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「ろくでなし」はどっちだ。

いま、サイコーにホットなクズ野郎どもの話。

だが、『野郎』じゃないんだよなぁ。

メンタルの図太さと面の皮の厚さは野郎並みだが。

「ろくでなし」を手元の電子辞書で引いてみた。

「のらくらしていて役に立たない者」とある。

日本語の罵倒表現では最も多用されるものの一つだ。

それこそ、英語のmotherfuckerなみであろう。大抵、原義を度外視した罵倒と言う点でも通ずる点がある。


さて、ろくでなし子という芸術家が逮捕された。

自分の女性器の3Dデータを配布したためだ。

この事件は今、妙な雰囲気になってきている。

まずはじめに、この「ろくでなし子」なる芸術家の裏には北原みのり女史が関わっている。

この北原みのり女史はポルノ禁止主義者の急先鋒であり、日本のフェミニストの代表とでもいえる人物である。現代芸術家、会田誠の展覧会に対し「性暴力を肯定している」という抗議にも名を連ねている。

彼女やそのシンパは弁護士の選定において、ポルノ擁護派ではなく人権派を選ぶように言っていたのだ。

そこにはこうあった。「この事件をポルノ擁護派に利用されてはいけない」


日本の法には「法の下の平等」がある。法は行為にのみ影響し、その他のステータスに影響されないと言うものだ。

たとえば、物を盗んだとする。この場合、盗んだものが10円のうまい棒だろうが10億円のダイアモンドだろうが、ホームレスだろうが国務大臣だろうが、ブサイクだろうがイケメンだろうが、その盗むという行為そのものによってのみ罪状と刑は決定する。ここに、裁判官や時に裁判員による量刑判断が生じる。

私が東京都青少年保護育成条例改正時に思ったのは、法の下の平等に反する可能性があると言うことだ。創作物である以上、漫画、アニメ、ゲームを狙い撃ちするのは法的にどうかと言うことである。やるなら、小説、ドラマ、絵画、彫刻も取り締まるべきだというのが私の価値観だ。

閑話休題。さて今回の場合、法の下の平等の観点から見て、どうだろうか。


北原みのり女史の言い分では、ろくでなし子は「性感染症などの啓もうを目的として芸術で表現している」というが、これはまず絶対に加味されないし、されてはいけない。逆に見苦しい言い訳として量刑を悪化させるだけだろう。

また、性暴力を肯定しているという会田誠や漫画家への政治的、法的批判はもろに跳ね返ってくる。会田誠の絵を違法化したいというなら、日本の法律上問題のない絵の違法化と言う「変なこと」になる。

そんないい加減な認識の人間が弁護士に意思を伝えると、事態はいっそうこじれる。

漫画家や創作家たちが北原みのりをスケープゴートにするのが目に見える。「彼女のような人間を無くすためにも、法改正を」。はしごを外された挙句ボロ雑巾のようになるまで使われ続ける、政治的敗北だ。

日本のエロ漫画では局部には最低でも線が入っているし、全年齢向けだと局所はぼやかしている。だが、ろくでなし子はぼやかしもしていない女性器を芸術作品として展示した。

ここでは芸術的価値と言う概念は度外視され、どの程度表現したかが問題となる。局部描写率は、一般向けのエロいシーンのあるマンガでは靄で隠れているので0~35%、1000円位する黄色いゾーニング表示のあるものでモザイクから黒い線で50~99%となるだろう。なおエロゲーなどでは50%程度となる。だが、ろくでなし子は描写率100%。しかも立体物。エロ漫画や自慰用品すらやってない禁止領域に突き抜けた以上その報いは必要だ。最近のエロ漫画も、局部描写の再締め付け直しで厳しくなったが、それを批判する文脈でろくでなし子が使用されるだろう。


この世の中、女性エロ漫画家、絵師と言うのがそこそこいる。しかもみんな自発的に志したものだ。

誰かが書けとも言わず、自分たちで書き、共有しようとし、それをビジネスにまで昇華したものがいる。例えば狗神煌がその代表格だ。(電撃萌王2014年8月号参照)

前々から言っているが日本のフェミニズムの意識は古いまま止まっている気がするのだ。

女性の生き方を広げるのが目的だったはずのフェミニズムが、今、イスラム原理主義も真っ青な世界を作ろうとしている。自由の名のもとに抑圧し、平等の名のもとに侮蔑する。日本のフェミニズムは最もディストピアに近い価値観なのかもしれない。


全ての表現を守ろうとする漫画家たちと、自分たちだけを保護しようとするフェミニスト・人権派連合。

『ろくでなし』は、いったい、どちらだろうか。

迷走するフェミニストには危機感しか感じない。

彼女らは何をしたいのだろう。理解に苦しむ。

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