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邦画生き残りとアニメ映画~ガルパンはいいぞ~

やっとのことでガールズ&パンツァー劇場版を見ることができた。いかんせん、やっている劇場が身近になかったのが今回の「ブルーレイ&DVD発売記念拡大上映」で近場でやることになり、見に行ったのだ。


ガルパンはいいぞ。


合言葉となったこのワード。実際そうだった。作品を見ればお気に入りのシーンが生まれるのだが、この作品はあらゆる部分がリンクする作劇なのだ。


作品のテーマはキャッチコピーの『取り戻せ』の通り、住む場所を取り戻すということ、そして在り方を変えるということになるのであろう。


さてあらすじを。

TV放送版で主人公たち大洗女子は戦車道選手権で優勝を果たし、廃校の約束は撤回される……はずだった。

大洗女子優勝記念エキシビジョンマッチの夜に文科省は夏休みの終わりの8月末をもって廃校することを通達。決定事項であり、前の約束は口約束だと反故にした。

この事態から大洗女子は保有戦車すべてを第一回戦で当たったサンダース大付属に匿わせ、反撃の機会をうかがうことに。

そして生徒会長は戦車道協会と、主人公みほと決勝で戦った黒森峰の隊長まほの母でもある戦車道の家元を使って学校を取り戻す最後の賭けを仕掛ける。


といった感じである。

ストーリー自体は王道。しかし、その王道脚本はそこまで見かけない。

主人公たち大洗女子は居場所である学園艦を追われてしまう。そこで最も変化したのは風紀委員だった。忠誠を誓った学び舎を失い、規律を担保するものを失い、一番まじめだった三人は他校に喧嘩を売るほどにメンバー中最も荒んでしまう。そんな彼女たちに立ち直るよう諭したのは、もっとも軋轢のあった遅刻の常習者、麻子だった。

黒森峰戦で重戦車を二台屠って慢心気味だった一年生チームはエキシビジョンにおける撃破からその戦術論を『自分たちでできること』に転換することになる。苦境の際に丸山沙希のヒラメキに頼るのは黒森峰戦以来の伝統になりつつあるが。

ネットゲーマーチームは作中終始一貫して変化を希求していた。ひ弱な体を鍛え、戦えるようになるころに彼女らのアピールにもちょっとした変化が訪れる。

主人公みほにとっても変化はある。彼女は前年の大会における行動が原因で姉のいる黒森峰を離れ大洗に移ってきた経緯がある。みほとまほの姉妹仲は、家元である母の方針に従うかで袂を分かったのもあり少し複雑だったのだが、今作でまず、姉妹仲は完全にわだかまりが完全に解けたのである。

変化は他校にもある。映画開幕すぐのエキシビジョンマッチで大洗女子と組んでいた知波単は上意下達、精神主義と突撃を重んじるゆえに火力も防御も格上の相手に負け続けている。そんな彼女らにも劇中新しい風が吹き始める。

主人公たちを追い詰めた強敵、プラウダも変わる。隊長カチューシャに絶対忠誠を誓い普段からそのワガママに答えてきた彼女らも、窮地で彼女のとある『ワガママ』を否定し、忠誠を自分たちで示す。

良くも悪くも変わらないのはOVAで出てきたアンツィオである。貧乏所帯と大火力の重戦車の整備ゆえに派遣は8ミリ機関銃の豆戦車一両のみ。しかし、知恵と勇気と小柄さを生かしトリッキーかつしぶとい活躍を果たす姿はOVAのころから変わらない。


大学選抜チームは大戦末期型戦車と規則変更で無理やり導入された大火力で高校の精鋭達を追い詰める。

彼女たちに動機は本来ない。唯一、隊長である天才少女、愛里寿はとある条件をとある人物に示す。

思いの力の差が、その後大きな差を生んでいく。



さて、この作品。映画豊作の2015年においてもある種特異点的なヒットを叩きだした。2016年5月23日現在、歴史上深夜アニメからの劇場版において20億突破は3件。大ヒット中の大ヒットである。

『ガルパンはいいぞ』の合言葉で語られるその内容は、まさしく作劇の見本といえるかもしれない。


実写邦画は近年、常々マイナス面を語られる。

娯楽性を突き詰めた作品は近年少なく、どこかテーマ性と芸術性を重視する姿勢になりつつある。

しかし、そういうものを尊ぶ以前に『娯楽としての映画』を十分にやらずに予算を消費してきたようなものであろう。

おりがちな愛とありきたりな悲劇とよくわからない風刺と半端なコメディに凝り固まり、突き抜けた爽快感が足らない作品や、原作への愛がないのに偉ぶる監督があまりにも多い気がする。

なぜ、そうなったのか。予算の不足。集客重視のあんまりな配役。監督の自己満足と脚本家の能力不足。カメラワークの陳腐化。

テンプレラノベアニメと構造が似ているのではないだろうか。

それでも20億は容易に稼げてしまう。


そのような中、アニメ映画は強い。原作を熟知し、愛を込め、表現を工夫する。これらをしっかり押さえれば、魅力的なものができるというあたりまえを実践している。


どこか実写界隈は慢心し続けているのではないだろうか?

アメリカのハリウッド映画との違いはまさしく慢心と環境の違いであろう。

アニメは、そうなってほしくない。


あまりにも素晴らしい。感想がまとめられない。そう言える実写邦画が出るのはいつになるだろうか。

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