第255話 仕事再開
支部に戻ると、レオノーラが戻ってきており、エーリカと話をしていた。
「あ、おかえりなさい」
「おかえりー」
「ああ。ただいま」
「ただいま」
俺とアデーレが席につくと、エーリカがコーヒーを置いてくれたので飲む。
「レオノーラ、病院はどうだった?」
「納品はオッケー。メスがもうちょっと欲しいってさ」
よりにもよってメスか。
メスって材料がステンレスだから鉄がいる。
「この状況でか……」
いきなり問題が起きた……
「どうしたの? エーリカからインゴットのことは聞いたけどさ」
「さっきアデーレと鉱石屋に行ったが、鉄鉱石と銅鉱石が民間に買い占められていた」
「ありゃりゃ。早いね」
営利組織だから仕方がない。
こっちへの嫌がらせではなく、民間同士で材料を奪い合った結果だろう。
「ジークさん、他所の町から資源が欲しいということでそれに対処することも大事だけど、メスは医療器具でしょ。優先順位はそっちじゃない?」
アデーレの言う通りだ。
どう考えても人命に関わる病院が上だろう。
「在庫のインゴットはそっちに回すべきだな」
「ルーベルトさんには事情を話せばいいでしょ。役所も医療器具を優先しろって言うと思うわ」
まあ、そうだわな。
そうじゃなかったら責任問題になるレベル。
「じゃあ、インゴットは銀とアルミな」
「銀はできると思いますけど、アルミ?」
「作ったことなーい」
「私もないわね」
アデーレは知ってる。
「鉄や銀と比べると、難易度は高いが、エンチャントの方が難易度はずっと高い。良い練習になると思う」
「ジークくーん、ステンレス鋼とどっちが難しい?」
ずっとステンレス鋼を作っていたレオノーラが聞いてくる。
「ステンレス鋼だ。あれはこらえ性のないお前には向いてないやつだからな」
だからこそ、やらせたんだが。
「ほうほう。あれはきつかったもんねー」
次の試験を考えると、レオノーラは実技の方は十分だし、勉強に集中させるために楽な銀を集中的にやらせるか。
逆に実技の経験が不足しているアデーレにステンレス鋼とアルミの錬成を集中的にさせる。
エーリカは半々ってところだな。
「アデーレ、ルーベルトに電話して、事情を説明してくれ。それで銀とアルミのインゴットを受けるって」
「わかったわ」
アデーレは頷くと、立ち上がって電話のところに行き、役所に電話しだした。
「ジークさん、軍の方はどうしますか?」
エーリカが聞いてくる。
「ふーむ……」
リストを見るが、どれもそれほどの難易度ではない。
とはいえ、鉱石関係は避けるべきだな。
「木材の加工と回復軟膏でも作るわ。エーリカ、レオノーラ、お前らも電話をして依頼を受ける旨を伝えてくれ。俺は2階で在庫の確認と材料を取ってくる」
「わかりました」
「わかったー」
2人が頷いたのでデスクの上で丸まっているヘレンを抱え、2階に上がると、倉庫で在庫のチェックをしていく。
「ヘレン、確認だが、体調はどうだ?」
「風邪ですか? 私は大丈夫ですよ」
うーん、3人娘もだが、ヘレンも本当に大丈夫そうだ。
「俺から皆にうつらなくて良かったな」
「皆さん、ちゃんと対策をしておられましたし、大丈夫ですよ。ただ、今日は勉強会をせずに早めに休まれてください。ぶり返してはいけませんので。御三方が体調を崩してはいけないのも確かですが、ジーク様がまた体調を崩されたら御三方も心配しますよ」
勉強どころではなくなるか。
「わかった。そうする」
在庫の確認を終えると、アデーレが作ったインゴットと鉄鉱石を空間魔法に収納し、1階に下りる。
すると、すでに電話は終わったようで3人娘が席についていた。
「どうだった?」
共同アトリエの隅に持ってきたインゴットと鉄鉱石、さらには鉱石屋で購入した銀鉱石とボーキサイトを置きながら3人娘に聞く。
「ルッツ君に電話しましたが、木材と回復軟膏で大丈夫だそうです」
「病院にも依頼受注の旨を伝えたよー」
「ルーベルトさんに事情を説明したらやっぱり病院の依頼を優先してくれって。銀とアルミのインゴットでオーケーだそうよ」
問題なさそうだな。
「じゃあ、そんな感じでいこう。エーリカはまずキュアポーションを終わらせてくれ。俺も手伝う」
もう十分だからさっさと終わらせよう。
「はーい。ジークさんが手伝ってくれるなら今日中に終わると思います」
「ああ。終わったら銀とアルミに入ってくれ」
「了解です」
エーリカが笑顔で返事をする。
「レオノーラは銀鉱石を銀のインゴットに変える作業だ。その後にアルミだな。交互にやっていこう」
「どうやるの? 銀って鉄や銅とちょっと違うよね」
レオノーラはちゃんとその辺もわかっている。
さすがは9級だ。
「ちょっと違うだけだからすぐにできるようになる。アルミもだが、ちゃんと教える」
「おねがーい」
レオノーラも問題ないだろう。
「アデーレはメス用のステンレス鋼を作ってくれ」
「まあ、何となくそうじゃないかなと思ったわね。レオノーラがやってたやつでしょ?」
嫌がってたやつな。
「そうだ。9級がやっていたやつだな。頑張れ、8級」
「プレッシャー……」
「お前ならできるから大丈夫だよ。じゃあ、そういうわけで始めよう」
俺達はそれぞれの作業に入った。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
コミカライズが更新されておりますのでぜひとも読んで頂ければと思います。(↓にリンク)
よろしくお願いいたします。




