
「いらねぇだろ!」
超速多連装シードランチャーが唸りを上げる。バラ撒かれるのは、金属製弾体×数百×10機分。瞬く間に空が金属弾で埋まる。
「回避――不可能! 空域が塗りつぶされています!」
雨音?が止んだ後、ドローン群が文字通りまばらな金属吹雪になる。
「よーし、均一に撒けたな!」
「来年、芽ぇ出るかな?」
「出ねぇよ!!」
● 脱穀機部隊
「推進スラスター点火!回れぇぇぇ!!」
穀物の穂を刈り取る刃が高空に逃げようとするドローンを捕らえる。その様は「収穫」というよりも、もはや肉食獣の「捕獲」。高速回転するブレードがドローンの装甲をやすやすと切り裂き、破片が辺りに飛び散る。
「ひいいい! 我々の機体が『脱穀』されていくぅぅ!」
「ふむ、フリントコーンよりもろいな」
「あっち逃げてるぞ?」
「逃がすわけねえだろ!すりつぶせ!」
「……ドローン部隊Dー1から5、消滅しました」
「消滅!?」
● コンバイン部隊
「大将ー! そろそろ刈り時です!」
「おぅ、全部まとめていけ!」
全身装甲化コンバイン、前進。肩部ミサイルポッドが開く。
「刈り取り開始ー!行くぞオラァ!」
ミサイルが炸裂し、逃げ場を失ったドローンをブレードで一掃。
「こーいうときに日頃のメンテがものを言うよな!」
「収穫時に機械壊れたら旬のタイミング逃しちまうしな!」
「はい終了! 次の畑ぁ!」
同時刻の巡洋機の艦橋内では。
「ドローン部隊………全滅!」
「バカなっ!?」
「……カンゼン様、一機近づいてきます!あ、合体した⁉」
「……はぁ?」
目の前にはどこからか飛んできた追加強化パーツを全身に装着した機械巨人がマッスル・ポーズを決めていた。
「ぬぅぅん!超耕神:グレート・ザ・タイタン・ハーベスターV!降・臨!」
「なにソレ!かっけぇぇぇぇぇ!」
「マ、マスター???」
「いや、農機合体だし……」
「よぉし、親玉だァ!」
『超耕神:グレート・ザ・タイタン・ハーベスターV』。超重の機械神はブースターを全開噴射し巡洋機に向けて突撃を開始。
「ま、まさか本艦に接近戦を仕掛ける気か!?」
しかし、慌てふためく艦橋の中で、司令官カンゼンのみが冷静に指示を下す。
「……各機、広域磁力波展開。重機どもの『鉄』を直接掌握しろ!」
「!了解!磁力フィールド展開します!」
巡洋機から放たれた不可視の磁力フィールドが、大地を覆う。
「ぬおっ!? なんだ、身体が重てぇぞ! 」
完全停止した「超耕神」に対し、巡洋艦の主砲が狙いを定める。
────だが。
屋上に立つSoDAが、戦場に点在する磁力発生ユニットを瞬時にロックオンした。
「マスター。破壊されたドローン数機及び敵艦より発生されている磁力波を確認。塩分を利用した凝固点降下冷却による対処の為、『ソルト・レモンソーダ』の『強制摂取』進言します!」
「了解だ!」
『ちょっとSoDAさん!?それ私の専用ドリンクー!』
『フッ……これで専用ではなくなりましたね』
「うわ、まさか計算ずく!?」
呆れるリンと悔しがるSoLaを尻目にして、SoDAはカイトの描いた魔法陣に飛び込む。
「SoDA、熱を奪え! こいつでフィールドごと、すべてを凍らせろ!」
カイトが錬成したのは『極光の氷原:フローズン・ソルトレモンスカッシュ』。
直後、翡翠色だったSoDAの髪が、根本から一気に眩い黄金の輝きへと変貌する。それは冷気によって大気中の光が乱反射し、ダイヤモンドダストのような輝きを放つ神々しい姿だった。ボディスーツのバイパスには白と黄色の光が走り、周囲の熱を一瞬で奪い去っていく。
「強制摂取!『氷晶の武装形態』、起動!」
『氷晶の武装形態』へと至ったSoDAの足元から、地表が瞬く間に白く染まっていき、その周囲には無数の氷柱が屹立していく。
「私と自然の氷に磁力は無意味です……凍てつき砕けよ!『極光塩化・氷塊砕』!」
SoDAが両手を前方にかざすと同時に、氷柱は氷の流星となって磁力の発生源に降り注ぎ、敵の磁力フィールドを無効化した。
「ガイ様、あとはお任せします」
「スゲーなSoDAちゃん!」
「お?軽くなった!」
「なんか肩コリもとれた!」
「うーし。そんじゃあ改めて……いくぞぉぉぉぉあ!」
「迎撃!い、いや緊急退避ー!」
「間に合いません!」
慌てて逆噴射をかけるが、時すでに遅し。上空から唸りをあげて超重量のパワードアーマーが両手を振り上げて落下する!
「わっはっはー!逃がすかぁ!」
「ヒィィ!」
「必!殺!パワァァァァ!ストラァァァアイク!」
ベコォッ!!
巡洋機の甲板に必殺の一撃が炸裂。排煙と警告音が艦内に響く。
「……退却信号を」
カンゼンは静かに、しかし震えた声で命じた。
「本任務、失敗と認定する…我々は非効率を甘く見ていた……」
戦闘終了後。プラント前は金属屑の山となった。
「ふむ。資材調達には調度良かったんじゃねぇか?」
「帝国製品、意外と脆ぇ!」
「……ええと……彼ら、強すぎない?」
モニターに映るガイ達を見ながら引きつった笑みを浮かべるリンに、SoDAが即答する
「戦闘効率、予測値の三倍。帝国側に……少し同情しますが、非常に優秀な戦力です。プラントの防衛に関しては適任でしょう」
「……農作業中はそっち優先しそうだけどね。それよりもSoDA、あんたのせいでSoLaがいじけてるんだけど?」
リンが指差す先には、隅っこで膝をつくSoLaが床に「のの字」を描いてうずくまっていた。
「……緊急事態とは言え、私の…オンリーワンが……」
「SoLa?(ドヤァ)」
「!〜〜〜〜!」
「ちょっとカイト!メカ見に行こうとしないでドリンク作ってコイツらおとなしくさせて!」
「ええええ………」
一つの戦いが終わったが、もう一つの戦いは、まだ決着がつきそうにない。




