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明治逢戀帖  作者:
第九章 廻リ巡ル
54/61

 はらりはらりと舞う雪片がまるで桜の花弁にも見えて、千紗は顔を上げた。

 天を仰げば雪が放射状に舞い落ちてくる。柔らかく鼻に乗った小さな塊が融けて、顎を伝い首筋へ落ちた。電線を五線譜にして繋いでいるコンクリート製の電柱が、真っ直ぐ天へと伸びている。

 そびえ立つ十四階のマンションを見上げ、千紗は息を飲んだ。首を大きく傾ける建物は見慣れていたはずなのに違和感が拭えない。

 空に息を吐くと、白い息が灰色の空へ融けていった。

「千紗?」

 名前を呼ぶ声に、千紗はただ上を向いていた顔をゆっくりと元へ戻した。

 千紗は手にした傷だらけのバッグに両手を回し、声の聞こえた方を振り返る。こっちを不思議そうな顔で見ているのは同じクラスの友人だ。

 見慣れた通学路には辛うじて沢山の足跡らしきものが残されていた。

 今はまだ泥の欠片すらない降り始めの雪はその足跡にすら降り積もって真っ白で、千紗のローファーの足跡もあっという間に染め上げてしまう。

 透き通った冬の空気が胸に沁み込んで、体の芯から冷える。バッグを小脇に挟み、手袋をしていない両手を摺り寄せた。

 街路樹にはまだ枯葉がちらほら残っている。その上にうっすらと乗った雪が、重さに耐え切れずに落ちた。声すら総て吸い込んで事故の日に比べると随分静かな夕暮れだ。厚い雲に遮られて、眩しい夕日は見えない。ただただ重く低い灰色の雲が空の全面に広がっている。

 明日は雪、今日の夜から天気は荒れるらしい。たったひとりで見ていた朝のニュースでアナウンサーが言っていた。

 今日の朝食は食パンにコーヒー。塩辛い漬物もご飯もない朝食から離れて久しいのに、千紗はまだパンにはマーガリンもジャムも塗らないでいる。

「早く行こうよ。寒いって」

 さくさくと雪を踏み締めて歩いてきた友人が、天を仰いだまま止まっている千紗に訝しげな声を掛けてきた。友人の口からも同じく白い息が漏れている。

 季節は冬、夏も秋もあっという間に過ぎてしまった。時は傷を癒すと聞くけれど、千紗にはまだその兆しが見えないままだ。

「……あ、うん」

 千紗は天を仰いだ言い訳を探して言い淀む。

 何か上手く話題を作りたいと思うのに、心の中が違うもので一杯になって思いつかなかった。結局、出てきたのは無難な天気の話題だ。

「今日は……一段と寒いね?」

「まぁね。一月だし、まだ真冬だから。あ、千紗もしかして傷痛むの?」

「ううん」

 八月のあの日の事故で負った傷だ。

 咄嗟にハンドルを切った車は、あの日の馬車の様に千紗の脇ぎりぎりを擦り抜けた。車のバンパーに擦り首から肩にかけて切れた傷の出血と、その衝撃で道路脇の街路樹に頭を叩き付けられた所為で二週間、入院する羽目になったものの今や何も問題はない。一応、体だけは完治に近かった。

「大丈夫。もう痛くないよ」

 千紗は微笑みを浮かべ、小さく首を振る。

 返事を聞いて、あからさまにほっとした表情を友人は浮かべた。あの事故の後から千紗の様子が違うことに、友人は口には出さずとも気付いているのだろう。極端に口数は少なくなり、教室で窓の外を見ながらぼーっとすることが多くなっていた。

 それをクラスの人間は頭をぶつけた後遺症だと思っている。周りからはまるで壊れ物のような扱いだ。

「……良かった。どこか痛かったのかと思った」

 じゃ行こう、と友人は千紗の腕を引いた。促されるままに千紗は一歩踏み出す。

(そっか)

 千紗はどこかに行っていた記憶を掘り起こす。今日は珍しく遊びに誘われていたのだった。

 あの事故の日鳴った電話は母だった。祖母が急に意識を失ったと血相を変えて連絡してきたのだ。今、会いに来ないともしかすると二度と会えないかもしれない、千紗は不本意ながら祖母の病院に救急車で運ばれ、治療と検査の後祖母に会った。

 あの日から祖母は目覚めない。ただただこんこんと眠っていた。繋がれた生命線が祖母を生かせ続けている。

 病室には既に他界している祖父の写真が窓側に飾られている。写真の前には小さな湯呑が置いてあって、中身を毎日入れ替えている。仕事で忙しい母に変わり毎日学校帰りの千紗が病院に寄り、お茶を煎れるのが千紗の仕事だ。退院してからというもの欠かしたことはない。

