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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第2章 有田中井手の戦い編

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第3話 予言(予告ともいう)

1516年(永正13年)9月初旬。


 多治比猿掛城の麓にある山畝村。今年の春に俺はこの村に隣接する場所にあった荒れ地を元就さまから借りて畑を作った。

 植物生育のスキルでチート栽培をしていた唐芋(サツマイモ)である。村人に僅かながら金を払って収穫を行ったところ、量にして1230キロ弱。耕作面積に対して多すぎる収獲量と甘味に対してチョットした騒ぎになったよ。俺は、収穫した唐芋(サツマイモ)の6割を税として元就さまに献上したいと打診したら、面会することが叶った。


「面を上げよ」


 上座から声が掛かる。顔を上げると含んだような笑顔を浮かべる元就さま。小姓がひとりいる以外には元就さましかいない。非常に悪い予感がする。


「広澄の進言であろうな。吉田郡山城の大殿から先日の五龍城攻めでの謝状が来ておる」


 元就さまから書状を受け取った小姓が、俺の元にやって来て差し出す。

 「有難き幸せ」といって俺は、謝状を受け取る。傭兵にとって国人や大名の謝状は、次の職場への推薦状でもある。まあ必要ないけどね。


「で、献上品とは何か?」


 元就さまに促されたので、献上用に風呂敷に包んだ3本の蒸かした唐芋(サツマイモ)を差し出す。小姓がするすると俺の側にやって来て、風呂敷を受け取ると、包みを開き中を確認。元就さまの元に運ぶ。


(それがし)が、明の商人から買い求めた野菜の中にあった芋です。今年300貫ほど収穫出来ました」


 300貫・・・1120キロという量に元就さまの顔が驚きに変わる。小姓が、やや冷めた蒸かし芋を両手で割り、毒見のため口に頬張る。みるみる顔が笑顔に・・・そうだろうそうだろう。甘いは正義だ。「甘くて美味しいです」という小姓の言葉を受け、元就さまが蒸かし芋に手を付ける。元就さまの顔も喜色にあふれる。


「この芋、唐芋といいましょうか(流石に薩摩芋の名称は使えない)、唐芋は栽培が簡単で、痩せた土地でも今回のように大量に収獲することが期待できます」


 実際、種芋から芽が出て蔓になったところで蔓を切っても、種芋から再び芽が出て一か月ほどで同じぐらいの長さの蔓に成長し、どちらの蔓でもサツマイモが栽培できるというタフな作物である。


「ほう。それは飢饉に備えられると?」


「はい。あと甘いので、余れば酒造に転用できます」


 酒造に転用できるという言葉に元就さまはパンと太腿を打つ。そして、人を呼ぼうとしたので慌てて制する。


「その前にお話が・・・(それがし)、少々占星術を嗜んでおりまして」


 そういうと元就さまは俺の話を聞く体勢になってくれる。この時代は占星術による予言というのは結構な影響力があるから、一応、こうして聞いてくれるのだ。


「昨日、天を見るに、北極星より北西の空に向かって星が流れました。死の予兆です」


 そう。元就さまの兄である興元さまがアルコール中毒を拗らせて急死するのは今月の25日である。一応、元就さまには事前にお知らせするべきだろうと、占星のお告げという事にして告げることにしたのだ。


「郡山城の兄上、大殿が・・・か?」


「おそらくは。それと、星が流れるのに合わせ、南の空が騒がしくなりました」


 元就さまの顔が一瞬にして固まる。大内氏の後ろ盾で安芸北部の国人衆を束ねる毛利の頭領が15年もせず再び代替わり。(興元さまが毛利家を継いだのも8歳のとき)しかも嫡男である幸松丸さまは2歳で、弟である元就さまも20歳の若者。

 幸松丸さまと元就さまの間で家督争いが起きる可能性もある。なら元守護で最近大内氏から独立し安芸南部で絶賛勢力拡大中の武田元繁が動かないハズはない。そのことに思い当ったのだろう。


「大殿の死を回避することはできないのか?」


「戦での死なら多少の手は尽くせますが・・・」


「ふむ。既に病を得ての死は覆せぬか」


 元就さまの言葉に俺は無言で肯定する。何とかなるなら何とかしたいけど、ガチャで出た薬(金)の内服薬では壊れた肝臓までは治らないんだよな・・・


「・・・どうすればいい?」


 いきなり弱気になる元就さま。いいのか?


「本家に正統な嫡男がいるのに、分家が本家当主の地位を簒奪したとなれば、敵に付け込まれるだけかと・・・」


 俺の言葉に元就さまはフッと笑う。え、なにか変なこと言った?


「三四郎。お主何者だ?ただの傭兵ではあるまい」


 言われて、やらかしたことに気が付く。たかが雇われ傭兵ごときが、ちょっと活躍して、作物を献上するぐらいで簡単に組織のトップにサシで御目通りできるわけない。少しは疑えよという話だ。さて、出てくるのは鬼か蛇か・・・


「お主がいう里とやらに人をやって調べさせた。結果は言うまでもないだろ?」


 言われて、畑の警邏任務についていたニホンオオカミから迷い込んだ村人を追い返したという報告を受けていたことを思い出す。あれ、元就さまの間者だったのか・・・


「敵か味方か、それだけ聞こう」


「み、判断は殿さまにお任せします」


 味方と言いかけて判断を元就さまにぶん投げる。この場で敵だ味方だと言っても信用される訳ない・・・


「暫くは監視を付ける」


 とりあえず危機は去ったらしい。

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