第252話 ふっかーつ
「エーリカ、レオノーラ、アデーレ、お前らにも迷惑をかけたな」
3人にも謝る。
「いえいえー。こういうのはお互い様ですよー」
「ジーク君、こういう時は感謝だよ」
「早めに治って良かったわね」
うんうん。
人間性が高い奴らだ。
「体調の方はどうだ? 移ってないか?」
それが心配。
「大丈夫ですよー」
「絶好調」
「言われた通り、手洗いとうがいはしたしね」
なら良かった。
俺とレオノーラも席につくと、エーリカが朝食を持ってきてくれたので皆で食べた。
そして、ヘレンと部屋に戻ると、洗い物を干し、支部に向かう。
「ようやく復帰だな」
王都に行ってたし、久しぶりの支部だ。
「体調も戻りましたし、万全ですね」
「そうだな。あいつらは試験を控えているし、俺がしっかりしなければ」
あっという間に支部に着くと、中に入る。
すでに3人娘は来ており、話をしていた。
すると、俺に気付いたエーリカが笑顔で見てくる。
「あ、ジークさん。先ほど、本部長から電話がありましたよ」
本部長?
「何だろ?」
「折り返し、電話が欲しいって言っておられましたね」
「じゃあ、かけるか」
電話を取り、本部に電話をすると、すぐに呼び出し音が止んだ。
『はい、こちら錬金術師協会本部です』
サシャだ。
いつもこいつだな。
「サシャか? リート支部のジークだ」
『あ、おはようございます。どうされました?』
「おはよう。本部長から電話があってな。折り返しかけるように言われたから繋いでくれ」
『わかりました。少々、お待ちください』
やはりサシャは簡潔で良いな。
そのまま待っていると、保留音が止む。
『おー、ジーク』
本部長だ。
「おはようございます。電話をくれたらしいですけど、何かありましたか?」
『いや、クヌートとゾフィーが寝込んでしまってな。どうも私の風邪をもらったらしい。お前も気を付けろよ』
あちゃー……あいつらもかい。
クヌートとゾフィーといえば、見事に俺の両隣に座っていたし、一緒に帰った2人だ。
もしかしたら俺のせいかもしれないな。
「本部長、俺も昨日は寝込んでました。症状的に本部長と同じです」
『あー……お前もだったか。大丈夫か?』
「昨日ほど、弟子のありがたみを感じたことはなかったですね。それと寮だったこと」
「ジーク君もようやくわかってくれたかー」
何がそんなに嬉しいんだ?
『そうか……まあ、私もその気持ちがわかるな』
俺達も見舞いに行ったからな。
「クヌートとゾフィーは大丈夫ですか?」
試験に向けてやる気を出した途端に躓いている。
『大丈夫だと思う。まあ、昼にでも見に行ってみる。しかし、お前はもう仕事に出ているのか?』
「もう体調はバッチシですので」
『ふーん……ならいいか。今回は大臣のせいだが、体調管理には気を付けろよ。お前もだが、弟子共が体調を崩したら試験に響くぞ』
せっかく勉強をしても当日に体調を崩したら最悪だからな。
「わかってますよ」
『ならいい。話は以上だ。また来月の試験の時に頼む』
試験官ね。
「ええ。クヌートとゾフィーにお大事にって言っておいてください」
『珍しいことを言うな』
「苦しみは重々にわかってますので」
今の俺は優しいのだ。
『そうかい。じゃあ、伝えておく』
「よろしくお願いします」
『じゃあな』
本部長が電話を切ったので席についた。
「クヌートさんとゾフィーさんも風邪ですか?」
電話を聞いていたであろうエーリカが聞いてくる。
「ああ。俺のと同じっぽいな。見事に一門に感染したようだ。お前らも気を付けろってさ」
「ええ。そこは気を付けます」
「怖いよねー」
「そうね。私は崩すと長いから特に注意するわ」
そうしてくれ。
「じゃあ、俺はちょっと支部長に挨拶に行ってくる」
そう言って立ち上がると、支部長室に向かう。
当然、戻ってきてからまだ挨拶をしていないのだ。
「支部長、ジークです」
扉をノックしながら声をかけた。
『開いてるぞー』
中から支部長の声が聞こえてきたので中に入る。
すると、席につき、いつものように新聞を読んでいる支部長がおられた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。風邪だってな。もう大丈夫なのか?」
「ええ。3人娘のおかげです」
「そうか。もういいなら問題ないな。王都はどうだった?」
色々あったな。
「試験作成は終わりました。それと陛下からの頼み事もですね」
しょうもない依頼だった。
「なら良い。鑑定士の試験の方はどうだ?」
「受かる可能性があるのはレオノーラですね。エーリカとアデーレは無理です」
最初からわかっていたことだ。
「そうか。まあ、仕方がないか」
「こればっかりは時間をかけるつもりでしたので当初の予定通りです」
「わかった。来月の錬金術師試験はどうだ?」
うーん……
「すでに動き出しています。おそらく、エーリカは大丈夫でしょう。現時点でも合格できる可能性が高いです。レオノーラは筆記、アデーレは実技が課題です。これから来月に向けてそれらの勉強会をしていきます」
エーリカは安定感があるんだよな。
レオノーラはだいぶ良くなってきているが、ムラがある。
アデーレは知識は問題ないのだが、経験不足だ。
「ふむ。これから仕事はどうしていく? 試験に向けて抑えるか?」
「維持で良いでしょう。仕事も錬金術の練習になりますし、我らの目的は支部の再建です。あいつらが試験に合格し、錬金術師の質を高めるのもその1つですが、それで仕事を疎かにしては本末転倒です」
俺達は社会人なのだ。
勉強だけをしていればいい学生とは違う。
まあ、仕事をしながら勉強をするという難しさがあるから錬金術師試験の合格率が低いのだが。
「わかった。では、そのような感じでいけ。お前に任せる」
「ええ。そうします」
一礼すると、支部長室を出た。
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