 珍しく母は今日、仕事が休みなのだという。たまには息抜きをしておいで、という母の提案に戸惑いながらも千紗は頷いた。母親もまた共に過ごすことは少なくとも千紗を気遣っている。

「今日はさ、結構良いメンバーだよ」

 友人は今日遊ぶ相手の話題に忙しい。身長が高くて、優しい。スポーツが出来る。勉強が出来る。好きになるポイントは何も千紗の心を揺らさなかった。その理由は千紗が一番よく知っている。

 遊び慣れているメンバーなのだという。今日は十人を超える大所帯になるらしい。騒がしいけど楽しくなりそうだと友人が笑って、千紗もその笑みに倣った。

 うまく笑えている自信は無かった。

「……うん」

 誰もいない遠く雪に曇る向こう側を見遣り、一瞬黙り込むと千紗は頷いた。

「楽しみだね」

 箱の様に乱立するマンションやビルの中、アスファルトの道路が真ん中を突っ切っている。金属の塊にしか見えない自動車は怪物のような雄叫びのクラクションを上げ、激しいエンジン音を聞かせながら走り去っていった。

(知っている場所なのに初めて来た場所みたい)

 人は手元を見ながら俯き、足早に歩く。季節が冬ということもあって子供の遊ぶ声も聞こえなかった。ここはまるで明治時代とは異なる場所だ。

 何もかもがどうしてか過剰過ぎて、窮屈に感じてしまう。大好きだったパンも、いつも買っていたスナック菓子も味が濃くて甘過ぎたり塩辛かった。眠る時に聞こえる車のエンジン音も、救急車の音も、踏切の音も総て耳に障り、静かな夜が懐かしかった。

 布団に丸まるとどうしても探す。風が庭木を揺らす音、聞こえる小さな本の頁を捲る音。聞こえる遠吠えに倣い次々と吠える犬。

 優しい声と少し偉そうな声。

 それに―――どこか険のある意地悪な声。

(こんなに遠くに来てしまった)

 白い雪を眺めながら、千紗は内心で嘆いた。

 夏が過ぎ、秋が過ぎた。あっという間に冬が来て、あと一か月弱で千紗は十八になる。あの事故が起きる前まではプレゼントのことばかり考えていた誕生日だったはずなのに、今はその時を考えるたび胸が苦しくなる。心が空っぽで空洞の胸に冷たい風が吹き抜けていく。

 未来は確約されたのだ。だからこそ、千紗はここにいる。

 退院した千紗がまず最初にしたことといえば、ネットで明治時代の本を検索することだった。縋り付くようにして探した名前は誰も見つからず、千紗は先生の名前すら知らないことに気づいたのだ。

 ―――明治三十七年二月から日露戦争。

 ―――大正七年からシベリア出兵。

 ―――大正十二年の関東大震災。

 未曽有の激変が千紗の去った東京を含む日本へ訪れる。縋り付くように読んだ教科書も本も表面を軽く説明するだけで、知りたいことを何も教えてくれない。

 千紗は毎日図書館に通い詰めた。何でもいい、彼らが生きていたという証拠が欲しかった。でも、どんなに調べても何も見つからなかった。まるであの暑い日も、激しい気持ちも総て夢みたいだ。

(本当にあったことだなんて、証拠なんて何もないの)

 触れた指も聞いた声も鮮明に覚えていても、千紗には何も残されていない。ただうっすらとした思い出と、胸に残る痛みだけだ。

 さくり。横で雪を踏み締める軽い音が聞こえた。今日は特に寒い。雪も、降ったそのままの状態でうっすらと積もっていった。

「千紗もさ、そろそろ彼氏作っちゃいなよ」

 千紗は彼氏という言葉に違和感を感じながら、唇を上手く動かして笑って見せる。正直もうそんなことどうでも良かった。

「そう……だね」

 あの時代にそんな軽い関係があったのかは分からない。いつでも恋愛は真っ直ぐで重かった。上流階級の令嬢は人形のように生きる。恋は彼女たちには禁忌だ。今にも触れそうな指も傍にいきたくて伸ばす手も躊躇する。そんな時代だった。

(気持ちを軽々しく口に出すことも赦されなかった)

 伊沙子の想い、先生の想い。史郎の想い、久美子の想い。そして、千紗と桐野の想い。千紗が触れた沢山の激しい感情は胸の奥を騒めかせ、楽しかったはずの友人との話が軽く思えてしまう。

 騒めく心を隠すためにやっと笑えるようになったのはいつからだっただろうか。千紗は降り止まない雪が積もる街路樹に視線を移す。

 横を歩く友人が弱々しく頷いた千紗に笑い掛けた。

 愛らしく編み込んだ髪の毛がふわりと宙に舞う。僅かに色づきのリップを塗った唇が楽しそうに口笛を吹いた。同じ歳だというのに、伊沙子に比べてずっと友人は幼く見える。

「今日の出会いで運命の人を見つけちゃえ」

「ふふ」

 千紗は思わず笑った。無邪気な言い方が胸に突き刺さる。

「見つけ……られるかなあ」

「見つけられるよ。千紗は可愛いんだから、出会いなんて向こうからすぐ転がって来るって」

 そうならいいのに。千紗は奥歯を噛み締めると込み上げる涙を堪えるために目を見開き、ばれない様に天を仰いだ。

(本当に忘れられるの?)

