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そこにあるのは69年分の歪み

戦争反対を声高に叫ぶ日本型平和主義の人たちは、仮に憲法九条がある状態で日本が焦土となった場合、その原因を何処に求めるのだろうか?政権?右翼?自衛隊?侵攻した敵国?


「日本は戦争をしない国だ」

戦後一貫して言われ続けたこのスローガンであるが、その実態は「戦争をしない国」ではなく、「戦争すらできない国」でしかなかったのではないかというふうに感じるようになってきた。


ここで下品なたとえを一つ。

男の一物が「勃たない」のと「勃てない」のではニュアンスが違う。

「勃たない」のはEDであるが「勃てない」のは紳士だ。

戦争にも同じことが言えよう。

戦争ができるが戦争をあえてしないなら評価はできる。だが、日本は戦争そのものを完全に禁止している。これが評価になるだろうか?

国民の不断の努力なんて恥ずかしくて言えないだろう。

第一、奪われた領土はどうなる。

竹島は?戦争できないという状況があの島の収奪を許したではないか。


憲法9条がベトナムの泥沼に巻き込ませなかったのは事実だ。だが、その9条が今や別の側面を見せている。

その文面を生真面目に読めば、自衛隊は違憲でしかない。

国民の生命や財産そして人権は、他国の侵攻の前において差し出すほかないのだ。これが憲法13条、25条に明確に反するのは言わずもがな。

憲法学者がどうにか解釈を捻じ曲げてつじつまを合わせたのが現状でしかない。


湾岸戦争もまた大きな問題提起をした。日本国民は憲法を盾に他国に流血を強いて一番おいしいところだけをいただく狡猾で冷血な国家だと断じられた。

他人に流血を強いる『不正義』を日本が戦争をしない『正義』と断ずる平和主義者は、自分たちのやっていることを考えたことがあるのだろうか。その醜悪さは、彼らの言う戦争指導者層の比ではない。戦争指導者層は最終的に責任を取らねばならない。だが、彼らは責任を取らなくてもいいのだ。

日本は世界有数の石油消費国だ。湾岸戦争は石油の安定供給ためにも先進国が団結して地域の不安要素を排除したものである。無論そこには当時世界の経済を支配していた日本がいてしかるべきだ。それを法的な問題とはぐらかして油だけ手に入れる姿は、強欲で醜い存在でしかない。

たかが油されど油。今身近に石油製品がどれだけあるかを考え、そしてどれだけのモノが石油で運ばれているかを想像すれば、湾岸戦争でとった日本の姿勢はいかに下衆かわかるであろう。

ここでやっとPKO参加がはっきりした。だが未だに、自国にとって直接的利害が生じる紛争への介入に二の足を踏んでいる。


安倍首相はおかしいというのは簡単だ。だが、そのおかしさがどこから来るかというとまずわからないだろう。

いうなれば安倍首相は急進的すぎるのだ。日本の大きな政治的決断がこうも立て続けに変わっていくのに納得がいかないかもしれない。

だが、その実際は、今まで考えることを放棄して、棚上げにすることで仮初めの安寧に浸ってきたことが生んだ大きなひずみの修正でしかない。

日本が鎖国をしているならまだいい。しかしいまや日本は世界の国のうちの一つである。

憲法9条をはじめとした日本国憲法成立の裏には、アメリカの当時の世界統治計画があったとされる。アジアは中国が覇権を握り、日本は中国の一属国として存続させる。

当時のアメリカは肥大化した日本が再度自立した国家になるのを相当嫌がったようで、一部で言われる敗戦根性の叩き込みを行ったという主張にもなかなかに納得がいく。


憲法9条はそれこそノーベル賞を与えればいいだろう。敗北者の惨めで歪んだプライドの象徴として、永遠に語り継ぐべきかもしれない。

憲法9条が日本人から戦争の本質を大きく遠ざけていったのだ。

日本の戦争観はベトナムから変わっていない。

今の日本の反戦主義者の主義主張をまとめてみると、そこには驚くべき結果が待っていた。有史以来の反米国家の価値観が悪魔合体を引き起こしていた。

彼らにとってみれば、それで正しいのだろう。

ナチスや大日本帝国、ソ連、中国共産党、朝鮮労働党、連合赤軍、イスラム原理主義組織。彼らの主張はこれらの存在を掛け合わせたものである。

アメリカは帝国主義国家であり、軍事による世界征服をたくらみ、低俗な文化で人民を堕落させ、各地の原住民を虐殺し、ユダヤ資本に牛耳られており……。聞くだけ無駄な意見の数々。

アメリカの国家の歴史を少しでも知っていれば、アメリカがなぜそう動くかはわかるようになる。


日本はアジアの懸け橋にならねばならぬ。アメリカは世界に覇権を伸ばしており、悪逆非道の数々を行っている。

これだけ聞けば、まるで戦前のようだが、実際は今の日本の反戦主義者の主張の抜粋でしかない。

彼らは大日本帝国を嫌っているが、その実際は大日本帝国の、大政翼賛会の残党でしかない。されらは戦争の後変わる機会を失い、菊の御紋の彫られた銃を菊の御紋のついた日本国憲法に変えてアメリカといまだに戦争をしているのである。彼らが望むはアジアの解放、汎亜細亜主義世界の樹立、アメリカ・欧州白人帝国主義の打倒。

彼らの中には、ネット右翼を全く笑うことのできない、異様なまでの右翼的価値観が根付いているのだ。

日本の犠牲でアジアが豊かになるという考えもそう。

アメリカや欧州列強に反対するのもそう。

天皇陛下のお言葉を引用して黙らせようとするのもそう。

彼らの方が『戦前と同じような』『偏狭なナショナリズム』に凝り固まっているのではないだろうか?

私にはそう見えてならないのだ。

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