第260話 鉱石不足
慰労会も終わり、翌日の休みもゆっくりと休んだ。
そして、さらに翌日は仕事なので支部に出勤すると、この日も青空錬金術をしながら魔法を見せていく。
「なんとなくですけど、魔力の流れっていうのがわかってきましたねー」
「確かに動いているのがわかるわ」
エーリカとアデーレがうんうんと頷く。
思ったより早く見えるようになったなと思ったが、よく考えたらこいつらは素人じゃない。
自分の魔力を動かして、錬金術も初歩的な魔法も使える魔法使いなのだ。
「じゃあ、手元を見てみろ。錬成で動かしている自分の魔力が見えるか?」
そう言うと、2人が手元の銀鉱石とボーキサイトを見る。
「動いてるのはわかるんですけど……」
「見えないわね」
動いているのがわかるのは当然だ。
動かしているのが自分だからな。
「見えないのは魔力が微弱だからだ。そのレベルの錬金術ではそこまで魔力を使わない」
俺がやっている魔法とは魔力量が違う。
「もっと魔力を込めたらわかるんですか?」
そうだなー……
「ちょっと休憩だ。これをやってみろ」
そう言って、2人に魔石を渡す。
「魔石?」
「水曜石でも作ればいいの?」
おー、察しが良い。
でも、ヘレンがテーブルの下に逃げちゃった。
「ああ。水曜石を作るのはそこそこの魔力がいる。それで確認してみろ」
「わかりました!」
「さすがにもう水浸しにはならないわ」
なんかフラグに聞こえたので防御魔法を展開する。
「ジークさんから魔力を感じましたよ」
「エーリカさん、私達の師匠は弟子を信用してないみたいよ」
防御魔法はわかったか……
「いいからやってみろ」
「はーい」
「やるか……」
2人は水曜石を錬成し始めた。
俺の目からはそこそこの魔力が動いているように見える。
「おっ? なんか見える気がします!」
「確かにゆっくりだけど、ちょっと動いてるわね」
ゆっくりなのはお前らの錬成が遅いからだ。
「それが魔力だ。別にそれが見えたところでそんなに腕が上がるわけじゃないが、見えることに越したことはないし、鑑定が違ってくると思う。今後はそういうのを意識しながら錬成してくれ」
「わかりましたー」
「なんか魔法使いになったって実感ができて嬉しいわね」
2人は嬉しそうに水曜石を錬成していく。
その様子を見て、そろそろ防御魔法を教え、火曜石を作らせてみても良いんじゃないかと思った。
「――こんちわー」
声がしたので振り向くと、茶髪の若い男が立っていた。
「んー? 客か?」
「誰ですかね?」
地元民のエーリカも知らないらしい。
「こんにちは。誰だ?」
「鍛冶師のディルクっす。協会に相談があるんだけど、いいっすかね?」
鍛冶師か……
「ああ。ここでもいいか? ちょっと錬成中なんだよ」
「いいっすよ。でも、錬金術師って外でも錬成をするんっすね」
いや、しないな。
超が付くほどのデスクワークだ。
「特殊なことをしていてな」
「へー……それにしても華やかでいいっすね。猫ちゃんまでいるじゃないっすか。ウチはむさくるしい人間ばっかりっすよ」
鍛冶屋は力と体力、それに忍耐力がいるだろうからな。
俺もそこまで詳しくないが、男社会のイメージだ。
「女が多いからな。それよりも相談って?」
「ええ。錬金術師協会さんも把握しているかもしれないっすけど、最近、鉄鉱石を始めとする鉱石類が異様に減っているんっすよ」
まあ、鍛冶師が来た時点でその話かなとは思った。
「ああ。他所の町からの要請があったらしくてな。ウチもその仕事を受けたんだが、鉄鉱石、銅鉱石が売り切れだった」
「そうなんっすよ。協会さんは買ってないんっすか?」
「出遅れたんだ。ウチは銀鉱石とボーキサイトだけだな。今、その錬成中だ」
エーリカとアデーレは水曜石を作ってるけど。
「そうっすか……いや、もし、買っていたら譲ってほしかったんっすけどね。いかんせん、ウチがヤバいんで」
鉄鉱石がないと鍛冶師は困るわな……
「すまん。在庫がないこともないんだが、それは病院からメスを作るように言われていて、それ用なんだ」
「あー、さすがにそれはそっちが優先っすね」
鍛冶師は鉄鉱石や銅鉱石なんかで日用品を作るから大事だ。
とはいえ、命に係わる医療器具の方が優先されやすい。
「役所に言って、民間連中に訴えたらどうだ? もしくは、商業ギルド」
「そうなんっすけどねー……錬金術師連中は傲慢だから……あ、協会に言っているんじゃないっすよ」
錬金術師は鍛冶屋なんかから嫌われているからな……
こいつらが一生懸命、時間をかけて作るものを一瞬で作ってしまうから……
「いや、別に構わん。しかし、お前達も仕事にならないし、下手をすると、経営がマズくなるのは確かだろ。やはり役所に言って緊急依頼を取り下げるように陳情すべきだぞ。役所もバカじゃないから地元を優先するはずだ」
「役所っすかー……俺ら、バカだからよくわかんないっすよね」
バカだろうな。
何がバカって、わからないのを放置していることだ。
知らないことは恥ではないが、知ろうとしないことは愚だ。
「お前ら、ちょっと錬成をしてろ。俺はできた銀とアルミのインゴットを役所に納品してくる」
振り向いて3人娘に指示する。
「はーい」
「いってらっしゃーい」
「ケンカしないでね」
せんわ。
「ディルク、俺も役所に行って、話をしてやる」
俺、もう人間性が40点くらいはないかな?
「いいっすか?」
「俺達の仕事にも関わることだし、その辺りを詰めておかないとこっちも無駄な仕事になってしまうかもしれん」
依頼自体を取りやめるなんてことになったら銀鉱石とボーキサイトを20キロずつ買ったこっちは赤字になってしまう。
銀もアルミもそこまで使用頻度が高いものじゃないのだ。
「あざーっす。さすがは王都のエリート錬金術師っすねー。リートのヒーローっすわ」
バカのくせに新聞を読んでんじゃねーよ。
書籍を購入してくださった方、ありがとうございます。
まだの方は是非ともご購入頂けると幸いです。
本作はこれからも続いていきますし、色々と書いていきますが、これからもよろしくお願いします。