 雪が満遍なく顔に乗り、あっという間に融けていった。

 融けた雪は頬を伝い、熱い水滴と混ざり合い顎へと次々と流れていく。堪え切れなかった目から次々と滴が垂れ、千紗は鼻を啜るとコートの袖で涙を拭った。

 足を急に止め上を向いたままの千紗を心配しているのだろう。横からおずおずと覗き込んだ顔が出てくる。

「……千紗? 泣いてるの?」

 鼻の先はきっと赤く染まっている。千紗は熱い瞼に力を入れると涙を堪え、俯いた。

「やっぱり……今日は帰ってもいいかな? おばあちゃんに逢いたいなぁって思って」

 赤い兎の目をハンカチで拭うと、千紗は怖々とこちらを向く顔に笑いかける。

 祖母の容体があまり芳しくないと誤解したのだろうか、友人は思ったよりもずっと快諾して千紗の背中を慰めるように軽く叩いた。

「……いいよ、おばあちゃんによろしくね。勿論、おばさんにも」

 手を振り去っていく友人の背中を、千紗は黙って見送る。耐えられない喪失感に震える手を小さく振った。

 


 からりと横開きのドアを開けると、母親はいなかった。

「……もう、おばあちゃんをひとりにして」

 千紗は小さくため息をついて、病院に入る前に脱いだコートを軽く丸めると使われていないベッドの端に置いた。小さな座面の丸いパイプ椅子を引き摺り、眠る祖母の横に腰掛ける。枕に頬を付けて覗き込むと、規則的な呼吸をして祖母は眠り続けていた。

 苦しそうな様子は無く、むしろ気持ち良さそうだ。

「……おばあちゃん」

 千紗は返事が無いことを知りつつ呼び掛けた。

 布団を掛けた胸が静かに上下している。点滴の滴が落ちるのを枕に頬を付けたまま見遣って、千紗は額にかかった祖母の前髪を人差し指で優しく避ける。

(……おばあちゃんがいる未来を選べて良かったんだ)

 間違いのない未来で良かった。千紗は張り裂けそうな胸の内を敢えて無視した。

 眠る祖母は突然起き上がって冗談だとふざけそうだった。眠り顔を見て千紗は笑みを溢す。小さな頃、嫌というほど祖母の悪戯好きには驚かされた。影で隠れるのも、突然電気を消されるのも、歩く千紗の足首を突然握ることもあった。

「まるで子供みたいだったな」

 千紗は小さく噴き出すと、祖母の頬を撫でる。

 骨と皮だけになった祖母の頬、決して太っているわけでは無かったけれど今や唯一肉付きの良かった祖母の頬は痩けていた。その頬をゆっくりと撫でる。

 昔話をしよう、千紗は口を開いた。

「おばあちゃん、私ね。凄い体験をしたんだよ」

 思い出だけは鮮明だ。辿りながら、瞼を瞑る。

「ひいおばあちゃんの代わりに、私が明治時代で生きていたの」

 最初は戸惑った。違う生活様式に、那美子に教えて貰うまで千紗は湯ひとつ沸かせることが出来なかったのだ。くつくつと千紗は笑う。着物の着方に困って朝起きることが出来なかったこともあった。

(あれは次の日の朝)

 初めて行ったビアホール、日比谷公園。余りにも違いすぎる考え方の違いは、時には頑なだと思うこともあった。

「先生って呼ばれる人はね、とても変な人でいつも本を手離さないの。ご飯を食べる時も、トイレに行く時もいつも本を読んでいるの。でもとても繊細で優しくて……弱くて悲しい人」

 先生は伊沙子の幸福を誰よりも願っていた。伊沙子の意思を尊重し、望まぬ未来を求めなかった。あれからの未来に、伊沙子と気持ちが伝わったのだろう。そして祖母である弥千子が産まれた。

 千紗は祖母の鼻先に人差し指を乗せて、微笑む。

「先生にあんまり似てないね、おばあちゃん」

 我慢が出来ないで声が震えた。ほろり、涙が零れ鼻を越えるとシーツに沁み込んでいく。

「そうだ。金田さんっていう人にも会ったの」

 人の顔を見るなり悲鳴を上げた。妖怪呼ばわりして、千紗が憤慨すると言い返す様が可笑しかった。桐野と金田の繋がりは文句を言いながらも強固で、互いに実直だった。

「那美子さんは金田さんのお姉さんでね、姉弟でとても仲がいいの。金田さんは……不思議な人。掴みどころがなくて、何もかも分かってるみたいに見えたかな? 凄く助けて貰ったんだよ」

