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その日は朝からなにも変わったことのないふつーの一日だった。
朝6時に起床し、朝食を作り、超絶美形のうちの家族を起こしに二階へ。なぜかうちの家族は、揃いも揃って低血圧だ。低血圧って美形のステータスなんだろうか。まぁそんな感じで家族起床。
「おはよー。父さん母さん。」
「ん。」
「おはよう。透ちゃん」
父さんと母さんに挨拶をすると、短いながらも返事が返ってきたので安心した。ひどいときには、寝ながらご飯食べるからね…この人達。
と、そうこうしてるうちに後ろに重みが…
「郁兄ー?抱きつくのやめて。私いま味噌汁ついでるんだけど…」
「んー?透は今日も可愛いいなぁ。」
話にならないので応援をよぶ。
「修兄ー!郁兄どうにかして!」
これでよ…
「郁斗、離れろ。俺の番だ。」
何を言ってるのだ。こいつは。そこから意味不明な喧嘩をし始めた二人を無視して、ご飯を食べて学校へ。
そして、なんやかんやで帰宅。私は剣道部なのでいつもは遅くなるのだけれど、その日は休みで早く帰ることができて、ホクホクした気持ちで帰ってきた。
いや。帰ろうとした。いつもの道をたどって最後の交差点にたどり着いたとき、それは起こった。五歳くらいの男の子が、ボールを追って道路に飛び出す。正確には、トラックの前へ。
あっ!っと思った時には体が動いていて、男の子を押し退けていた。目の前に迫るトラック。
周りの騒音。そのすべてがゆっくりに聞こえて、私は場違いに思った。あぁ…なんかこれが走馬灯ってやつかな?いや違うか。思い出してないし。じゃあなんて言うんだろ。これって。
近づくトラックのライトが眩しくて目をぎゅっと瞑った。最後に浮かんだ家族の顔にごめんねと囁いて、私の意識は真っ暗な闇に吸い込まれていった。




