第6話 敵船襲来!(なお艦種で演習だとバレている模様)
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- 1538年(天文7年)10月 下旬 -
- 加賀(石川南部) 宮腰湊 駐屯地 -
現在毛利氏が使っている暦は、一太陽年だけを基本用数として日を数える太陽暦法のひとつグレゴリオ暦。まあ、グレゴリオ暦自体は1582年の導入だからこの暦は多分グレゴリオ暦とは呼ばれないと思うけどね。
で、俺はこのグレゴリオ暦を毛利暦と呼び1518年(永正15年)に春分の日を3月21日となるように調整し1520年から正式に導入している。その際、1週間を七日。1月は年始と年末を31日。それ以外の奇数月を31日。2月以外の偶数月を30日。2月は28日として、正式導入した年から4で割り切れる年は閏年とし2月は29日と制定した。
このとき、何故2月だけ短いのか?と問われたけど、春の訪れは早い方がいいからと言ったら納得されたのはいい思い出。ついでに、導入した年から100で割り切れる年は閏年ではなく平年、100でも400で割り切れる年は閏年とするグレゴリオ暦のお約束も導入している。
将来的にグレゴリオ暦が計算の基準とする西暦元年なるか、こちらが導入した毛利暦が基準となるかは、観測したデータのズレ方次第だと思う。尚、どこぞの皇帝に忖度する必要は無いので、8月は30日で9月は31日である。
閑話休題
毛利領の1日は、この毛利歴の春分と定めた日の太陽が南天に掛るときを12時とし、前後を12で分割し1日を24時間と定めた。また軍では、平穏時にはこの時間割に沿って7時から15時、15時から23時、23時から翌7時、そして間に1時間の食事休憩を取る形で三つの時間帯に分け、四隊を「8時間働かせて24時間休ませる」というローテーションで業務に邁進している。
尤も、24時間全てを休むという人は殆どおらず、大抵は自身の体力作りや鍛錬。座学で兵法やらを学ぶということをしている。サボっていたらいつまで経っても身分は上がらないからね。
8時間の業務中は何をしているかって?日中は道を普請したり耕作地を検地したり、夜は集団行動の訓練や周囲地域の巡回かな。どれも目的を果たしつつ治安活動に寄与してくれている。
辺りがうっすらと明るくなる。時間はまもなく日の出を迎える午前6時。さてそろそろか・・・。眠気覚ましの濃いお茶の入った湯呑をごくりと飲む。ちなみに俺は、今日この駐屯地には居ない事になっている。
かん、かん、かん。かん、かん、かん。かん、かん、かん。
駐屯地の物見櫓に設置されている青銅製の釣り鐘が派手に打ち鳴らされる。
「敵襲!海上より過所船旗の無い所属不明の船が接近中!」
見張りの兵が叫ぶ声が聞こえる。過所船旗は、海上航行の際に船首などに掲げる通行証のこと。毛利氏では商船と軍船を区別するための旗。そして所属が不明ということは、第一マストに掛る帆に家紋が無いということだ。
「船の大きさは?」
今日の駐屯地の責任者である尼子詮久くんが出張って来たらしく大声で叫ぶ。
「角盤級です」
角盤級というとガレオン船か・・・ダメだ。現状で帆船のガレオン船を持っているのは毛利氏だけ。演習なのが初手からモロバレじゃないか。要改善だな。少なくともどこかの所属であるように偽装すべきだ。
「総員起こし!第2種戦闘配置につけ。北畠殿への伝書に鳥を使うことを許可する」
事前に知っている尼子詮久くんが的確に指示を出す。ちなみに第2種戦闘配置とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて反撃を許可するという方針のもと防衛力を高めて対峙するという配置だ。
カンカン!カンカン!
兵舎の方から堅い木を叩く乾いた音が鳴り響く。あれは、寝所で惰眠を貪る兵を叩き起こすための木鐸が鳴らされているのだ。
「丙倉庫を開け!竹束で港を封鎖するぞ」
「乙倉庫から超長槍と単槍を出せ」
「円匙と鶴嘴、土嚢袋を忘れるな」
迎撃態勢がどんどんと整っていく。
ちなみに超長槍というのは毛利軍の標準である三間(約五・四五メートル)もある長槍よりも更に長い四間(約七・二七メートル)もある槍。武器というよりは臨時で構築された土塁や塹壕に置かれる障害物だな。刃があるので無視が出来ない。
で、竹束はその名の通り竹を束ねた盾。所々穴が開いていて、そこに超長槍を差し込んだり穴から単槍で突いたりする。
さて、お手並み拝見といこうか。