 思い出すと懐かしくなる。声を出さない様に咽喉に力を入れると、唇から変な声が漏れていく。

 触れた指先を思い出した。戸惑うように先だけ触れて、ゆっくりと握る優しい手。決してそこから先は踏み込むことをしなかった。

 どんなに想いを捧げても、いつか別れてしまうことを知っていたから。

「……私ね、おばあちゃん」

 どんなに抑えても、溢れ出る想いがある。

(怖いと思っていた顔を、いつからか正面から見つめることが出来るようになってた)

 電気を付けていない病室は、日暮れを迎え少しずつ暗くなっていく。薄闇の中で千紗は祖母だけに静かに想いを打ち明ける。

「私ね。好きな人が……いるの」

 震える唇で小さく名前を呼んだ。渇いた唇から小さな吐息が漏れていく。枕に付いた目じりから次々と涙が沁み込んだ。

 思い出すのはいつも眉を不機嫌に寄せる顔と、睨み付けるように目を細めた顔。

 ―――千紗を見詰める真剣な顔。

「厭味ばっかり言って、ちっとも本心を見せてくれないの。ビアホールでちょっと小皿の料理多く食べただけで怒られるし、お饅頭を沢山食べたら太るって言われるし。口を開いたら逆撫ですることばかり言うの。優しくなんかない、いつも偉そうで。何も分からないって言ってるのに、すぐ嫌なことを言って私を突き放すの」

 千紗は肩を震わせて笑った。目を細めると涙が何粒も零れ落ちる。

「……桐野さんとはいつも言い合いばかりしてた気がするなあ」

 病室で過ごした間、二度と手の届かないことを思い知って千紗は布団に顔を押し付けて何度も泣いた。

 記憶の最後で、桐野は史郎に殴られ蹴られふらつきながらも、まだ千紗を助けようと身を起こしていた。そんな桐野の前で千紗はベランダ向こうへと身を翻したのだ。

 伊沙子の無事は祖母と千紗の母、それに千紗の存在で確認することが出来る。それなのに桐野のあの先が分からない。遺したたった二通の手紙を胸に桐野はあのあとどうなったのか、それが分からない。

 それがただもどかしく、苦しい。

「でもね、おばあちゃん」

 千紗は震える声を漏らした。布団を掴む指の爪が、強く握り過ぎて血の気を失っている。

「……助けて欲しいときはそばにいてくれるんだ。優しいことは何も言ってくれないのに……黙って傍にいてくれるんだよ」

 どんなに願っても胸に入れた手紙を持ってくることは叶わなかった。

 角ばった癖のある文字、手紙に名前を呼んで欲しいとわざわざ悩んで書いたのに、結局最後の最後にしか呼んでくれなかった。切羽詰ったように呼ばれたあの声を思い出すと、抑えられない。

「……逢いたい」

 あの日から四か月強、ずっと堪えていた言葉が千紗の口から漏れた。一度口に出してしまうと抑えが利かなくなった。想いが次々と千紗の口から溢れ出してくる。

 千紗は枕から顔を起こすと、涙塗れの顔を両手で覆った。

「逢いたい、逢いたいの。……逢いたいよ、桐野さんに逢いたい」

 何度も言う度に、声が悲鳴になり想いが込み上げた。

 戻れないことは知っている。交差した糸は解け、元の位置へと戻ってしまった。今の千紗はまるで現代に放り出されたストえる(レイ)シープだ。

 運命の人なら桐野が良い、でもどれだけ願っても叶うことがない。

 高い建物がそびえ立ち、文明の利器が普及した明治時代とは全く違う現代が千紗の生きる場所だ。ただ過ぎてしまった過去を嘆き、もう歴史にも残らない人間が健やかであったことだけを祈るだけだ。

「私……明治に戻りたい。桐野さんに逢いたい……逢いたいよ……」

 千紗は明治時代の癖で思わず胸元に手をやった。桐野の手紙がずっと仕舞ってあった。今はもうその感触は無く、触れるのは制服のブレザーのポケットだけだ。

「きり、のさん……っ」

 ベッドの端に両手を置いて、千紗は大きな口を開けた。咽喉から掠れた声が漏れ出て頬を伝わずに涙は床に落ちていく。ぎりとシーツを握り締めた。唇が戦慄き、噛みあわせようとする歯がかちかちと鳴った。

 どうして別れても生きて往けるのだと思ったのだろう。後悔してももう遅かった。

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