第5話 能登陥落
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- 1539年(天文8年)3月 下旬-
― 能登(石川県北部、能登半島)七尾南湾 角盤級 球磨-
能登の守護である畠山義総くんが、降伏する形で毛利氏に身を寄せた事で、能登侵攻の口実を得た毛利軍は、加賀から兵二万。佐渡から戦艦1隻を編成して攻め込んだ。
この動きを察知した遊佐総光は、早々に七尾城に籠もり徹底抗戦の構えを見せる。その際、毛利氏側は守護の畠山義総くんを保護し、速やかに七尾城を明け渡すように勧告し、遊佐総光は畠山義総くんは七尾城にいると主張し明け渡しを拒否した。
まあ、あちらは中身以外は本物を用意出来るから影武者を立てられる、こちらは中身しか用意出来ないうえに本人は元就さまに謁見するために大坂城に行っていているから、こちらからの勧告にさして効果はない。
『1番、目標への着弾確認』
伝声管を通して、マストの上にいた観測員から報告が入る。もっとも観測員は、弾が命中したのを目視したのではなく、弾が命中したのを目視した中継観測員の合図を見ただけだが。
ちなみに攻撃目標は、本丸のある石動山の山麓を流れる木落川にある自然に形成された崖の高さを基準に作られた 惣構え・・・いわゆる城郭の大手門だ。
「一番に照準を合わせ、ガンガン撃ち込もうか!」
『御意!』
元気な返事が返ってきた5分後、ドドン!ドドン!!という破裂音が辺りに響き、そしてそれは10分ほど続く。
『支援停止の要請です』
「判った」
マストからの報告を聞いて砲塔に繋がる伝声管に向かって砲撃中止を命じる。砲撃開始と停止の命令は俺か艦長にしか出せない命令だからだ。
間髪入れず砲撃に繋がる伝声管から『御意!』と返ってきたので、俺はアイテムボックスから戦闘拳銃を取り出し空に向かって撃つ。パンという音が響き、煌々とした光源が空を漂っているのが見える。
「これが毛利の力・・・」
畠山義総くんが毛利氏に降伏したことで、毛利氏と敵対する理由がなくなった長尾氏が、ならばと能登奪還の手伝いを申し出てきたので船に搭乗させていた長尾氏の家臣の柿崎景家くんが、さっきからうわごとのように呟いている。チョットばかり刺激が強かったようだ。
雨なんか降りそうにもない天候なのに、突如雷鳴が轟き高屋敷の大手門が崩壊。崩壊したのは毛利軍にいる陰陽師が雷を落としたからだという噂を流した。
また、毛利軍に降伏するなら無碍な扱いはしないこと、城から逃げるなら後は追わないという噂も流した。これは畝方元近が事前に配下の御伽衆を城下町に潜入させ、砲撃開始と共に城に住民を城から逃がすためにばら撒いたものだ。噂はあっという間に広まり、崩壊した大手門から大量の脱出者が出る。
「畝方殿の読み通りか。まあ城攻め三倍というから、農民であっても守備兵が抜けてくれるのは助かるかな」
双眼鏡で崩壊した大手門を眺めていた朽木貞綱が愉快そうに笑う。どんなに堅牢で巨大な城でも守備する者が少なければ力押しでも攻略は容易い。
「武器を捨て降伏する者には慈悲を敵対する者には死を」
「「「はっ」」」
朽木貞綱の号令の下、大手門を潜り高屋敷へと攻め込む。「抵抗するな」「武器を捨てろ」「手を頭の後ろに組め」「膝立ちでその場を動くな」戦意を失った畠山兵いや遊佐兵が抵抗を止めて降伏し、武装解除が済んだ者から城郭の外へと出されていく。
「思った以上に抵抗が少ない・・・」
遊佐兵の武装解除を眺めながら朽木貞綱は首をひねる。
「朽木殿。本丸辺りで黒煙が上がっております。地図からして遊佐屋敷辺りかと」
部下の一人が駆け込んできて山頂を指さす。「何があった」と朽木貞綱が尋ねると、長英連や平信光の部下だった者が蜂起したという。このまま冷遇されるか見せしめとして粛清されるかもしれない長英連や平信光の部下たちにとって毛利軍の襲来は、討たれた主の名誉回復と自分たちの身分を得るための好機と見たのだ。
「手伝いぐらいはしてもいいだろう。攻撃隊を二百人ほど抽出してくれ。攻めるぞ」
そう言うと朽木貞綱はこの場に残る者と後方への連絡のための指示を出す。こうして難攻不落を謳われた七尾城は一日を待たず陥落するのであった。
時間がかかったわりにこれ一行で良かったんじゃないかという思いががが




