第12話 海が荒れても大丈夫?黄色ではないけどアレが出た
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- 1538年(天文7年)12月中旬-
ー 佐渡(新潟佐渡島) ー
船に積み込んでいた物質の全てを上陸地点に降ろし、北畠晴具さんが加賀(石川南部)に戻ったその翌日から、佐渡の海は大いに荒れ、殴りつけるような雪も降り始め、あっという間に平野部でも50センチ近く積もった。
「何か出るかな?かなかなかなかなヂ!」
死んだ魚の様な目でガチャを回す。というのも、佐渡に上陸してからのガチャ運があまり良くない。出た時は高レアだった物も作れるようになってレアリティがコモンにまで下がったり、出なくなって久しい物までレアリティを上げて出てくるという有様だ。
原因は多分、天候が長期に悪化することで佐渡が本州から孤立し、毛利領から生産品を手に入れることが難しくなったからだと思う。検証したいけど無理だろうな・・・
ただ、鋼鉄、木材、セメント、大量の瓦といった建築素材や2メートル級の木ゴーレムが出たことは助かったよ。これらのガチャ品のお蔭で拠点となる建物がとても早く完成したよ。
毛利氏に臣従して味方となった本間有泰さんの顔色が進捗と共に日に日に青くなっていったけど、なんでだろうね。
がしゃん
SR 潜水艇
長さ15メートル幅1.8メートル高さ3メートルの木でできた巨大な流線型の物体がどこからか目の前に落ちてくる。ただ「潜水艇ってなんでやねん?」というツッコミはしない。潜水艇というか海底戦車的なものは、構想レベルのものだけど史実でもこの時代には既に存在している。しかも考えたのは毛利氏としても馴染が深い村上水軍だ。
更に1614年の大坂冬の陣では、徳川方の九鬼氏が、大坂城の堀に潜行して移動し標的に近づいた後、浮上して標的に対して砲撃を加えたという盲船と呼ばれる船も存在している。
「おっと」
出現しかけた潜水艇に向かってアイテムボックスへの収納を発動する。
「何事でありますか」
俺のガチャを知っているので、何かが起こる事は予想はしていた大内義隆くんが、俺の上げた声で何が起こったのかを確認しに来る。
「久々に大物が出ました潜水艇です」
潜水艇という言葉に大内義隆くんは怪訝そうに顔を顰める。
「ああ、潜水艇とはですね、船が海上を進むが如く海の中を進む船の事です」
「海中を、ですか?」
大内義隆くんの目が、段々とジトっとしたものになる。潜水艇の構造とか知らないとそうなるか・・・
「つまりですね」
机上に置いてある紙を広げて筆を取り、さらさらと簡単な図面を描き上げていく。潜水艇の仕組みは、構造自体は簡単だ。大きさの違う同じ形の箱のような船を入れ子のように配置。外の船にある蓋を開いて外の船と内の船の隙間に海水を注水して重くなることで海中に潜航。逆に逆止弁のついたポンプで外の船と内の船の隙間にある海水を船外に押し出すことで船を軽くすることで浮力を得て浮上するのだ。
「説明からすると、時間が経つにつれ船の中の酸素が無くなったりしませんか?」
おお、大内義隆くん。きちんと勉強してるね。多分、海に落ちて溺れた人を蘇生するための基礎から得た知識だろう。
「酸素が不足しないよう、定期的に空気を取り入れるための筒を海上に上げてポンプで空気を入れ替えるから大丈夫です。潜水艇を動かすための動力はゴーレムを使えば酸素はあまり消耗しません。港が整備されるまでの間は、海上に来た船からの簡単な物資の受け取りと本州との連絡任務に使うだけですし」
「それ以外に運用方法はあるのですか?あとは敵国の湾岸での偵察任務ぐらいしか思いつきませんが・・・」
「一つはその通りです。他にも運用用法はあるのですが、色々と足りてません」
そう。今はまだ通商破壊や対艦攻撃といった任務に従事させる事情は無い。それに海中から海上の船に有効打が与えられる武器も無いからね。
「取り敢えず明日には沖にいる船に行ってくるよ」
誰も見たことのない得体も知れない乗り物に下っ端を乗せて船に近付けたら、船体に毛利氏とうちの家紋とか描いても要らぬ誤解を与え戦闘になる可能性がある。天候の急変とかを考えると、俺が出張るのが一番早く安全だからね。
「・・・御意」
それぐらい判るよね?という無言の圧を掛けると、大内義隆くんは小さく溜め息をついて了承する。情報は率先して取りに行く。とても大事。
村上水軍の潜水艇・・・どう見てもアレです(震えながら)




