第10話 嫡子三四郎の元服
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- 1539年(天文8年)6月 -
俺の嫡男である三四郎が、研修航海のすべての課程を無事終了したので、それを機に元服することなった。
先日12オになったばかりなのに元服するというのはちょっと早いかな?と思ったけど、俺の後継として幼い頃からビシバシ鍛えられたからか、はたまた生まれ持った才能からか、座学では上から数えたほうが早く、戦闘技術も同期では真ん中より少し上ぐらいの実力があるらしい。なら、元服させて次の指揮官の育成課程(いわゆる士官学校)に進めても良いのではないか?ということになったのだ。
なお、元就さまの三男である毛利徳寿丸くんも元服して毛利隆元と史実では長男の毛利義元くんが名乗るハズだった名前を名乗ることになった。
「むふーん」
鼻息荒く三四郎の頭に烏帽子を乗せたのは、足利幕府最後の将軍だった足利天晴さん。実は三四郎の烏帽子親決定にはかなり壮絶な争いがあったらしい。足利天晴さんにはいま畝方と繋げる血縁がないからね。ちなみに、三四郎には生まれたときから元就さまの次女であるしん姫との婚約が決まっていたりする。
「我が名より晴の字を授ける。元晴、畝方三四郎元晴と名乗るがよい」
「はっ」
足利天晴さんが「畝方三四郎元晴」と書かれ足利天晴の名と落款が押された色紙を差し出す。それを畝方三四郎改め畝方元晴が恭しく受け取る。
この遣り取り、これから流行るんだろうなぁ・・・
「本日元服を迎えたことを記念して、これよりー週間、お前にガチャを回す権利。そして出てきた物を所有する権利を授けよう」
「はっ。有り難き幸せ!」
元晴が大げさに平伏する。ガチャの存在そのものは教えていたけど、ガチャをする事は許可してなかったからね。
一日目
「ガチャターイム!何が出るかな、何が出るかな、ちゃらぁららら、ららららぁ、ぽちっとな」
元晴が、怪しいリズムを口ずさみながらガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
SR 三河文殊正真作 大笹穂槍
ほう。三河文殊正真というと本多忠勝の愛槍である蜻蛉切を造った藤原正真かな?(諸説あります)。ただ、三河文殊正真の三河文殊というのは鍛治師の屋号っぽいので、これが藤原正真の作とは限らない。銘が蜻蛉切でない時点で違う何かだろう。
「これは良い槍だ。大事にしなさい」
二日目
「ガチャターイム!何が出るかな、何が出るかな、ちゃらぁららら、ららららぁ、ぽちっとな」
昨日に続き元晴が、怪しいリズムを口ずさみながらガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
R 黒い胴丸
胴丸というのは剣道でいう胴と腰を覆う形の垂が一体化したような鎧。毛利軍では、主に5人ぐらいの小隊の隊長クラスから、小隊が5つ集まった中隊規模の隊長クラスの人間が装備するような鎧である。まあ、12才の元晴の体格に相応の普通のサイズよりは一回り以上は小さいサイズだが。
「誂えたような大きさの鎧だな。期間は短いだろうが大切に使いなさい」
三日目
元晴は、昨日とは違うリズムを口ずさみながらガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
SR ピッケルハウベ
・・・頭頂部にスパイクのついたプロシア・ドイツ帝国を中心として使っていたヘルメットだな。胴丸との組み合わせはかなり微妙・・・でもないか。
「全体の材質は鉄。前面の立物は、当分は矢除けのためだけの鋼ですね」
拳で軽く叩くと金属っぽい音が返ってくる。
「どうやらガチャ箱なりに三四郎を祝っているようですね」
四日目/五日目
C 手甲
C 脛当て
フィーバータイム終了のお知らせ・・・かな?まあ、戦装束が一式揃うような感じだったから、レアな手甲とかスーパーレアな脛当てとかなんぞ?って話になるから別にこれでもいいんだけどね。
六日目
昨日一昨日のショボい結果から気を取り直して元晴はガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
R 黒い羅紗の陣羽織
陣羽織は基本的に防水防寒具で、鎧の上に羽織るもの。素材は動物の毛皮。羅紗は古くは奈良時代に、新羅を通じてモンゴル辺りから伝来した毛氈と呼ばれる羊毛の織物だ。もっとも、羅紗が一般的に出回ったのは南蛮貿易によって。つまり、このレア判定はお値段的にということだな。
「この陣羽織、素材は蒙古の羊という動物の毛ですね。大和(奈良)の正倉院にも所蔵されていると聞きます。油断すると虫に喰われて穴を開けられます。保管に気をつけなさい」
七日目
元晴が元服祝い最後のガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
SSR こしぴっかり(寒冷地仕様)
ドスドスと落ちてくる俵。この微妙で多分アウトっぽい名称のモノは、もしかして米の籾種なのか?
「米のしかも脱穀されていない籾ですね。これは、この地より以北で栽培せよという天啓でしょうか?」
俵のひとつをこじ開けて、中身が籾種であることを確認した俺は、元晴の顔を見る。
「この米の栽培を監督しなさい。週に一度、この地での耕作の経過観察を纏めるだけのお仕事ですから学業に支障はないでしょうし、毛利ではなく臥茶の実験としますから気楽に」
「はっ!承りました」
元晴は勢いよく頭を下げる。プレゼントと簡単なお仕事の斡旋。良い元服祝いになったと思う。
次章「北陸三国志」




